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【コラム】戸塚啓

補強 問われるクラブの対応力

[ 2022年2月9日 22:30 ]

川崎Fの鬼木達監督
Photo By スポニチ

Jリーグの開幕が近づいてきた。1月末と2月初旬にカタールW杯アジア最終予選があったので、個人的にはすでにシーズンインしているような印象がある。

今年はカタールW杯が11月に開催される。J1は11月5日が最終節だ。いつもより1か月ほど短いシーズンとなる。J1の試合数は昨シーズンより4試合少ないものの、ルヴァンカップと天皇杯もある。ACLを戦うチームは、さらに日程が過密になる。J1の優勝争いも残留争いも、チームとしての総合力が問われるだろう。

シーズン中の補強もポイントになりそうだ。

昨夏の移籍市場では古橋亨梧、オナイウ阿道、川辺駿、林大地、三笘薫、田中碧がヨーロッパのクラブへ移籍した。インパクトという意味では古橋が特大だったが、それ以外の選手もしっかりと戦力になっている。

今冬の移籍市場では、井手口陽介、旗手玲央、前田大然、田川亨介、町田浩樹、瀬古歩夢、坂元達裕が、欧州のクラブに加入した。井手口、旗手、前田は、古橋と同じセルティックのユニフォームを着ている。田川は守田英正が所属するサンタクララで、町田は三笘と同じユニオンの一員となった。瀬古の新天地グラスホッパーでは、川辺がプレーしている。複数のクラブが同時に「二度目の日本人獲り」へ乗り出したのは、過去にあまり例がないだろう。

坂元が加入したベルギーのオーステンデに、日本人選手はいない。それでも、同国1部リーグでは日本人選手が多くプレーし、伊東純也らの奮闘によって評価を受けている。対戦相手として日本人選手を見てきたオーステンデとしても、坂元の獲得はしっかりとした裏付けがあるに違いない。

これだけ多くの選手が、加入1シーズン目から戦力になっているのだ。「第2の古橋」、「第2の三笘」、「第2の旗手」を求めて、ヨーロッパ各国のクラブはJリーグを追跡すると考えられる。

今冬には北海道コンサドーレ札幌の小柏剛が、スコットランド1部のハーツから正式オファーを受けた。日本代表として国際Aマッチに出場していない23歳への関心は、Jリーグの選手が広く調査の対象になっている証と言えるものだった。

コロナ禍のサッカー界では、選手の獲得に注げる資金に限りがある。欧州のクラブも例外ではない。とりわけ中小規模のクラブにとって、Jリーグでプレーする日本人選手は魅力的だろう。獲得にかかる資金がそこまで高額ではないから、投資の価値がある。その選手がステップアップしていけば、獲得にかかった費用を上回る移籍金も見込める。

おそらく今シーズンも、夏の移籍市場で欧州クラブからオファーを受ける選手が出てくる。優勝争いに関わっているクラブ、上位に名を連ねているクラブの選手はもちろん、中位から下位チームの選手もターゲットになっていくはずだ。

クラブ側からすれば、そこでの対応が問われることになる。

たとえば昨シーズンの川崎Fは、三笘と田中の移籍後にマルシーニョを獲得した。ブラジル人アタッカーは11試合出場1得点の成績にとどまったものの、得意のドリブルで攻撃に変化を生み出した。

横浜F・マリノスはオナイウが抜けた前線に、浦和から杉本健勇を迎えた。長身ストライカーは11試合出場で3ゴールに終わったが、素早く補強に動くことが大事なのだ。戦力ダウンをできる限り抑えると同時に、チーム内の競争のレベルを維持(あるいは向上)するためにも、である。

今シーズンのJ1は、川崎Fが3連覇に挑む。鬼木達監督率いるチームが、鹿島アントラーズに次ぐ偉業を達成するのか。それとも、他クラブが意地を見せるのか。川崎Fを中心とする争いの行方に、シーズン中の移籍と補強が関わってくると思うのだ。(戸塚啓=スポーツライター)

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