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「人生一寸先は闇である」。ふと、そんな言葉を思いだした。日曜日に放映した、アニメーターの「宮崎駿」の「終わらない人・・・」と、題した「NHKスペシャル」のDVD録画を、仲間に依頼してまで観たかった。録画は、「活性化サロン」の大型テレビで見ることができた。予告編の感動は間違っていなかった。

▼2013年に引退した宮崎駿は、引退していなかった。誰もいなくなったジブリで、手書きの漫画をインターネットの画像処理を駆使して長編映画の制作を模索していたという。引退後の700日間は、悠々自適の生活でなく。次なる制作にスタッフを集めてCG画像の制作をスタートしていた。

▼長年温めていた幻の映画、「毛虫のボロ」のCG制作に取りかっていた。230万本の毛が、コンピュータの自動計算で書き上げるという時代になってきている。手書きの絵コンテから、CGで仕上がる別世界の制作現場の様子を見た。

▼残された時間をどう生きるか。同世代の彼とわが身を重ねる。住む世界は違うけれど、見習うことがある。若いスタッフから、「眼力が違うから、元気に見える」と勇気づけられたが、「後期高齢者だよ」と照れていた。友人が先に死んでゆく現実に会いながらも、もどかしながら目標に向かっている。

▼手書きの絵コンテが、コンピュータ画像処理でうまく描けない。「生まれた」毛虫のボロを表現したいが、いまいち表現できない事で悩んでいた。「30代とか40代の沸き立つような気持ちになんて持ちようがない」。同感である。彼を動かす原動力はなんだろう。「何もしないことがつまらない」という。同感である。

▼「面白いことは人にやらせない」。「生き物の気配がない」、「夜の魚を描く」。悩んでいたことを見つけた。それから、来る日も、来る日も毛虫の大群を描きつづけていた。「何処へたどり着きたいのですか」。だから、「生きることは映画を作ることです」。生きる世界は違っても、余生のわが身と、相通ずることを確認した。

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