「ライオンロックは、どこへ行く」
台風10号に「ライオンロック」という名称が付いた。八丈島近海で19日に発生した台風10号は南西へ進み、沖縄県・南大東島近海で26日朝にUターンして28日には本州の南海上に進んだ。30日夜以降には気象庁の統計開始以来、初めて東北地方の太平洋側に直接上陸する可能性が高まっており、前例のないルートをたどっている。
▼風変わりな台風10号のおかげで、熱帯夜が続いていた昨晩は、寒くて布団をかぶって寝ることができた。だが、今後の進路が定かでないと言う。また、北海道方面に大雨を降らすらしい。被害が重なることに心配でもある。
▼厚い雲が広がっている日曜の昼過ぎ。大聖寺観光案内所に、一人の青年が訪れた。そしてレンターサイクルを利用した。閉店時刻の4時になっても、帰ってこない青年を心配して、登録していた携帯電話で連絡したが応答がない。
▼帰って来ない子供を案じて案内所の扉を開けて戸外に出たら、ちょうど戻ってきた青年が額に汗を滲ませながら立っていた。「あぁよかった、無事で」と声を掛けた。どこまで行ったのかと聞くと、大聖寺を一回りして山代まで行って来たという。
▼登録住所は、兵庫県西宮市。学生風だったので、大学生かと尋ねると「高3」と言う。疲れた顔を見て中で休憩を促すと、素直に応じた。冷たいジュースでなく、温かいインスタントコーヒーでごちそうする。
▼青春切符で10年ぶりの大聖寺だという。帰りの電車までの1時間。親戚のお爺さん役でおもてなしをした。小学2年生まで錦城小学校に在籍していて、父親の仕事の都合で関西方面に移住したが、記憶にない幼少期、熊本県から大聖寺に来たと言う。同級生からも忘れられた転校生だという「虎之助」君。伏し目がちな目を時々開けながら、ぼそりぼそりとしゃべる。
▼夏休みも、あと少し。8歳の記憶が、大学受験を前にして大聖寺にUターンしてきた。大学は東京だという。虎之助君も、ライオンロックも、これからどこへ向かうのか。逆立ちしても戻れない、青春の18歳と出会った日だった。