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【コラム】戸塚啓

シリア戦の収穫

[ 2017年6月8日 16:00 ]

<日本・シリア>左肩を負傷し、前半10分に交代した香川
Photo By スポニチ

6月7日のキリンチャレンジカップで来日したシリアは、予想を上回る好チームだった。

日本が3月以来の国際試合だったのに対し、彼らは直前にオマーンとのテストマッチを消化していた。そのぶんだけチームとして機能していたのは確かだが、はるか日本まで移動してきた上にラマダンのさなかである。アイマン・アルハキム監督も「疲労はあった」と話していたが、ピッチ上での選手たちは勇敢にしてパワフルで、したたかに試合を運んでいった。

W杯ロシア大会アジア2次予選で、日本はシリアに連勝している。中立地オマーンで3対0と勝利し、16年3月のホームゲームでは5対0で大勝した。

相手のメンバーは、当時から劇的に変わっていない。日本はコンディションにばらつきがあり、ゲームから遠ざかっている選手もいたが、ヨルダンの推進力ある攻撃に慌てさせられた。

3か月ぶりのテストマッチだったとしても、シリアの出来が良かったとしても、1年3か月前には快勝していたのだ。1対1という結果は、不満や不安を誘うものかもしれない。香川真司も左肩を痛めて前半早々に負傷交代し、イラク戦の欠場も決まった。

とはいえ、前向きな材料がなかったわけではない。

興味深かったのは、本田圭佑のインサイドハーフ起用だ。久保と右ウイングを争うと見られ、この日も先発を譲った背番号4は、中盤の右サイドで久しぶりに彼らしさの一端を披露した。ボールにより多く触ることでプレーにリズムが生まれ、チームの攻撃にも滑らかさをもたらしていった。

後半途中から3トップの左サイドで起用された乾貴士も、その実力を改めて証明した。13日のイラク戦が行われるスタジアムは、ピッチコンディションが良くないことも想定される。ドリブラーには難しい環境かもしれないが、それでも使いたいと思わせるパフォーマンスだった。

中盤から前線に新たなオプションが見えた一方で、最終ライン中央は不安を抱えたままイランへ向かうこととなる。

最終ライン中央の揺るぎない選択肢だった吉田麻也と森重真人のコンビを、ハリルホジッチ監督はこのタイミングで解消した。森重は招集されず、昌子源が吉田のパートナーとなった。

昌子のプレーが、不安を感じさせるわけではない。日本代表にふさわしい実力の持ち主である。ただ、センターバック同士のコンビネーションやサイドバックとの連携、さらにはGKとの意思疎通といったものを磨き上げる時間を、彼は持てていない。

それが、イラク戦に小さな影を落とす。イラク相手に勝利を持ち帰ってくれば、センターバックの層は厚くなるのだが......。(戸塚啓=スポーツライター)

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