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【コラム】戸塚啓

J2からルヴァンカップに出場すること 過密日程の問題

[ 2023年4月20日 16:15 ]

<ルヴァンカップ 川崎F 6-0 清水>6失点を喫し、浮かない表情の清水の選手
Photo By スポニチ

秋春制への移行よりも先に、こちらを議論するべきではなかっただろうか。

Jリーグのルヴァンカップである。

ルヴァンカップのグループステージは、J1の18チームにJ2の2チームを加えて20チーム参加としている。昨シーズンのJ1で17位だった清水エスパルス、同18位のジュビロ磐田を加えることで、4チームずつ5つのグループが形成されている。

問題はJ2から参加するチームのスケジュールだ。

清水は3月26日のルヴァンカップ第2節から4月22日のJ2第11節まで、9連戦を戦わなければならない。しかも、9試合のうち6試合がアウェイゲームである。それだけでなく、7連戦目のレノファ山口FC戦、8連戦目のルヴァンカップの川崎フロンターレ戦、9連戦目の大宮アルディージャ戦は、中2日でのアウェイ3連戦だ。

チームを率いる秋葉忠宏監督は、川崎F戦で大卒の新加入選手、大学在学中の特別指定選手、高卒1年目の新加入選手らをスタメンで起用した。ベンチには16歳と17歳の2種登録選手が4人並ぶ。ベンチ入りの選手は、通常の7人ではなく5人だった。J2リーグで継続的に試合に絡んでいるのは、西澤健太ひとりというメンバー構成だった。

カタールW杯日本代表GKの権田修一も、元日本代表MF乾貴士も、昨シーズンのJ1得点王のチアゴ・サンタナもいない。川崎Fもメンバーを調整していたが、難しい試合になるのは明らかである。果たして、前半に2失点、後半には4失点を喫し、0対6で大敗してしまった。

試合後の秋葉監督は「いろいろなことを考えたなかで、僕が決断してこういうメンバーをチョイスした」と説明した。結果については、「負けるつもりもなかったし、しっかりと勝点を持ち帰るメンバーをチョイスしたつもりでいるので、自分自身に責任があると思っている」と話した。

オフに鈴木唯人がストラスブールへ、シーズン開幕後に松岡大起がブラジルのクラブへそれぞれ期限付きした清水は、J2リーグ開幕から7試合白星がなく、ブラジル人のゼ・リカルド監督を解任した。コーチから昇格した秋葉監督には、チームをいち早く立て直してJ1昇格争いへ加わっていくことが求められている。

新監督就任後はJ2で2勝1分と、ポテンシャルを発揮しつつある。ようやくつかんだ浮上へのきっかけを、みすみす逃すわけにはいかない。清水が主力選手を温存して川崎F戦に臨むのは、過密日程を乗り切るためにも避けがたいことだったと言える。

清水とともにルヴァンカップに出場しているジュビロ磐田も、J2リーグで苦しんでいる。こちらもJ1昇格候補にあげられながら、J2リーグで3勝4分3敗と勝ち星を伸ばせずにいる。

ターンオーバーをすれば、選手を休ませることはできる。ただ、水曜日にルヴァンカップが入ってくると、週末のJ2リーグへの準備期間が圧縮されてしまう。磐田もまた過密日程を乗り切るためのやり繰りに追われて、アクセルを踏み込めないような状態が続いている、と言える。

振り返れば昨シーズンも、J2からルヴァンカップに出場した徳島ヴォルティスと大分トリニータが過密日程に苦しんだ。どちらもJ1昇格候補にあげられていたが、徳島は8位に、大分は5位に終わっている。

J2からルヴァンカップに出場することが、すべてデメリットだと言うつもりはない。川崎F戦後の秋葉監督は「今日本物を見せてもらったので、これ以上の選手、チームになれるように、僕を含めてしっかりと矢印を向けながら日々努力する」と話した。J1トップクラスの川崎Fとの試合は、清水の若い選手たちにとって今後への糧になるだろう。

来シーズンからJ1、J2、J3の各カテゴリーが20クラブに統一され、ルヴァンカップは全60クラブ参加のノックアウト方式に変更される。とはいえ、清水と磐田にとって過密日程は現在進行形の問題だ。両チームは次にルヴァンカップが行なわれる5月にも、5連戦を戦うことになっている。(戸塚啓=スポーツライター)

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