[フレーム]

グローバル・エイズ・アップデート

世界のHIV/AIDS情報を日本語で配信中!


東アフリカ、ケニア共和国の首都ナイロビ東部の貧困地域イーストランドにあるプムワニ産科病院 Pumwani Maternity Hospital では、携帯電話を利用したHIVの母子感染予防を促進するための実験プロジェクトが行われている。

このプロジェクトは、2010年7月にケニア・エイズ対策プロジェクト Kenya AIDS Control Project によって開始された。携帯電話を利用することにより、HIV陽性の妊婦が抗HIV薬ARV を適切に内服できるようにサポートする他、妊婦に対して、胎児にHIVを感染させるリスクを軽減するために知っておくべき情報を提供することを試みている。

ケニアでは、携帯電話は最も一般的な通信手段となった。また、近年における複数の携帯電話会社による価格競争により、より多くの人々が携帯電話を利用するようになってきている。

プロジェクトの参加者の選出は、受診したHIV陽性の妊婦へのアンケートに基づいて行われる。アンケートでは、年齢、健康状態、HIV陽性の結果を得た時期、治療を受けているかなどについて確認する。病院から居住地までの距離がそれ程遠くないこと、英語又はスワヒリ語が理解できることなども選考の基準となる。HIV陽性の妊婦は全員が抗HIV薬を提供されるが、うち無作為に選ばれたグループには携帯電話を利用してSMS(ショート・メール・メッセージ)が送られる。出産後には全員を追跡調査し、抗ウイルス薬治療の効果及び携帯電話のSMS利用の効果を評価する。

プロジェクトへの参加が決定した妊婦には、一週間に一度、妊婦検診を知らせるSMSが送られるようになり、臨月には抗HIV薬内服を促すSMSが送られる。しかし、携帯電話は誰が使用するかわからないため、SMSにARV(抗HIV薬)という単語は使わず、「ビタミン剤を内服するのを忘れないように」というメッセージが送られる。HIV に対する差別・偏見とHIV陽性であることを隠さなければならないプレッシャーは、ケニアにおけるHIV陽性の女性たちが直面する問題だ。

その他、極度の貧困や低い識字能力も問題となっている。検診の予約をしても、日々の生活に精一杯で病院に行けないこともある。また、英語やスワヒリ語が理解できても読むことができないために、SMSが役に立たないこともあるという。

プムワニ産科病院の最高経営責任者である小児科医のフリーダ・ゴヴェディ氏 Frida Govedi は、プロジェクトの可能性に期待を寄せながらも、「HIVの母子感染予防のためには、可能ならば妊娠14週目には抗HIV薬の内服を始めたいところだが、多くの妊婦は妊娠20週以降にならないと病院に来ない。」との懸念を述べている。

プロジェクト実施に直接関わっている看護師のジュリエット・ワンガリ・ジュグナ氏Juliet Wangari Njuguna は、1日に90人以上の妊産婦との間で携帯電話のSMS及び電話のやり取りを行っている。忙しいが、人々の人生に良い影響を与えることのできる仕事に大きなやりがいを感じているという。

プロジェクトは、2013年半ばに終了する予定となっている。

原題:Mobile Phones to the Rescue for Pregnant Women
出典:IPS
日付:December 22, 2010
URL:http://ipsnews.net/news.asp?idnews=53937
Categories
Archives
発行者:AJF

アフリカ日本協議会

traq

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /