【2022年2月16日、ナイロビ(ケニア)発】途上国の三大感染症対策に資金を供給する国際機関、グローバルファンド(世界エイズ・結核・マラリア対策基金)で、資金の不正使用の摘発や資金の効率的な活用に向けた提言を行う独立内部機関である総合監察官事務所(Office of the Inspector General, OIG)が、グローバルファンドの資金的支援を得て活動していた国際的な市民社会組織の資金横領に関する調査報告書をまとめた。不正を働いた団体はすでに閉鎖されているが、長年にわたり他の市民社会組織やグローバルファンドと密接に連携していたため、今回の調査結果は波紋を呼ぶ可能性がある。
OIGは2020年7月、オランダに拠点を置いていた市民社会団体、「国際市民社会サポート」(International Civil Society Support, ICSS)の関連口座に複数の財務不正疑惑があることを確認した。事件の発端は、2010年から2019年にICSSに勤務し、2019年に事務局長に就任した人物(2019年中に退任、以下「前事務局長」)が、ICSS及び結核アドボカシー団体であるGlobal Coalition of TB Activists (GCTA)、グローバルファンド理事会において投票権を持つコミュニティ代表団から、グローバルファンドからの資金である推定11万3000ユーロ(約1,500万円)を横領したことである。OIGは、調査過程で前事務局長が行った不正取引を確認し、ICSSも自己申告した。前事務局長は、ICSSから横領した資金をGCTAの銀行口座を通じて送金し、総額55万ユーロ(約7,200万円)を超える疑わしい取引を行っていたことが明らかとなった。ICSSは、長年にわたりグローバルファンドのパートナーとして高い評価を受けており、前事務局長も2015年から2019年にかけてグローバルファンドの理事会にコミュニティ代表団として出席していた。
GCTAはOIGの調査には協力的であったが、調査に必要な情報や記録を常に保有しておらず、支払いの実行や記録の保持をICSSの前事務局長に依存していた。組織内での内部統制が機能しておらず、前事務局長の周辺に権力が集中することにより、不正が時間の経過とともにエスカレートしていったことも明らかとなった。
そして、これらの組織に対するグローバルファンドの監視が不十分であることも問題となった。ICSSもGCTAもグローバルファンドが必要物資の支援等を行う典型的な団体ではなく、アドボカシー等のプログラム活動を提供する専門的なパートナーに近い存在であった。グローバルファンドはこれらの組織に対する保証メカニズムや評価方法は有しておらず、チェック機能は働いていなかった。
グローバルファンドは、事件の再発防止に向けて、まず回収可能額を確定して、関連団体から回収するとともに、標準業務手順書とガイダンスを作成して適切に監視・評価をしなければならないと調査報告書をまとめている。
原題:OIG Investigate of the Embezzlement of Funds in the Netherlands (16/02/2022)
出典:Aidspan
日付:2022年2月16日
URL:https://www.aidspan.org/en/c/article/5890
OIGは2020年7月、オランダに拠点を置いていた市民社会団体、「国際市民社会サポート」(International Civil Society Support, ICSS)の関連口座に複数の財務不正疑惑があることを確認した。事件の発端は、2010年から2019年にICSSに勤務し、2019年に事務局長に就任した人物(2019年中に退任、以下「前事務局長」)が、ICSS及び結核アドボカシー団体であるGlobal Coalition of TB Activists (GCTA)、グローバルファンド理事会において投票権を持つコミュニティ代表団から、グローバルファンドからの資金である推定11万3000ユーロ(約1,500万円)を横領したことである。OIGは、調査過程で前事務局長が行った不正取引を確認し、ICSSも自己申告した。前事務局長は、ICSSから横領した資金をGCTAの銀行口座を通じて送金し、総額55万ユーロ(約7,200万円)を超える疑わしい取引を行っていたことが明らかとなった。ICSSは、長年にわたりグローバルファンドのパートナーとして高い評価を受けており、前事務局長も2015年から2019年にかけてグローバルファンドの理事会にコミュニティ代表団として出席していた。
GCTAはOIGの調査には協力的であったが、調査に必要な情報や記録を常に保有しておらず、支払いの実行や記録の保持をICSSの前事務局長に依存していた。組織内での内部統制が機能しておらず、前事務局長の周辺に権力が集中することにより、不正が時間の経過とともにエスカレートしていったことも明らかとなった。
そして、これらの組織に対するグローバルファンドの監視が不十分であることも問題となった。ICSSもGCTAもグローバルファンドが必要物資の支援等を行う典型的な団体ではなく、アドボカシー等のプログラム活動を提供する専門的なパートナーに近い存在であった。グローバルファンドはこれらの組織に対する保証メカニズムや評価方法は有しておらず、チェック機能は働いていなかった。
グローバルファンドは、事件の再発防止に向けて、まず回収可能額を確定して、関連団体から回収するとともに、標準業務手順書とガイダンスを作成して適切に監視・評価をしなければならないと調査報告書をまとめている。
原題:OIG Investigate of the Embezzlement of Funds in the Netherlands (16/02/2022)
出典:Aidspan
日付:2022年2月16日
URL:https://www.aidspan.org/en/c/article/5890
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