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グローバル・エイズ・アップデート

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2018年04月

2018年04月23日15:56
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グローバル・エイズ・アップデート
GLOBAL AIDS UPDATE
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第341号(第18巻第16号)2018年(平成30年)4月22日
No. 341(Vol.18-No.16) Date:2018年4月22日
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★「第341号」目次

くろまる対策・課題別記事、アフリカ以外の地域別記事
・(スイス)グローバルファンド、ハイネケンとの連携を停止
・(インド)インドにおけるエイズ治療新薬「ドルテグラビル」導入の効果

くろまるアフリカの地域別記事
・(タンザニア)AIDS教育センター20か所設立
・(ジンバブエ)性感染症薬の不足による打撃
・(ルワンダ)HIVに対する国際的な連帯と説明責任を要求

------------------------------------ Vol.18 No.16---
【2018年3月29日】3月29日、グローバルファンドは、大手ビール会社ハイネケンのキャンペーンガールに対する性的虐待や健康被害を理由に、連携を停止ことを発表した。この発表の約1週間前、オランダ人ジャーナリストのオリヴィエ・ファン=ベーメン氏Olivier van Beemenの取材により、「ハイネケンはキャンペーンガールを宣伝に起用してアフリカの10カ国でビールを販売しており、彼女らは仕事場で望まない親密な関係を迫られたり、虐待や売春行為の被害に遭っていたりしている」という記事が、オランダの新聞「NRC」のウェブサイトに掲載された。グローバルファンドのハイネケンとの関係の停止決定はこれをベースにしたものである。

一方、ハイネケンのキャンペーンガールに対する待遇が問題視されたのは、今回が初めてではない。2007年、ハイネケンは100以上の国で15,000人ものキャンペーンガールを起用していた。ある調査報告では、70のビール宣伝のマーケットにおける、キャンペーンガールの性的虐待、十分な賃金が支払われていないこと、飲酒や露出の多いユニフォーム着用の強制が浮き彫りとなった。しかも、キャンペーンガールの扱いに関する問題は以前より問題視されていたが、ハイネケンはこれまで労働環境の改善を怠ってきた。

<周囲の反応>
ハイネケンとの連携に関するグローバルファンドの対応に対しては、厳しい批判がいくつか挙がっている。2018年1月、グローバルファンドとハイネケンは、ともに感染症と闘うための連携を発表した。グローバルファンドは、公衆保健運動の活動家たちの多くから、アルコールという人々の健康を害する製品から利益を得ている会社との連携に対して非難を受けていた。

グローバルファンドのハイネケンとの連携について、グローバルファンドに抗議文を提出した3つのNGOの一つで、アルコールや薬物の害を減らすための運動をしている「よきテンプル騎士団主義者の国際機構」IOGT International (International Organization of Good Templars)のクリスティーナ・スパーコヴァ氏 Kristina Sperkovaは、今回の発表について、「停止では関係の解消を意味しない」と述べている。スパーコヴァ氏はさらに、この事態は、グローバルファンドがアルコール業界で大企業のハイネケンとの連携を結ぶにあたり、十分な調査を行っていなかった失態を表している、とも指摘した。グローバルファンドは、エビデンスに基づいたHIV・エイズ、結核とマラリア対策を理念として掲げているが、今回の事態やその対処の方法について、疑念は解消されていない。

くろまる原題:Global Fund suspends partnership with Heineken
くろまる出典:Aidspan
くろまる日付:2018年03月29日
くろまるURL:http://www.aidspan.org/gfo_article/global-fund-suspends-partnership-heineken-0
【2018年3月30日】新しいタイプの抗レトロウイルス薬のタイプである「インテクラーゼ阻害剤」の一種、ドルテグラビルDolutegravir(DTG)をベースとした抗レトロウイルス治療antiretroviral therapy(ART)は、欧米ではHIV治療の第一選択薬として推奨されている。DTGは比較的有害事象(副作用など)が少なく、患者の体内でウイルスがDTGへの薬剤耐性を獲得することが少ないといった効果が認められているほか、経済的にも安価で魅力的な薬である。

一方、インドでは非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)の一種であるエファビレンツEfavirenz(EFV)ベースの治療が「標準的なケア」the standard of care(SOC)とされている。そこで、今回インドではガイドラインが、免疫量を図るCD4の数(200を切ると日和見感染症にかかりやすくなる)にかかわらず、すべてのHIV陽性者を治療するという方針に改訂されたことや、インドのジェネリック薬企業でも徐々にDTGのジェネリック薬を製造するところが増えてきていることから、DTGベースの治療の臨床的および経済的効果をこれまでのSOCと比較分析した。

調査の方法としては、まず、個々人の属性やHIVの状態、治療状況に関するデータについて順に翌年の状態を予測するマイクロシミュレーション手法の「AIDSに伴う合併症予防の費用対効果国際モデル」The Cost-Effectiveness of Preventing AIDS Complications-international (CEPAC-I)を用いて、ART未治療の患者について2種類の治療法を比較分析した。この治療法は前述した、インドの標準的な治療ガイドラインに含まれているEFVとテノホビルTDF(正確な物質名はテノフォビル・ジソプロキシルフマル酸塩錠)、3TC(ラミブジン)の3薬の組み合わせと、DTGをベースとしたDTG、TDF、3TCの組み合わせである。まずこれら治療法に関する臨床試験データ、その他のデータソースから、48週目のウイルス量抑制(SOCは82%、DTGは90%)、そして年間のコスト(それぞれ98ドル、102ドル)などを含む多くのデータを投入した。今回のDTGの組み合わせのデータがないため、近い組み合わせのデータがどれくらい信頼できるかの強さを測定するため感度分析を実施した上で、費用対効果に影響すると考えられる範囲の変動幅を明らかにした。さらに、費用対効果の増加率incremental cost-effectiveness ratios(ICERs)について、1年生存させるためにかかる費用がインドの一人あたり国内総生産GDPの半分より少ない治療法を、費用対効果がよいと見做すこととし、2つの治療法を比較した。また、SOCとDTGの2つの治療法の、予算へのインパクトやHIV感染への影響(それぞれ444,000人、916,000人)をそれぞれ比較した(2015年度は1600ドルなので800ドル未満であればよい)。

その結果、まず、5年生存率は、旧来のSOCで76.7%であったのに対して、DTGは83.0%、平均余命はSOCが22.0%に対してDTGは24.8%であった(年3%差し引いた計算によると、それぞれ14.0年、15.5年)。これはHIV感染者によって今後5年間で予測される感染1万3000人が回避できる予測であり、生存中にかかる治療コストの減少率がSOCでは3040ドルに対してDTGは3240ドルであった。さらに、DTGを受ける場合、生存期間のICERが年130ドルとなり、これは2015年度のインド一人あたり国内総生産のうちの10%より低かった。DTGは、条件としてこの3つの薬剤による治療法の年間費用を180ドル未満に維持できれば、ICERをインドの一人あたり国内総生産の50%未満に維持することが可能である。今後2〜5年間、HIV関連の治療に伴う支出の総計については、2つの治療法はほぼ同じであると予測される。

DTGをベースとした治療法は今後、WHOの推奨、および低・中所得国における第一選択薬として受け入れられていくなど期待されている。今回の分析においても、この治療法は費用対効果がよりよいと示されており、データの信頼性も明確であることから、インドにおいても第一選択肢として導入すべきであろう。

くろまる原題:The Cost‐Effectiveness and Budgetary Impact of a Dolutegravir‐Based Regimen as First‐Line Treatment of HIV Infection in India
くろまる出典:Journal of the International AIDS Society
くろまる日付:2018年3月30日
くろまるURL:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/jia2.25085
【2018年3月29日】東アフリカに位置するタンザニアの国家エイズ委員会(TACAIDS)は、南部の回廊地帯(海岸沿いの首都ダルエスサラームからザンビアに向けた帯状の地域)に20のAIDS教育・訓練センターを設立している。目的は、HIV陽性者が比較的多い南部高原での対応を進めるためだ。現在感染率がもっとも高い地域は、法律上の首都であるドドマDodomaであり、この地域のHIV1陽性率はこの4年間で72.4%上昇している。

この計画では、HIVに加え、肝炎や結核、性行為によって感染する併存疾患について、地域社会が教育の機会を持てるようになることを目指す。TACAIDSの代表であるレオナルド・マボコ医師Dr. Leonard Mabokoは、この計画は感染率の高い地域に対し、タンザニアのエイズ信託基金を通じてTACAIDSが行う対策の一環であり、南部には少なくとも20ヶ所つくると述べた。

HIV/AIDSの教育・訓練センターは、抗ウイルス治療、日和見感染症への対応、予防方法や暴力の対応などを含めた教育を様々な地域で行うために使われる。センターでは、人々の教育に加え、HIVの予防と治療に必要な技術的支援を医療機関に対しても提供している。

タンザニアの南部回廊のセンターは、HIVの感染率が高いンジョンベNjombe、イリンガIringa、ムベヤMbeyaの3地域にまたがってつくられる(2017年の国家統計局(NBS)によれば、感染率はンジョンベで11.4%、イリンガで11.3%、ムベヤで9.3%であった)。この3地域はザンビアにもつながる主要な陸上ルートでもあり、多くのトラックドライバーが往復をする。この地域にセンターをつくる狙いは、他の地域や人々にHIVが拡散されることを防ぐことである。

タンザニアでは、HIVの感染率における地域差が大きい。国全体でのHIV陽性者は少なくとも140万人いるが、海岸沿いの南部のリンディLindiや沖合の島でタンザニアを構成する共和国の一つであるザンジバルZanzibarではその割合は1%未満と低い。一方、ドドマDodomaやタンガTanga、ムワンザMwanzaではHIV陽性者の増加が著しい。最新の調査によれば、ドドマでのHIV陽性者の割合は、2017年に2・9%から5%に上昇した。タンガでも2.4%から5%、ムワンザでは5%から7.2%まで上昇した。

タンザニア政府は法律上の首都で国の中央に位置するドドマに行政府を移転し、人口の少ない中部地域への移住を奨励する政策をとってきた。レオナルド・マボコ医師Dr. Leonard Mabokoによれば、この政策はエイズとの闘いを阻害する結果にはつながっていないという。委員会は、Dodomaで過去4年間に72%陽性率が上昇したことについて懸念を示しつつ、政府に対してドドマへの移民流入がパニックを引き起こさないよう行動することを求めている。

くろまる原題:Tacaids Sets Up 20 AIDS Education Centres
くろまる出典:Tanzania Daily News
くろまる日付:2018年03月29日
くろまるURL:http://allafrica.com/stories/201803290056.html
【2018年3月29日】アフリカ南部の内陸国ジンバブウェの北東部に位置する東マショナランド州の州都マロンデラでは、ヘルスセンターの薬剤不足のために、性感染症の患者がクリニックで治療を受けられない状況である。

性感染症に取り組む団体は、このことで、性感染症が患者のパートナーにも感染するのではないかと懸念している。

国家エイズ委員会National AIDS Council(NAC)の東マショナランド州の責任者、ウィルフレッド・ドゥベ氏Wilfred Dubeによると、多くの患者が公的医療機関でなく、民間薬局で性感染症薬を買わざるを得ない状況だという。

しかし、患者のなかには値段が高いために民間薬局で買うことができない人もいて、パートナーへの感染リスクが高まっている。

ドゥベ氏は、「地域クリニックでは性感染症の薬が不足している。ほとんどの患者は薬局で薬を買うように言われているが、ほとんどの性感染症の治療には2剤から3剤の薬剤が必要なところ経済的理由から1剤しか買えない患者もいる。そうなると完全に治らないばかりではなく再発しやすい」と話している。

さらにドゥベ氏は、「薬剤不足により新たな感染と闘う国家エイズ委員会の努力が無駄になっている」と述べ、新たな性感染症の増加がコンドームに対する理解不足に起因していると考えている。東マショナランド州では、マロンデラ、ムレワ、ムトコの各地区がHIV陽性者が最も多い地域とされている。

くろまる原題:Zimbabwe: Marondera Hit by Shortage of STI Drugs
くろまる出典:New Zimbabwe
くろまる日付:2018年03月29日
くろまるURL:http://allafrica.com/stories/201803290559.html
【2018年3月26日】アフリカ中部の内陸国であるルワンダにおいて、公衆衛生とプライマリー・ヘルス・ケアを担当する国務大臣であるパトリック・ンディムバンジ博士 Dr Patrick Ndimubanziは、2019年12月に開催予定のアフリカ・エイズ性感染症国際会議 the International Conference on AIDS and Sexually Transmitted Infections in Africa (ICASA)に着手することを宣言する記者会見で、保健セクターの取り組みを前進させるためのお互いの説明責任の強化と地球規模の連帯を呼び掛けた。この会見ではまた、ICASAのロゴとテーマの公募が呼びかけられた。

「私たちはエイズや性感染症、関連疾患へ対処するため最新のエビデンス、に基づいた政策や戦略に関しての包括的な議論を楽しみにしている」

彼は、この会議がHIVへの闘いを妨げる課題を解決するための絶好の機会だと付け加えた。

「今こそアフリカにおける自由な人やモノの移動をどう実現するかを語るときであり、また、持続可能な開発目標(SDGs)について話をするときであり、またHIV、そして生涯に渡って健康的で生産的な生活を人々に提供するという目標にどう到達するかについて話すのに絶好の機会である。また政策担当者として、アフリカ諸国がどのような最新政策や戦略を採用しているのを見て、HIVに立ち向かうための課題をどのように解決すればいいかを議論したい」

会議は、最新の科学的知見、政策や戦略について共有するための場を提供する。

ルワンダはHIV/AIDSをなくすための闘いにおいて、確固たる進歩を遂げて来た。HIV感染率はここ10年3%に抑えられており、口腔内自己検査(口腔内の粘膜を綿棒で取り機関に送付することで行う自己検査)、自主的なカウンセリングと検査サービスの拡大や、移動型のコンドーム販売キヨスクの設置など、最新の画期的アイディアも発表されてきた。

アフリカ・エイズ協会 Society for AIDS in Africaのルーク・アルマンダ・ボデア氏Luc Armand Bodeaは会議を、HIVの新しい動向を知るためのいい機会だとした。

「私たちが今話している間も、人々は偏見にさらされ続けている。しかしそれ以上に、私たちは困難に直面している。ICASAは日々直面している困難について語ることのできない人々のために、その障壁を超えるための場を提供するものだ」

同協会の役員であるナムウィンガ・チントゥ博士Dr Namwinga Chintuは、これは特別な会議だという。なぜならこれはアフリカ人によるアフリカ人のための集まりだからだ。

彼女はこの会議が、プロジェクト実行者とアフリカの科学者たちがHIVについての知識と経験を共有するための場であるという。ルワンダ政府が非常に熱心になっていること、また彼らと共にこの会議を成功に導けることを喜ばしく思っているという。

<ICASAについて>

ルワンダは、今回で20回目となるICASA2019の主催国であり、そのロゴは国の特徴、SDGs、90−90-90や2030年までにエイズを終息させる目標などを反映したものとする予定だ。個性的で最適なロゴを求めてコンテストが開催され、採用者には賞品が贈られる。コンテストは全てのアフリカ諸国に開かれており、特にアーティストやHIV陽性者などの参加が推奨される。

ICASAは主要なそして唯一の、アフリカで開催されるバイリンガルな会議である。コミュニティを脆弱にする疾病であるHIVや結核、マラリアからアフリカが解放されることで、HIV/AIDSの影響を緩和するため1990年から開催されている。現在まで14カ国で開催されており、通産10万人以上が参加した。

くろまる原題:Rwanda: Call for Solidarity, Accountability in Global Fight Against HIV
くろまる出典:The New Times
くろまる日付:2018年3月26日
くろまるURL: http://allafrica.com/stories/201803260421.html
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発行者:AJF

アフリカ日本協議会

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