「きょうは、ありがとうございました。皆さん方は、心から加賀市を愛していることが分かりました」。と、錦城中学の校長は謝辞の言葉を結んだ。会場は、昭和26年に製造された電車の中だった。山中温泉と大聖寺駅を走っていた電車は、現在も大聖寺八間道の「流し舟」乗船場の待合室として、65年経った今も活躍している。
▼「モハ3751」の電車は、定員110人で、窓側に長い座席定員は52人。シートはまだ当時のクッションのままで、吊革も痛んでいない。リタイヤした電車には、「流し舟」に招待された中学生15名が、行儀よくシートに座っていた。
▼乗船する前には、招待した「NPO法人・大聖寺歴町センター」の「若手起業家支援センター・活性化サロン」が準備した、エキシビジョン的な「健康ストレッチ」と「カイロプラクティック」を体験してもらった。そして、定住促進用の、15分間サイレント映画「匠のかくれ里・大聖寺」の鑑賞会もあった。
▼15人の生徒も、引率した先生も、用意した「流し舟」などの体験は、初めてだったろうが、揺れる舟や運動前のストレッチと、肩こり治療法には、素直な感嘆の声が聞こえていた。だが、初めて見る映画写真から、加賀市の素晴らしい山並みや日本海の夕日の景色。見慣れた祭りや町並みの老舗の店に、伝統工芸の歴史。そして、幼きころに体験した保育所での取り組みや元気な老人会の行事を黙って見ていた。
▼11月の初雪が東京に降るという。紅葉に映えた時期も終わった大聖寺川は、いつものようにゆっくりの流れだった。この生徒たちを招待した瀬戸事務長は、開会の言葉として「生まれ育った加賀市には、古代から多くの人々が住んでいた歴史の跡がある。そして、これらの伝統を引き継いだ素晴らしい先人のおかげで、今の私たちがいる。どうぞこの体験を思い出して、勉学に励んでほしい」と、お願いした。解散の折、「舟で食べたケーキはどーやった」と、聞いた。返事は「ありがとう」。
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