2010年の南アフリカ共和国健康白書2010 South African Health Review (SAHR) によると、同国の高い妊産婦死亡率の原因の多くは予防可能なものであるという。
南アフリカでは、ミレニアム開発目標 MDG の1つとして掲げられている妊産婦死亡を減少させるという目標を達成することが出来ずにいる。同国の「コミュニティ調査2007」Community Survey of 2007 では、妊産婦死亡は出生10万人当り625件と報告されている。さらに、「妊産婦死亡の秘密調査に関する委員会」National Committee on Confidential Enquiries into Maternal Deaths (NCCEMD) は、2005〜2007年に報告された妊産婦死亡が、前回行われた調査と比較して20.1%増の3,959件に達したことを確認している。これらの結果は、1990〜2015年の間に妊産婦死亡を75%減少させるというミレニアム開発目標からは程遠いものである。
SAHRによると、妊産婦死亡の主要原因は妊娠に関係しない感染症であり、同死亡全体の43.7%を占めている。一方、(妊娠に関係する)高血圧、産科的出血、産科的敗血症は同死亡全体の33.7%に上り、人工妊娠中絶に関係する死亡が3.4%、急性虚脱 acute collapse が3.2%と報告されている。
SAHRでは、HIVが産科的敗血症など一般的な妊産婦死亡の原因を見えにくくしていることが指摘されている。HIV陽性の妊産婦の直接産科的原因による死亡率が高いことは、医療従事者によるケアのレベルと質に起因するものであり、「HIV陽性者に対して出来ることはあまりない」という認識が影響しているとされた。その他、HIVの母子感染予防などのプログラムに対する関心が高まっていることとは対照的に、日和見感染症の治療や妊婦の治療へのアクセスへの関心が十分ではないことが指摘されている。
SAHRは、妊産婦死亡の予防には、妊婦検診を提供する1次医療施設やICUを持つ3次医療施設を含む、保健システム全体が適切に機能することが不可欠であるとしている。そして、HIVなど妊娠に関係しない高い感染症の感染率が、ミレニアム開発目標の達成に近付いている国々と南アフリカ共和国の違いの原因のひとつとなっていると結論付けている。
原題:South Africa: Nation Fails to Prevent Maternal Deaths
出典:AllAfrica.com
日付:December 8, 2010
URL:http://allafrica.com/stories/201012090221.html
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