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【コラム】戸塚啓

ベテランに依存しているわけではない 多くは今回が最後のW杯になる可能性が高い

[ 2018年6月5日 06:30 ]

<サッカー日本代表練習>青空を背にランニングするイレブン
Photo By スポニチ

ロシアW杯に挑む日本代表のメンバーは、経験と実績が重視された顔触れになった。30歳以上の選手が8人を数え(年齢は6月4日現在、以下すべて同)、平均年齢は初出場の98年大会以降でもっとも高い28.3歳となっている。

サッカー選手の寿命は、世界的に見て伸びていると考えていい。20年前は完治に時間がかかったケガやキャリアを脅かすと見られたケガが、スポーツ医学の発展によって回復を見込めるようになった。また、戦列復帰までの時間が短縮し、ケガの連鎖も減っている。

20年前にはなかったケガも生まれているものの、相対的に見ればケガの予防や再発を抑えるレベルは上がっていると考えられる。20年前といまでは、同じ30代でも身体の中身は違う、ということだ。年齢について論じるなら、そのあたりも考慮すべきである。

また、経験が問われるGKは、およそどこの国も30歳以上の選手が多い。日本のロシアW杯のメンバーも、GKの川島永嗣と東口順昭を除くと30歳以上の選手は6人になる。飛び抜けて多い数字ではない印象だが、他国はどうだろう。

優勝候補にあげられているなかでは、アルゼンチンは30代の選手が多い。攻守の中心となるマスチェラーノ(33歳)とメッシ(30歳)だけでなく、オタメンディ、ファシオ、ディマリア、アグエロ、イグアインらの主力クラスを含めて、30歳以上のフィールドプレーヤーが合計で10人を数える。その一方で、93年1月1日以降生まれのリオ五輪世代は4人にとどまる。

アルゼンチンと同じ南米のブラジルは、30歳以上のフィールドプレーヤーが8人だ。リオ五輪世代も3人だけだが、そのひとりのカブリエル・ジェズスは21歳にして"セレソン"の背番号9を背負っている。センターバックの一角を争うマルキーニョスも24歳だ。攻撃のメインキャストとなるネイマールとフィルミーノが26歳、フィリペ・コウチーニョが25歳(今月12日で26歳)ということもあり、ベテランが多いとの印象を抱かせないのだろう。

南米勢ではウルグアイも8人を数える。ゴディン(32歳)、ペレイラ8(33歳)、スアレス&カバーニの2トップ(ともに31歳)は3大会連続の出場だ。GKムスレラ(31歳)も10年の南アフリカから不動の守護神だ。川島、長友佑都、長谷部誠、本田圭佑、岡崎慎司が3大会連続出場の日本に似ている。

日本との違いはリオ五輪世代のボリュームだ。西野朗監督はGK中村航輔、DF遠藤航、植田直通、MF大島僚太の4人を選出したが、ウルグアイのタバレス監督は93年以降生まれの選手を9人メンバーに選んだ。

ユベントス所属のベンタンクールのように、この年齢にしてすでにヨーロッパでプレーする選手が多いからこそのリストだが、ゴディンやスアレス後を見据えたバランスの良いリストだ。

欧州勢では、ポルトガルが30歳以上のフィールドプレーヤーを7人招集している。ただし、ウルグアイ同様にベテラン頼みの印象はない。93年以降生まれの選手は9人を数えるのだ。

4年前が世代交代のタイミングだったフランスは、今回も才能豊かな若手と中堅層がチームを支える。30代のフィールドプレーヤーはDF、MF、FWにひとりずつで、27歳のグリーズマン、25歳のヴァランとポグバ、19歳のムバッペらが看板選手だ。

いくつかの国との比較において、日本が際立ってベテランに依存しているわけではないと言うことはできる。それでも変化に乏しい印象を与えてしまうのは、ヴァイッド・ハリルホジッチ前監督が起用してきたリオ世代──久保裕也、浅野拓磨、井手口陽介、中島翔哉らが、23人のリストから外れたことが関係している。

監督が代われば、選手の選考基準は変わる。所属クラブで実戦から遠ざかっていた浅野や井手口は、ハリルホジッチ前監督指揮下の3月も招集を見送られていた。監督が代わらなかったとしても、彼らはメンバーに入れなかったかもしれない。

現時点で言えることがあるとすれば、4年後のカタールW杯は今回と同じ選考基準は成立しにくい、ということである。経験と実績を持つ選手の多くは、今回が最後のW杯になる可能性が高いからだ。西野監督が選んだ23人のうち、4年後のW杯を30歳の誕生日前に迎えるのは6人だけである。

いずれにせよ、ロシアW杯の開幕は迫ってきた。今回のメンバーがふさわしいものであることを、西野監督は、選手たちは、結果で証明しなければならない。(戸塚啓=スポーツライター)

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