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【コラム】戸塚啓

五輪代表メンバー18名の枠をめぐる争い サバイバルとなる6月2試合

[ 2024年5月31日 16:30 ]

5月30日代表メンバー発表会見に出席したU-23代表大岩監督
Photo By スポニチ

厳しい。シビアなサバイバルだ。

6月に活動するU-23日本代表のメンバーが、5月30日に発表された。チームは6月7日と11日に、U-23アメリカ代表とアウェイで対戦する。

パリ五輪のメンバー発表前最後の活動に、大岩剛監督はGK3人とフィールドプレーヤー22人を招集した。五輪の登録メンバーは18人なので、GKは3人のうち2人、フィールドプレーヤーは22人のうち16人しか選ばれないことになる。

今回のメンバーには、4月のアジア最終予選で存在感を示した山田楓喜が選出されていない。一方で、彼が主戦場とする右ウイングには、冬の移籍市場でエールディビジのスパルタに加入した三戸舜介がいる。三戸と同じスパルタ所属の斉藤光毅、NEC在籍の佐野航大も招集されている。久保建英と鈴木唯人が所属クラブの意向でパリ五輪出場を断念しても、「18」人の枠をめぐる争いは厳しい。

厳しいと言えば、オーバーエイジの招集である。

今回の遠征までにオーバーエイジの3人を固め、チームに合流させるというのが、チーム作りとして理想的だったはずだ。ここで問題となるのが、オーバーエイジの招集には所属クラブの許可が必要ということだ。今夏に移籍する可能性がある選手は、新天地が決まらないと交渉を進められないという事情もある。

16年のリオ五輪を前に、当時の手倉森誠監督は清武弘嗣をオーバーエイジの候補とした。五輪後の9月にロシアW杯アジア最終予選が控えていたこともあり、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督(当時)にも相談したうえで、清武の所属クラブとの交渉に臨もうとしていた。

ところが、清武がドイツ・ブンデスリーガのハノーファーから、ラ・リーガのセビージャへ移籍することになった。プレシーズンのキャンプからチームに合流しなければ、厳しいポジション争いを勝ち抜くことはできない。手倉森監督は招集を断念したのだった。

日本サッカー協会の山本昌邦ナショナルチームダイレクターは、「ギリギリのところまで」招集へ向けて努力していくと話している。しかし、6月の2試合に招集できなかったことで、オーバーエイジを加えることができても、短い助走で臨むことが確実となった。

12年のロンドン五輪では、吉田麻也と徳永悠平がオーバーエイジとしてメンバー入りし、GK林彰洋がバックアップメンバーとして直前まで帯同した。吉田はテストマッチ2試合の出場で、徳永は同3試合の出場で五輪を迎えたが、チームに素早くフィットしてディフェンスを安定させた。

一方、16年のリオ五輪では、オーバーエイジが機能したとは言えなかった。DFラインにケガ人が出たことを受けてCB塩谷司、左サイドバック藤春廣輝が招集されたが、ナイジェリアとの初戦で5失点を喫するなど守備の安定感を欠いたのだった。

五輪に出場した経験を持つ選手、W杯のピッチに立った選手がオーバーエイジとして加われば、間違いなくチームの支えになるだろう。ピッチ上で起こる問題を、「個」で解決してくれるとの期待もある。ただ、チームとして機能するかどうかは、実際にオーバーエイジが合流してみないと分からない。

限られた時間のなかで、大岩監督はどのような決断を下すのか。現時点で最善のシナリオは、6月の2試合でU-23世代がはっきりとした成果をあげることだ。オーバーエイジ抜きでも戦える、と周囲を納得させることである。(戸塚啓=スポーツライター)

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