「九谷焼の大皿」
ブームになっている、全国の「ご当地検定」がピークを越えたらしい。検定を主催する各地の商工会議所も2009年以来廃止するところも出てきているという。そんな中、ご当地の加賀商工会議所は3回目の「加賀ふるさと検定」試験が11月29日に行われる。
▼そんな、各地のご当地検定に挑戦する「マニア」も増えているという。目的は知識を溜め込んで、ツアー・コンダクターを目指す人もいるだろうが、多くは、ふるさとの歴史を学び、地域への活性化に寄与したいという奇特な人たちかもしれない。
▼2回目受験の私の場合は、観光ボランティア活動に生かす基礎的知識を深めるという、高尚な目的もあるが、硬くなりつつある前頭葉の老化防止策の方が強い。検定の合否よりも、受験する前向きな姿勢の維持を目指している。「駄じゃれ」風に言う、高齢者がかぶる「ボケ帽子」。
▼毎週1回ボランティアとして、地域活性化の観光案内所で待機していると、いろんな目的でJR大聖寺駅を降りた旅人が立ち寄る。
▼先祖の墓参りに高齢化した子孫が、毎回立ち寄る。現役時代に、納品に訪れた老舗の店の安否を訪ね寄る元営業マン。関東在住の人が、子どものころから聞かされた父親のふるさとが大聖寺だった。他界した父親が懐かしんでいた場所を、探しにきたというリタイア後の旅行者。
▼最近、興味ある話を聞いた。リタイア後に地域貢献で、ボランティア・ガイド役をしている仲間が、数年前に金沢からのグループを観光案内した。そんな縁で親しくなった老女から、時折、直接連絡があり、大聖寺の散策に付き会ったという。今回、独り杖をつきながら来聖。しばしの時間、話し相手をしたという。大聖寺に嫁いだ娘に、母親が会いに来たという情景が思い浮かぶ。
▼「ふるさと検定」で得た知識は、橋立漁港にあがった魚の刺身を、盛り付けた「九谷焼の大皿」のようなものである。旅人は、「九谷焼」でなく、季節毎の味やふるさとの匂いを楽しみ来る。そして、人情にも触れに来る。