小雨まじりの肌寒い金沢の街を、12000人弱のランナーが走り抜けた。朝9時スタートして、7時間後までに走る制限付きの「市民マラソン大会」。初めての大会は、新幹線開通の年とあいまって成功だったらしい。そのせいか、大聖寺観光案内所を訪れた人は、「独り」だけの静かな一日だった。
▼訪問客の問いかけは「大聖寺に『冬サクラ』の名所」があると聞いて来たが、どこかと言う。冬に咲くサクラは知っていたが、観光名所という触れ込みの場所は無いと、越前なまりの旅人に対応した。山中温泉の「あやとり橋」を下りた渓谷に、咲く冬サクラのことかもしれないと、助言したが、今、山中温泉から来たという中年男性。
▼後を追うように同伴女性が、入ってきて「大乗寺」の間違いやったと、「アイパット」を片手に持って来た。金沢の郊外にある「名刹・大乗寺」が、「冬サクラ」の名所とは知らなかったが、この旅人も金沢へ行くのかと、一瞬、思った。情報社会は、「案内所」が不要になる情報を知ることができる。
▼半世紀前の青春時代に、「イギリス人は歩きながら考える。フランス人は考えた後で走り出す。そして、スペイン人は、走った後で考える。」との、ベストセラーの言葉がよく話題になっていた。異国文明から、戦前の日本が走ってきた後悔から、「日本人も走ってから考える国民性」だと、当時、世間知らずの青年も思った。
▼金沢市民マラソン大会は、「走る前に考えた大会で、食べながら走った大会でもあった」。大勢のボランティア市民のサポートと、郷土の食文化をアピールする大会で、給食所には「きんつば、ようかん、スイーツに、おにぎり、ふかし芋に、カレー」まであったという。
▼来年、加賀市でも「市民マラソン」が開催される。ゲストの「増田あけみさん」も走るという。地元興しのマラソン・ブームは各地で、あの手この手で開かれている。
▼残り少ない「人生マラソン」も、ゆっくりと考えながら走っている。だが、走るだけで何にも思いつかない。
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