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【コラム】戸塚啓

顔触れの変わらないJリーグ監督 実績や経験は魅力的に映るが...

[ 2024年12月4日 20:00 ]

今季限りで退任するJ1福岡・長谷部茂利監督
Photo By スポニチ

2024年のJリーグも、7日、8日の試合を残すのみとなった。すでに各チームからは選手の契約更新や満了、監督の続投や勇退などがアナウンスされている。

J1では北海道コンサドーレ札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督の勇退が発表された。FC東京のピーター・クラモフスキー監督、セレッソ大阪の小菊昭雄監督、アビスパ福岡の長谷部茂利監督の退任も発表されている。柏レイソルの井原正巳監督、川崎フロンターレの鬼木達監督、アルビレックス新潟の松橋力蔵監督も、今シーズン限りでクラブを去ると言われている。鹿島アントラーズを指揮している中後雅喜家督も、今シーズン終了までの暫定的な体制だ。

現時点で少なくとも8チームから9チームが、新たな指揮官を迎えることとなる。気になるのは各チームの選考基準だが、これまでのところは横滑りが多い。

鬼木監督が川崎Fから鹿島へ移り、川崎Fに長谷部監督がやってくる、との報道がある。FC東京の新監督には、新潟に独自のパスサッカーを浸透させた松橋監督の就任が噂されている。

J1からJ2へ降格するサガン鳥栖は、小菊監督の招へいが決定的と見られている。柏レイソルは、徳島ヴォルティスや浦和レッズを率いたリカルド・ロドリゲスをリストアップしている。

すでにJリーグで采配をふるったことのある監督が、重用されるのはなぜか。理由はいくつかある。

実績や経験は魅力的に映る。

たとえば鬼木監督は、川崎Fを真の常勝軍団へ押し上げ、数多くのタイトルを獲得した。タイトルから遠ざかって久しい鹿島には、OBであることを踏まえても理想的な人材である。

長谷部監督は福岡をJ2からJ1へ昇格させ、しっかりと定着させた。昨年はクラブ初となるルヴァンカップをチームにもたらした。彼我の力関係を直視し、現実的な戦略で勝点を稼いでいった。

すでに他クラブで経験を積んだ監督の場合、「実際に何ができて」、「どんな成果が見込めるのか」が読みやすい。シーズン中にはケガ人が立て込んでしまうとか、複数の主力選手が出場停止になるといったアクシデントが起こりうる。すでにJリーグで戦ってきた監督ならば、そうした事態にも柔軟に対応できる。自分の理想ばかりを追い求めるのではなく、その時々で現実と折り合いをつけることができるのは、経験を積んだ監督が持つ強みだ。

クラブのフロントからすれば、安心感がある。Jリーグが昇降格のあるリーグで以上、経験を持った監督が重用されるのは必然と言える。

個人的には、新しい監督の登場を待っている。S級ライセンス保持者は毎年増えているものの、Jリーグの監督の顔触れはなかなか変わっていない。23年度に受講してS級ライセンスを取得した明神智和さん、中村憲剛さん、大黒将志さん、内田篤人さんといったW杯プレーヤーが、Jリーグの監督として活躍する姿を早く見てみたいと思う。

監督としての経験が少ない指導者は、自らの理想を追求する傾向が強いと言われてきた。やりたいサッカー、やりたい戦術と保有戦力に乖離があり、結果に結びつかない、というものである。

とはいえ、W杯に出場した彼らのような選手は、現役当時に様々な指導者のもとでプレーしている。成功例にも失敗例にも間近に、あるいは間接的に触れている。現実的な判断はできるだろうし、そのなかで訴求力のあるサッカーを作り上げていくのでは、との期待感がある。

監督交代とは、ひとつのサイクルに区切りをつけることと同意だ。様々なリスクを考慮しつつ、新たなフェーズへ踏み出す。フレッシュな人材登用へ踏み出すチームが出てくれたら、と思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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