日独が監視リスト入りした理由
NHKのニュースです。
米財務省が半年に一度、議会に対して各国の為替政策に関して、レポートを提出しているのをご存知でしょうか?
そうです、為替操作をしている国がないかを報告するための制度です。
1988年からこの制度は始まっていて、1980年代から1990年代にかけて台湾、韓国、中国が為替操作国に認定されたことがあるものの、1994年以降は、どこの国も為替操作国には認定されていないといいます。つまり、近年の中国でさえ為替操作国には認定されていないのです。
「中国を認定せずして、どこの国を認定するのだ!」
そんな批判が予想されます。つまり、中国の行為を指摘しないのであれば、そのようなレポートは意味がない、と。
しかし、まあ、中国を為替操作国に認定してしまうと、米中の関係が益々ぎくしゃくしてしまうので、現実問題としてそれは大変難しいのです。ただ、その一方で、産業界からは絶えず他国の為替介入行為に対する不満の声が上っているので、政府としては、それなりの努力をしているという姿勢も見せない訳にはいかない、と。
そうした妥協の産物が、この為替報告書の制度ということになるのではないでしょうか。
いずれにしても、為替報告書に関しては、そんな思いを抱いていた人が多いと思うのですが...上にニュース報道にあるように、ルー財務長官がびっくらぽんをくらわしたのです。
つまり、為替操作国ではないものの、今後、中国、日本、韓国、台湾、そしてドイツを監視リストに入れて監視を強化する、と。
そもそも為替操作国として認定される要件としては、
(1)対米貿易黒字が大きいこと
(2)経常黒字が大きいこと
(3)常時、一方向の為替介入を行っていること
の3つを満たす必要がありますが、それら3つの要件のうち2つを満たしている国を要監視国に指定すると言うのです。
ということで、中国だけではなく、日本やドイツまでもがリスト入りとなったのですが...
でも、何故今、という思いを禁じ得ません。日本が現に今でも頻繁に為替介入を行っているというのであれば、分からないでもないのですが、そうではないのですから。
それに、ドイツはユーロ圏に属しているため、自国の独自通貨を所有してもいないのに何故監視されなければいけないのか、と。
この報告書が日本やドイツについて、どのように論評しているのかみていましょう。
退屈な論評ばかりですが、各論に入ると、本音が窺える表現も出てきます。
要するに、米国としては、日本が今にでも為替介入しかねないので、その前に釘を刺しておきたかったということなのでしょうか。
次はドイツです。
ドイツについては、依然疑問が残ります。確かにドイツの経常収支が大きいのは事実でしょうが、ドイツはユーロ圏に属しており、為替操作などできる筈がないのに何故リスト入りさせる必要があるのか、と。
それにドイツがユーロの価値を安くしようとして、超緩和策を声高に叫んでいるのであれば別ですが、ドイツは、むしろ超緩和策には反対する姿勢で臨んでいるからなのです。
結局、米国にとっては、経常黒字国は、全て怪しからん国だということになるのでしょう。
米国では大統領候補指名争いでトランプ旋風が吹き荒れています。そうしたなか、中国や日本の為替政策に対する批判の声が高まっているので、民主党のオバマ政権としても、そうした批判の声を抑えるために、自分たちもしっかりとそうした国を監視しているのだという姿勢を見せる必要があったということなのではないでしょうか。
いずれにしても、オバマ政権がそのような考えである以上、今後は円高ドル安の流れが強まるとみていた方がいいのではないでしょうか?
この為替レポートで黒田総裁が名指しされ、マイナス金利政策にまで言及されたところをみると、この先、マイナス金利幅を大きくするような政策も採りにくいのではないかと思われます。
米国も他の国ばかり批判しないで、自ら経常赤字を縮小する方策を考えたらどうかと思う方、クリックをお願い致します。
↓↓↓
人気blogランキングへ
にほんブログ村 経済ブログへ
「アメリカ財務省は各国の為替政策に関する最新の報告を公表し、通貨を意図的に安く誘導する為替操作への監視を強化するため、中国や日本など5つの国と地域を新たに設ける「監視リスト」の対象にして動向を詳しく分析していくと発表しました。」
米財務省が半年に一度、議会に対して各国の為替政策に関して、レポートを提出しているのをご存知でしょうか?
そうです、為替操作をしている国がないかを報告するための制度です。
1988年からこの制度は始まっていて、1980年代から1990年代にかけて台湾、韓国、中国が為替操作国に認定されたことがあるものの、1994年以降は、どこの国も為替操作国には認定されていないといいます。つまり、近年の中国でさえ為替操作国には認定されていないのです。
「中国を認定せずして、どこの国を認定するのだ!」
そんな批判が予想されます。つまり、中国の行為を指摘しないのであれば、そのようなレポートは意味がない、と。
しかし、まあ、中国を為替操作国に認定してしまうと、米中の関係が益々ぎくしゃくしてしまうので、現実問題としてそれは大変難しいのです。ただ、その一方で、産業界からは絶えず他国の為替介入行為に対する不満の声が上っているので、政府としては、それなりの努力をしているという姿勢も見せない訳にはいかない、と。
そうした妥協の産物が、この為替報告書の制度ということになるのではないでしょうか。
いずれにしても、為替報告書に関しては、そんな思いを抱いていた人が多いと思うのですが...上にニュース報道にあるように、ルー財務長官がびっくらぽんをくらわしたのです。
つまり、為替操作国ではないものの、今後、中国、日本、韓国、台湾、そしてドイツを監視リストに入れて監視を強化する、と。
そもそも為替操作国として認定される要件としては、
(1)対米貿易黒字が大きいこと
(2)経常黒字が大きいこと
(3)常時、一方向の為替介入を行っていること
の3つを満たす必要がありますが、それら3つの要件のうち2つを満たしている国を要監視国に指定すると言うのです。
Pursuant to the Act, Treasury finds that no economy currently satisfies all three criteria, however, five major trading partners of the United States met two of the three criteria for enhanced analysis.
「法律に従い、米財務省は、現在、3つの要件全てを満たす国はないと考えるが、米国の5大主要取引相手が3つのうちの2つの要件を満たし、さらなる分析を要すると考える」
Treasury is creating a new "Monitoring List"that includes these economies: China, Japan, Korea, Taiwan, and Germany.
「米財務省は、『監視リスト』を新たに作成し、そこに、中国、日本、韓国、台湾、そしてドイツを入れる」
China, Japan, Germany, and Korea are identified as a result of a material current account surplus combined with a significant bilateral trade surplus with the United States.
「中国、日本、ドイツ、そして韓国は、対米貿易黒字が大きく、かつ経常黒字が大きい結果、指定された」
Taiwan is identified as a result of its material current account surplus and its persistent, one-sided intervention in foreign exchange markets.
「台湾は経常黒字が大きく、かつ、常時、一方向の為替介入を行っていることから指定された」
Treasury will closely monitor and assess the economic trends and foreign exchange policies of these economies.
「米財務省は、こうした国(地域)の経済動向と為替政策を注意深く監視する」
ということで、中国だけではなく、日本やドイツまでもがリスト入りとなったのですが...
でも、何故今、という思いを禁じ得ません。日本が現に今でも頻繁に為替介入を行っているというのであれば、分からないでもないのですが、そうではないのですから。
それに、ドイツはユーロ圏に属しているため、自国の独自通貨を所有してもいないのに何故監視されなければいけないのか、と。
この報告書が日本やドイツについて、どのように論評しているのかみていましょう。
Japan has a significant bilateral trade surplus with the United States and a material current account surplus.
「日本は、対米貿易黒字が大きく、経常黒字も大きい」
Japan has not intervened in the foreign exchange market in over four years.
「日本は、過去4年間、為替市場に介入していない」
Given Japan’s fragile growth outlook,it is increasingly important that the authorities use all policy levers, including a flexible fiscal policy and an ambitious structural reform agenda, to lift near-term growth.
「日本の成長見通しが脆弱なことを考えれば、当局は、短期的な成長を支援するための柔軟な財政政策や野心的な構造改革を含む全ての政策を用いることが重要である」
Treasury assesses that current conditions in the dollar-yen foreign exchange market are orderly, and reiterates the importance of all countries adhering to their G-20 and G-7 commitments regarding exchange rate policies.
「米財務省は、ドル円の為替市場の最近の状況は整然としたものであると評価し、全ての国が為替政策に関するG20及びG7の約束事項を守ることが重要であると重ねて強調する」
退屈な論評ばかりですが、各論に入ると、本音が窺える表現も出てきます。
In January the Bank of Japan (BOJ) surprised markets by introducing negative interest rates on a portion of excess reserves, with BOJ Governor Kuroda saying the BOJ will continue to do whatever it takes to achieve its 2 percent inflation target.
「1月、日本銀行は超過準備の一部に対するマイナス金利の導入を決定し、また、黒田総裁は、2%のインフレ目標を達成するために必要であればどのような措置も採り続けると言って市場を驚かせた」
After initially depreciating in the days following the BOJ decision, the yen resumed its appreciation against the dollar and, as of end-March, stood 8.9 percent stronger since its recent low in mid-November.
「日銀の決定後暫く、円は安くなったが、その後、再び対ドルで値を上げ、3月末時点では昨年の11月央につけた最近の安値から8.9%円高になっている」
Japanese authorities characterized exchange rate movements as "quite rough" and said that they would "continue to watch the foreign exchange market with a sense of tension, and . . . act appropriately if that becomes necessary."
「日本の当局は、こうした為替レートの動きを、『極めて荒っぽい』と評し、緊張感をもって外為市場を注視し続け...また必要な時には適切に対応すると述べた」
要するに、米国としては、日本が今にでも為替介入しかねないので、その前に釘を刺しておきたかったということなのでしょうか。
次はドイツです。
Germany has both a significant bilateral trade surplus with the United States and a material current account surplus.
「ドイツは、対米貿易黒字及び経常黒字がともに大きい」
Germany's 2015 current account surplus, at almost 290ドル billion, accounted for the bulk of the euro area’s surplus, and pushed the surplus of the euro zone to over 3 percent of GDP.
「ドイツの2015年の経常黒字は、おおよそ2900億ドルで、ユーロ圏の経常黒字の大部分を占めていて、ユーロ圏の経常黒字をGDPの3%にまで押し上げている」
The European Central Bank (ECB)has not intervened in foreign currency markets since 2011, and did so then as part of a G-7 concerted intervention to stabilize the yen following Japan’s earthquake and tsunami.
「欧州中央銀行は、2011年、日本で地震と津波が起きた直後に円を安定化させるためにG7の一員として協調介入した後、為替市場への介入は行っていない」
Nonetheless, Germany has the second largest current account surplus globally.
「しかし、ドイツは、世界で2番目に大きな経常黒字国である」
This represents substantial excess saving—more than 8 percent of GDP—that could, at least in part, be used to support German domestic demand, while reducing the current account surplus and contributing markedly to euro-area and global rebalancing.
「このことは、GDPの8%以上の過剰な貯蓄の、少なくてもその一部を国内の需要を支援するために用いることができることを意味する。そうすれば、経常黒字の縮小と、ユーロ圏と世界のバランス調整に貢献できる」
In Treasury’s view, Germany has adequate policy space to provide additional support to demand.
「米財務省の見解では、ドイツは、需要に対する追加支援を行う十分な政策余力がある」
ドイツについては、依然疑問が残ります。確かにドイツの経常収支が大きいのは事実でしょうが、ドイツはユーロ圏に属しており、為替操作などできる筈がないのに何故リスト入りさせる必要があるのか、と。
それにドイツがユーロの価値を安くしようとして、超緩和策を声高に叫んでいるのであれば別ですが、ドイツは、むしろ超緩和策には反対する姿勢で臨んでいるからなのです。
結局、米国にとっては、経常黒字国は、全て怪しからん国だということになるのでしょう。
米国では大統領候補指名争いでトランプ旋風が吹き荒れています。そうしたなか、中国や日本の為替政策に対する批判の声が高まっているので、民主党のオバマ政権としても、そうした批判の声を抑えるために、自分たちもしっかりとそうした国を監視しているのだという姿勢を見せる必要があったということなのではないでしょうか。
いずれにしても、オバマ政権がそのような考えである以上、今後は円高ドル安の流れが強まるとみていた方がいいのではないでしょうか?
この為替レポートで黒田総裁が名指しされ、マイナス金利政策にまで言及されたところをみると、この先、マイナス金利幅を大きくするような政策も採りにくいのではないかと思われます。
米国も他の国ばかり批判しないで、自ら経常赤字を縮小する方策を考えたらどうかと思う方、クリックをお願い致します。
↓↓↓
人気blogランキングへ
にほんブログ村 経済ブログへ