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【コラム】戸塚啓

J2 サプライズもあり!? 熾烈なJ1昇格争い

[ 2020年9月2日 23:30 ]

J1リーグでは川崎フロンターレが強さを発揮しているが、J2リーグの序盤戦は大きな驚きに包まれている。J3から4シーズンぶりに復帰したギラヴァンツ北九州が、15節終了時点で単独2位につけているのだ。

勝ちっぷりは爽快である。7節から15節まで9連勝を飾っている。そのすべてで複数得点をマークしているのだ。そのなかには、昇格争いの候補から奪った勝利も含まれている。

7月29日の第8節で、昨シーズンJ1昇格プレーオフ決定戦まで勝ち残った徳島ヴォルティスを2対0で退けた。8月19日の第13節では、対戦時にリーグ最少失点を記録していた昨シーズン3位の大宮アルディージャのホームに乗り込み、4対1で大勝している。

チームを率いる小林伸二監督は、これまで4つのチームをJ1へ昇格させてきた。経験豊富で引き出しは多い。J1のクラブから期限付き移籍で迎えた20歳や21歳の選手を積極的に起用し、結果に結びつけているのは指揮官の手腕と言えるだが、だからといってベンチワークが頼みではないのだ。

ここまで28得点はリーグ最多で、13失点はリーグ最少3位タイである。攻守のバランスに優れる要因は、圧倒的なまでのアグレッシブさだ。「攻」から「守」への素早い切り替えに基づくハイプレッシャーが、ショートカウンターもポゼッションもできる攻撃を支えている。自陣にブロックを敷くのではなく、敵陣から連動して相手の攻撃に規制をかけ、守備の矢印を前へ向けながら奪い取ることに成功しているのだ。試合の最終盤になっても足が止まらないハードワークも、接戦に強いチーム体質を生み出している。

J2にサプライズをもたらしているのは、北九州だけではない。栃木SCの健闘も目を引く。

昨シーズンのJ2では、J3降格をギリギリで免れた。21位で降格した鹿児島ユナイテッドFCとは勝点が同じだったものの、得失点差で何とかJ2残留を果たすことができた。

今シーズンは元日本代表FW矢野貴章、浦和レッズや韓国Kリーグで活躍してきたエスクデロ競飛王らを獲得した。田坂和昭監督は「10位以内」を目標に掲げた。

昨シーズン終盤の戦いぶりは希望を抱かせるもので、就任2年目の指揮官の掲げた目標は達成可能と言えるものだ。一方で、上位進出を予想する声はほぼ聞こえてこなかった。

それがどうだろう。15節終了時点で6勝4分5敗と白星を先行させ、7位に食い込んでいるのだ。

チームの支えは守備だ。15試合のうち7試合を無失点でしのぎ、失点をリーグ最少の「10」に抑えている。

ひとりですべてを解決してくれるような外国籍選手はいない。「群れを成して全力でボールを取りにいく」と田坂監督が表現するように、4-4-2のシステムで選手が連動しながらスペースを埋め、しっかりとスライドをしながら、ボールを奪い取ることができている。

失点だけでなく得点も「10」と少ない。さらに順位をあげていくには攻撃力アップが不可欠だが、現時点でも退屈さは感じさせない。ここまで10試合に出場している西谷優希が「チーム一丸となってハードワークするのが自分たちの強み」と話すように、ひたむきに走り続ける姿勢は観る者を飽きさせない。

J1昇格争いは、15節終了時で勝点35で首位のV・ファーレン長崎がけん引する。2位の北九州に続くのは徳島だ。この3チームがすでに勝点30を突破している一方で、4位のアルビレックス新潟からは13位の大宮アルディージャまでの10チームが、勝点5差のなかでひしめき合っている。17位のファジアーノ岡山でも、新潟とは勝点9差だ。3試合分の勝点差に過ぎない。毎節ごとに順位は変動していくだろう。

実力拮抗のJ2で、北九州と栃木はどこまで存在感を発揮できるか。過密日程のなかで、どこまで疾走していくのか。無印のチームがもたらす驚きが、J2への興味をかきたててくれる。(戸塚啓=スポーツライター)

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