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【コラム】戸塚啓

選手の評価基準"年齢" 遠藤の活躍で変わるか

[ 2023年8月24日 19:00 ]

<リバプール・ボーンマス>リバプールでのデビューを果たした遠藤
Photo By AP

すべての日本人フットボーラーが希望に燃え、野心をくすぐられたのではないだろうか。

遠藤航のリバプール移籍である。

ユルゲン・クロップ率いるリバプールは、今オフにセントラルMFを失っていた。ジョーダン・ヘンダーソンとファビ―ニョが移籍し、複数ポジションをこなすジェイムズ・ミルナーも契約満了でチームを去った。代わってアルゼンチン代表で22年W杯優勝メンバーのアレクシス・マック・アリスターらを補強したが、獲得をもくろんだモイセス・カイセドやロメオ・ラビアを迎えることはできなかった。そうしたなかで、プレミアリーグに加えてヨーロッパリーグ、FAカップ、リーグカップを戦っていくチームには、さらなる補強が必要だったのだろう。

移籍は玉突きの要素を含む。誰かが出ていけば、誰かがその代わりに入っていく。様々な要因が折り重なって、今回の移籍は成立している。

ただ、リバプールがセントラルMFを必要としたタイミングで、リストアップされたことに大きな意味がある。それまで無関心だった選手を、いきなり獲得することはない。遠藤を継続的にチェックしてきたからこそ、リーグ開幕直前のタイミングで獲得に踏み切ったと考えるのが妥当だ。27年6月までの4年契約も、クラブ側の期待の表われと言える。

30歳でのプレミアリーグ移籍、それもビッグクラブのリバプール入りは、日本人選手に希望を与えるはずだ。ヨーロッパでプレーしている選手なら、「次は自分が」という野心を抱くことができるだろう。遠藤がリバプールで力を発揮していけば、日本人選手の可能性そのものを拡げることにもなる。

Jリーグのチーム編成では、同じような実力の選手が複数いる場合は年齢の若い選手が選ばれやすい。予算に限りのあるJ2やJ3のクラブでは、年齢の若い選手を獲得するほうが、中長期的視点でメリットが多いと考える。

遠藤が活躍することで、そうした考えかたが変わるかもしれない。

所属クラブでタイトルをとったことがある。

代表に選ばれて国際大会に出場したことがある。そういった実績はもちろん、存在感や影響力といった目に見えないもの、チームを落ち着かせる経験といった数値化できないものの価値が、遠藤の移籍とその後の歩みによって再評価されていく可能性がある。

選手の評価基準において、年齢は大きな割合を占めると考えられてきた。しかし、30歳を過ぎてもビッグクラブでプレーしている選手は数多い。クラブだけでなく、代表で活躍する選手もいる。

ケガの予防や治療法の進歩によって、選手寿命は伸びでいる。30歳を過ぎてから、パフォーマンスを上げていく選手もいる。年齢に対する認識というものを、我々はアップデートするべきなのだろう。(戸塚啓=スポーツライター)

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