世界へ発信の「セト化」。
日本に来て、「みそ汁」にハマっているという千葉大学院生がいた。「海の重伝建地区」橋立の「北前船資料館」へ向かう途中、歩きながらの会話から聞こえてきた。大聖寺で2泊3日の「文化合宿」は、最後の日程をこなす最中だった。
▼中国からの留学生が、学食などの和食に出る「みそ汁」は、ふるさとにはない献立の一品。歩きながらの会話だから、話の流れは別として、「郷に入っては郷に従え」なのかと、聞き耳を立てていたが、そうでもないらしい。
▼海の町でとった昼食にも、みそ汁が出た。寒仕込みの味噌が1番おいしい食べごろは、秋の時期だともいう。長く外国生活していた邦人が、帰国したら、まず一番に「みそ汁」を味わいたいという話はよく聞く。
▼学生たちは、「学術的造園学」を学んでいるという。勉学も然る事ながら、「みそ汁」が好きになった留学生。もう既に、味噌文化で「日本化」している。
▼引率の教授も、居住区が東京でも、先祖が関西だから北陸地方の味に近い、みそ汁の味が口に合ったという。「みそ汁で ふるさと分かる 秋の旅 吾亦交」。
▼大聖寺の「文化合宿」を引っぱっている「歴町センター大聖寺」の「瀬戸達(さとる)」は、「町並み保存連盟」の中でも有名人。「歯に衣着(きぬき)せぬ」発言は、コピー語でなく、実績が伴う行動から来た説得力に、熱いものが感じるからでもある。
▼盛りだくさんの日程を終えて、加賀市役所の中型バスは、加賀温泉駅に到着した。車中、世話になったお礼を兼ねて、引率先生からのあいさつがあった。「学生の皆さんは、文化合宿で学んだことは基より、瀬戸さんから学んだ多くの貴重な実績から、卒業後の就職先でもある企業や官庁でも役立つ、『瀬戸化』を実践してください」。と結んだ。
▼さわやかな秋風の加賀の地で、邦人学生に混じって、熱心にメモをとる中国の留学生たちに出会った。後世に残す、遺産を守る活動の一環を、世界にも発信した3日間でもあった。