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【 2020年3月24 日 シウダード・フアレス(メキシコ)発】中米ホンジュラスからメキシコ国境を経て米国に入国し、亡命を申請したフェルナンダさんは、米国カリフォルニア州のとの国境に面したメキシコの都市シウダード・フアレス市の移民シェルターに収容されている。彼女は、米国の移民管理局(The Immigration Agent)に自分がHIV陽性であること、そして米国に亡命したいことを訴えたが、メキシコにある移民のためのシェルターに送還され待機させられてから、薬も支援もないまま1か月が過ぎた。
2019年1月まで、米国政府はメキシコから入国した亡命申請者に対して、適切な医療措置を受けながら、米国内にとどまることを許可していた。しかし、トランプ政権は「移民保護手続」(Migrant Protection Protocols: MPP) (別名「メキシコに残れ」Remain in Mexico)政策を導入し、亡命希望者を米国外で待機させようと、国境のメキシコ側に追いやり始めた。

加えて、アメリカ合衆国税関・国境警備局(U.S. Customs and Border Protection: CBP)は亡命希望者のうち、重篤な状態であればこの手続きからは免除されると述べているが、それでもメキシコに強制的に送還される重篤患者がいるのは事実である。

アメリカ合衆国連邦巡回控訴裁判所(The U.S. Customs and Border Appeals)は先月、MPPが無効であるとの決定を行ったが、上告をうけて最高裁判所は結論がでるまでは有効と決定した。この判断は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下においても継続されている。

CBPによれば、亡命を希望する人が医療を含む包括的ケアの対象となるかは、その時の状況など緻密なレベル設定に基づいて専門医によって決定されている。しかし、それでも非営利組織「人権のための医師団(Physicians for Human Rights)」のキャスリン・ハンプトン医師(Dr. Kyathryn Hampton)によると、MPPにおける審査過程は身体的と精神的のニーズが考慮されておらず、申請者が亡くなるケースもあるという。

HIV陽性であるダニエル(21歳)は、祖国ベネズエラが政治的混沌に陥る中、治療薬が手に入らなくなり、T細胞が200以下に減少した。彼は薬を求めコロンビアに行ったが手に入らず、メキシコにある米国国境まで来た。しかし、彼のT細胞は既にAIDS発症の域に達しているにも関わらず、MPPのせいで、米国国境を越えることができなかった。その上、体重が落ち、皮膚は黄疸がみられるようになった。だが、彼のような亡命希望者に対して、移民管理局は薬や治療に関する情報は一切提供しないという。

加えて、公衆衛生の専門家は、メキシコのロペス・オブラドール大統領(Mr. Andres Manuel Lopez Obrador)の政権による保健への予算削減はHIV/AIDS予防や治療に影響を与えると指摘している。

米国政府は治療が必要な者も含めた亡命希望者に対して、米国本土ではなく中米のグアテマラに送致しようと動き始めた。これらの亡命希望者は、法的支援へのアクセスがほぼない状況である。シウダード・フアレス市から国境を越えたカリフォルニア州の都市エル・パソにある、ラス・アメリカス移民権利擁護センター(Las Americas Immigrant Advocacy Center)のリバス事務局長(Ms. Linda Rivas)は「私たちは誰がこのプログラムに含まれるのかを知るすべがないので、彼らのために闘うこともできない。」という。

2019年1月の発効より、実に6万人以上の亡命希望者がMPPによって送還されている。

冒頭のフェルナンダはシウダード・フアレス市のシェルターで彼女の小さな娘とともに待ち続けている。フェルナンダは祖国である中米のホンジュラスにいたころ、HIV陽性であることが周囲に知られてしまい、脅されるようにもなったため、祖国から逃れたが、現在、在住しているメキシコでも周囲に知られるのではないかと恐れながら、米国政府からの支援も期待できず途方に暮れている。

原題:She Told the U.S. Immigration Agent She was HIV-positive and Requested Asylum. She was Sent back to Mexico, without Medication.
日付:2020年3月24日

URL: https://www.washingtonpost.com/world/the_americas/she-told-the-us-immigration-agent-she-was-hiv-positive-and-asked-for-asylum-she-was-sent-back-to-mexico-without-medication/2020/02/27/8e6546b8-571a-11ea-8efd-0f904bdd8057_story.html
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