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【コラム】戸塚啓

最終予選は驚きの連続 W杯7大会連続7回目出場決定

[ 2022年3月27日 14:00 ]

練習でパスを出す三笘(中)(撮影・西海健太郎)
Photo By スポニチ

最終予選は何が起こるか分からない。

それにしても、今回の最終予選は驚きの連続だった。

昨年9月の初戦は、黒星スタートだった。それまで一度も負けたことのないオマーンに、「歴史的な勝利」(ブランコ・イバンコビッチ監督)を献上してしまった。

欧州でプレーする選手が増えると、ホームゲームのアドバンテージは失われていく。ほとんどの選手は、ぶっつけ本番のようなコンディションで、試合に臨まなければならない。準備万端で来日してくる相手のほうが、コンディションが整っている場合さえある。

オマーン戦はまさにそのパターンだった。長期合宿で日本対策を徹底してきた相手に、ほとんど抵抗できずに0対1で敗れた。

直後の中国戦は1対0で勝利したが、10月にまた躓いた。アウェイのサウジアラビア戦に、0対1で敗れてしまった。

直接的な敗因は、柴崎岳のパスミスである。ただ、9月のオマーン戦もサウジアラビア戦も、無得点に終わっている。スタメンとシステムを固定してきたことで、相手に分析されているのは明らかだった。

サウジアラビアには19年のアジアカップで、1対0で勝利している。ただ、内容的には圧倒された。もう少しさかのぼれば、17年9月のロシアW杯最終予選で、0対1の黒星を喫している。

アジアカップの対戦時は、大迫勇也が欠場していた。ロシアW杯最終予選は、日本にとって予選突破後の消化試合だった。こちら側にはエクスキューズがあるものの、時を経て記憶に刻まれるのは結果である。サウジアラビアに対して圧倒的な強さを見せられていない歴史が、今回の苦戦につながったとも言えるだろう。

今回の最終予選に話を戻せば、サウジアラビア直後のオーストラリア戦がターニングポイントとなった。1勝2敗で迎えたこの一戦で、森保一監督はシステムを変更した。入念な準備に基づいた変更ではない。ギャンブルと言ってもいいものだったが、指揮官の驚きの決断がチームを蘇らせた。2対1のクロスゲームを制した。

4-3-3への変更をスムーズにしたのは、中盤の「3」を担う遠藤航、守田英正、田中碧だ。遠藤がアンカーで守田が左インサイドハーフ、田中が右インサイドハーフの立ち位置をとるが、守田と田中もアンカーでプレーでき、遠藤もひとつ上のポジションに無理なくフィットする。守田と田中はサイドを変えてもクオリティが落ちない。

彼ら3人の存在がチームの安定感を高め、攻撃では伊東純也が牽引役となる。11月のオマーン戦から4試合連続ゴールを記録し、得点力が高いとは言えないチームの支えとなった。

3月24日のオーストラリア戦を前に、日本は6勝2敗の勝点18でグループ2位につけていた。3位のオーストラリアには勝点3差をつけており、シドニーで行われたアウェイゲームで勝利すれば、最終予選突破が決まる。

オーストラリアからすれば、勝利が欲しい一戦である。ところが、序盤から攻勢を仕掛けてくるわけでなく、ガッチリと守備を固めてくるわけでもない。日本以上に主力選手を欠いていたとはいえ、中途半端な試合運びをしてきたのは驚きだった。最終予選では4大会連続の対戦となるが、もっとも歯ごたえがなかったと言っていい。

もうひとつの驚きは三笘薫だ。この24歳のドリブラーが強力なジョーカーになり得るのは、東京五輪の3位決定戦や昨年11月のオマーン戦で明らかになっていた。短い時間でも決定的な仕事のできる選手だが、84分からの出場で2ゴールとは!

多くの驚きを呼びながらも、日本は7大会連続7回目の出場を決めた。1勝2からの巻き返しこそが最大の驚きだが、予選突破は通過点に過ぎない。森保監督と選手たちは、カタールで過去最高の成績を目ざしている。さらなるレベルアップが求められ、29日のベトナム戦をその第一歩としなければならない。(戸塚啓=スポーツライター)

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