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【コラム】戸塚啓

J1残留争い 監督交代で残れるチームは?

[ 2022年8月17日 23:00 ]

<J1磐田練習>中山コーチ(右)と言葉をかわす渋谷新監督(撮影・井上侑香)
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危機感は連鎖するものだ。

8月14日、ジュビロ磐田が伊藤彰監督を解任した。直近のホームゲームで浦和レッズに0対6の大敗を喫した磐田は、5勝7分13敗の勝点22で最下位に沈んでいた。7月以降は1勝6敗と黒星がかさんでおり、残留争いから抜け出すには待ったなしだった。

磐田とダービーを争う清水エスパルスは、5月末から6月中旬の中断期間に監督交代に踏み切っている。この時点で清水は16位だった。下位チームは僅差で競り合っていたが、残留争いの苦しみは肌で感じている。早めに手を打った。

戦力も見直した。北川航也がオーストリアから復帰し、ブラジル人アタッカーのヤゴ ピカチュウと乾貴士を迎え入れた。

即戦力の3人が初めてピッチに立ったのは、7月31日のサガン鳥栖戦だった。鳥栖戦は撃ち合いの末にアウェイで勝点1をつかみ、続くFC東京戦、ガンバ大阪戦は2対0で勝利し、一気に12位まで順位を上げてきた。ゼ・リカルド新監督就任後の成績は、4勝2分3敗である。監督交代と補強で、清水は流れを変えた。

その清水に試合で敗れたG大阪は、直後に監督交代に踏み切った。片野坂知宏監督を解任したのだ。

結果を見れば交代はやむを得ないだろう。ここ6試合勝利がなく、J2降格圏の17位に転落してしまったのだ。今夏の移籍市場で食野亮太郎、鈴木武蔵、ファン アラーノを獲得したが、結果には結びついていない。清水や磐田を横目に見れば、自分たちも動かなければとの思いは強くなるはずだ。

布石は打っていた。9日に松田浩氏をトップチームのコーチに迎えていたのだ。そのまま後任に収まっている。

松田新監督は、6月までJ2のV・ファーレン長崎を指揮していた。昨シーズン途中の就任でチームを立て直し、4位に食い込んだ実績を評価されての2シーズン目だったが、前半戦終了時点で9勝4分8敗の5位にとどまり、長崎を去っていた。

守備組織の構築に定評がある。昨シーズンの長崎では、就任後の30試合で19勝7分4敗、56得点24失点の成績を残した。就任前の12試合で20失点を喫していた守備陣を改善した。失点がリーグワースト4位のG大阪の再建には、適した人材だと言える。

監督交代は後任に誰を呼ぶのか、いつから新体制をスタートさせるのかも重要だ。あらかじめ松田新監督をコーチに据えていたG大阪は、切れ目を作らずに対応できた。

磐田は出遅れてしまった。伊藤監督の後任選びが難航し、18日になって渋谷洋樹ヘッドコーチの昇格を発表した。

昨シーズンのJ1では、10チームがシーズン中に監督を交代させた。アンジェ・ポステコグルーがセルティックからオファーを受け、ケヴィン・マスカットを迎えた横浜F・マリノスを除くと、基本的には成績改善が監督交代の理由となっていた。

J1残留を争っているチームのなかには、監督を交代していないクラブもある。代えることのメリットとデメリット、代えないことのメリットとデメリットをどのように見極め、時間に追われるなかで決断を下していくのか。その決断が正しかったのかどうかは、結果でのみ評価される。(戸塚啓=スポーツライター)

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