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【コラム】戸塚啓

東京五輪、金メダル獲得へ 重要な意味を持つAFC・U-23選手権

[ 2020年1月4日 12:00 ]

オリンピックイヤーが幕を開けた。サッカー界では16年に続いて今回も、U-23代表がすべてのカテゴリーの先陣を切って国際大会に挑む。1月8日開幕のAFC・U-23選手権だ。

この大会は五輪の最終予選を兼ねているが、日本は開催国枠で出場できる。負けても失うものの大会となる。

だからといって、経験を積むことが主眼ではない。

1月のバンコクの予想気温は、連日30度を超える。湿度も高い。試合は中2日または3日で行われていく。東京五輪のシミュレーションになりうる環境だ。ここでどれだけタフに戦えるのかは、五輪を迎えるうえで裏付けのひとつとなっていく。

19年12月29日に発表されたメンバーに、海外クラブ所属選手はひとりしか含まれていない。そのひとりの食野亮太郎(ハーツ/スコットランド)も、グループリーグ3試合までの合流予定となっている。

世代のベストと呼べるメンバーではない。それでも、今回のチームが結果を残すことには意義がある。

U-23代表世代にして多くの選手が海外クラブへ所属しているため、このチームは序列がはっきりしていないところがある。とはいえ、所属クラブでしっかりと試合に出ていけば、海外組がメンバーの多くを占めるのは間違いない。日常の経験値という意味で、彼らにはアドバンテージがある。クラブのプレータイムが十分でなくても、潜在能力を評価されて選ばれる可能性は高い。

Jリーグでプレーする選手からすれば、自分がどれほど頑張っても海外組が結果を残したら、序列を覆すのが難しい状況と言うことができる。

そこで、今回のU-23選手権だ。

食野を除いた22人の選手にとって、今大会は自らの存在価値を示すラストチャンスと言ってもいい。試合間隔の短い連戦と暑さに耐え得るところをアピールし、なおかつ結果につながるパフォーマンスを見せれば、森保監督も序列を再考するだろう。

少し古い話になってしまうが、ジーコが率いた当時の日本代表がそうだった。04年夏のアジアカップに、海外クラブ所属選手が川口能活と中村俊輔のふたりだけというチーム編成で臨んだ。半日感情がたけり狂う完全アウェイの中国で、連覇を成し遂げた。

ノックアウトステージでは何度も追い詰められたが、そのたびにチームは一体感を発揮する。それまで海外組を重用してきたジーコは、アジアカップ制覇を評価して序列にメスを入れていく。世論の支持も得た方針の転換だった。

発表前日のジャマイカ戦から、U-23選手権に挑むチームで戦ったほうが良かったのでは、との思いはある。ジャマイカがスパーリングパートナーとして著しく物足りない相手だったとしても──9対0の勝利では、選手の見極めにもならなかった──準備期間を増やすためにここからU-23選手権のチームで動くこともできたはずだ。結果を得られなかった際のエクスキューズを、あらかじめひとつ取り除いておくことにもなる。

いずれにせよ、U-23選手権は重要な意味を持った大会である。この大会でアジア王者に輝いた4年前のチームも、リオ五輪ではグループステージ敗退に終わっている。東京五輪で金メダル獲得を目標に掲げるのなら、メンバーにかかわらず内容を伴った結果を残すことは最低条件と言っていいくらいである。(戸塚啓=スポーツライター)

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