【2023年 3月30日 ナイロビ(ケニア)発】2022年12月5日、グローバルファンドが持つ資金不正使用等を捜査・監査する独立機関である総合監察官事務所 Office of Inspector General(OIG)は、保健省 Ministry of Health (MOH)の一部門である全国エイズ・性感染症管理プログラム National AIDS and STIs Control Programme(NASCOP)における不正・談合行為に関する調査報告書を発表した。全国エイズ・性感染症管理プログラムは、HIV助成金の事業実施団体 Sub-Recipient(SR)であり、主要資金受取団体Principal Recipient (PR)は国庫である。
調査対象期間中、全国エイズ・性感染症管理プログラムには総額2千6百万ドルの資金が付与され、同プログラムは140万ドルの宿泊費および140万ドルの印刷費を計上した。これらの支払いは電子送金(EFT)を通じて行われ、複数の支払いをまとめて1枚の小切手として銀行に提出されることが多かった。
2021年6月、グローバルファンド事務局は総合監察官事務所に対し、現地資金機関 Local Fund Agent (LFA)による監査において、全国エイズ・性感染症管理プログラムの財務管理に不正が含まれることを確認した、と通知した。業者選定のための競争入札で落札したことになっていたホテルが実際には見積もりを提出していなかったことや、裏付け書類のない業者への印刷費の支払いが確認された。事務局は調査結果に基づき、改ざんされた支払額4万3千ドルと、不適切な宿泊費1万4千ドルの返還を要請した。これらが払い戻されたかは不明。
調査は、不正行為の責任者の特定と、不正行為が恒常的なものかの確認に重点を置いていた。
◆だいやまーく調査結果
1. 全国エイズ・性感染症管理プログラムのホテル選定手順において、見積書の捏造やホテルサプライヤーとの談合により、3万ドルの過剰な価格上乗せと、2万ドルのコンプライアンス違反などの、組織的な不正行為が特定された。他にも同様の不正が行われていた場合、損失は26万4千ドル(総宿泊代の2割相当)に及び、宿泊代全額も影響を受けた可能性がある。
2. 裏付け書類のない業者への印刷サービスの不正支払いは、1万7千ドルに及んだ。
3. プログラム内の職務分掌の欠如、脆弱な財務管理システム、透明性のない銀行記録は、禁止行為を可能にする環境を作り出していた。
◆だいやまーく是正措置
調査結果に基づき、グローバルファンド事務局は以下のことを約束した:
•すべての責任主体から適切な回収可能額を決定し、追求する。金額は、適用される法的権利および義務の評価と、それに伴う回収可能性の判断に従い事務局が決定する。
•主要資金受領団体(PR)に対し、禁止行為の責任を負う全関係者に対して、適切な措置をとるよう要請。
•PRと協力し、調達プロセスの管理と監視を強化する。
•PRと協力し、支払手続きと記録プロセス、適切な仕入れ先マスターデータの維持を強化する。
•PRと協力し、支払いの検証および調整を可能にするメカニズムを強化する。
全国エイズ・性感染症管理プログラム は、不正行為に関与した2名のスタッフ(調達、会計担当者)をすでに解雇しており、内部統制の改善と、元スタッフに対する懲戒処分を行うとしている。
◆だいやまーく解説
今回の経験は、助成金の適切な使用を保証する、現地資金機関の重要性を強調するものである。しかし調査は宿泊代と印刷費のみに限定されており、他の支出については不明。
2021年6月時点で全国エイズ・性感染症管理プログラムの財務管理に不正があると事務局から総合監察官事務所に通知していたことを踏まえると、2022年3月に公表された監査報告書に、当調査について言及があるべきである。また事務局の行動2つ目である主要受領者への措置要請は、報告書が公表された時点ですでに行われていたはずである。
さらに事務局の行動2〜5は、いずれもPRである国庫と協力する必要があるものだが、全国エイズ・性感染症管理プログラムは保健省内の資金受取・実施団体であり、国庫が保健省内部の改革を行うのは困難である。政府省庁(この場合は国庫)が、他の省庁に介入して手続きを変更することは、正当な公務手続きに従わなければならないが、非常に時間がかかる上、事務局が決定することはできない。もし適切な是正措置を行いたいのであれば、保健省に注意を向けるべきである。
●くろまる原題: OIG Investigation Report on Global Fund Grants to Kenya
●くろまる出典: Global Fund Observer (by Aidspan)
●くろまる日付: 30 Mar 2023
●くろまるURL:https://gfo.aidspan.org/gfo_article/oig-investigation-report-global-fund-grants-kenya
2021年6月、グローバルファンド事務局は総合監察官事務所に対し、現地資金機関 Local Fund Agent (LFA)による監査において、全国エイズ・性感染症管理プログラムの財務管理に不正が含まれることを確認した、と通知した。業者選定のための競争入札で落札したことになっていたホテルが実際には見積もりを提出していなかったことや、裏付け書類のない業者への印刷費の支払いが確認された。事務局は調査結果に基づき、改ざんされた支払額4万3千ドルと、不適切な宿泊費1万4千ドルの返還を要請した。これらが払い戻されたかは不明。
調査は、不正行為の責任者の特定と、不正行為が恒常的なものかの確認に重点を置いていた。
◆だいやまーく調査結果
1. 全国エイズ・性感染症管理プログラムのホテル選定手順において、見積書の捏造やホテルサプライヤーとの談合により、3万ドルの過剰な価格上乗せと、2万ドルのコンプライアンス違反などの、組織的な不正行為が特定された。他にも同様の不正が行われていた場合、損失は26万4千ドル(総宿泊代の2割相当)に及び、宿泊代全額も影響を受けた可能性がある。
2. 裏付け書類のない業者への印刷サービスの不正支払いは、1万7千ドルに及んだ。
3. プログラム内の職務分掌の欠如、脆弱な財務管理システム、透明性のない銀行記録は、禁止行為を可能にする環境を作り出していた。
◆だいやまーく是正措置
調査結果に基づき、グローバルファンド事務局は以下のことを約束した:
•すべての責任主体から適切な回収可能額を決定し、追求する。金額は、適用される法的権利および義務の評価と、それに伴う回収可能性の判断に従い事務局が決定する。
•主要資金受領団体(PR)に対し、禁止行為の責任を負う全関係者に対して、適切な措置をとるよう要請。
•PRと協力し、調達プロセスの管理と監視を強化する。
•PRと協力し、支払手続きと記録プロセス、適切な仕入れ先マスターデータの維持を強化する。
•PRと協力し、支払いの検証および調整を可能にするメカニズムを強化する。
全国エイズ・性感染症管理プログラム は、不正行為に関与した2名のスタッフ(調達、会計担当者)をすでに解雇しており、内部統制の改善と、元スタッフに対する懲戒処分を行うとしている。
◆だいやまーく解説
今回の経験は、助成金の適切な使用を保証する、現地資金機関の重要性を強調するものである。しかし調査は宿泊代と印刷費のみに限定されており、他の支出については不明。
2021年6月時点で全国エイズ・性感染症管理プログラムの財務管理に不正があると事務局から総合監察官事務所に通知していたことを踏まえると、2022年3月に公表された監査報告書に、当調査について言及があるべきである。また事務局の行動2つ目である主要受領者への措置要請は、報告書が公表された時点ですでに行われていたはずである。
さらに事務局の行動2〜5は、いずれもPRである国庫と協力する必要があるものだが、全国エイズ・性感染症管理プログラムは保健省内の資金受取・実施団体であり、国庫が保健省内部の改革を行うのは困難である。政府省庁(この場合は国庫)が、他の省庁に介入して手続きを変更することは、正当な公務手続きに従わなければならないが、非常に時間がかかる上、事務局が決定することはできない。もし適切な是正措置を行いたいのであれば、保健省に注意を向けるべきである。
●くろまる原題: OIG Investigation Report on Global Fund Grants to Kenya
●くろまる出典: Global Fund Observer (by Aidspan)
●くろまる日付: 30 Mar 2023
●くろまるURL:https://gfo.aidspan.org/gfo_article/oig-investigation-report-global-fund-grants-kenya
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