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経済ニュースゼミ

小笠原誠治の、経済ニュースを通して世の中の動きを考察するブログです。地球温暖化阻止のために石油・石炭産出権取引を提唱します。産出権取引は排出権取引とは違います。みんな勘違いするのです。

2011年11月

突然ですが、何故ユーロ危機は収まらないのか? 再びイタリア国債の利回りが上昇している(具体的に言えば、危機ラインの7%で推移している。29日に実施した3年物国債の入札の結果、落札利回りは、7.89%になった)というのですが..

結局、投資家が将来どんな事態が発生するかについて、確信を持てないでいるからでしょう。

でも、もう何度も何度もドイツやイタリアは、南欧諸国を救済する姿勢を鮮明にしていることも事実です。

しかし、投資家や南欧諸国にお金を貸している銀行は、思っているのでしょう。本当に、とことんイタリアやスペインを救うつもりでいるのか?と。だって、ギリシャの債務は、結局50%カットされてしまったからなのです。

どんなにお金がかかろうと、ドイツやフランスなど余裕のある国が中心となって、イタリアを救うつもりがあるのか?と。そこのところに、投資家はどうも確信が持てないでいるのでしょう。

これまでに何度も何度もドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が握手をし、協力体制を演出して見せているのですが..ただ、そうしてギリシャやイタリアを支援する姿勢は示すものの..例えば、ドイツのメルケル首相は、欧州共同債については一蹴するのです。

何故かといえば、そうやって共同債を発行するということは、ドイツがイタリアの国債に対して連帯保証をするのと同じことになるからです。確かに、そうやってイタリアなどが今までより安い金利で国債を再び発行できることになれば、欧州危機が収まる可能性もあるのですが..万が一のときには、当然のことながら連帯保証人に責任が及ぶと。そして、仮にドイツがそこまでコミットすれば、今度は、ドイツの資金繰りのために発行する共同債に対して、ドイツは今以上の金利を支払うことを余儀なくされることでしょう。

つまり、ドイツがコミットすればするほど、ドイツの国民に重い負担がかかるのは必至であるのです。

いずれにしても、ドイツやフランスなどは、17のユーロ圏加盟国の一か国たりとも脱落者にしたくはない。もし、脱落者を認めることになれば、ユーロという壮大な実験が失敗したことになる、と。

なんか20年ほど前の、我が国の金融行政を思い出してしまいます。「一行たりとも潰すことはない!」なんて。これぞ有名な護送船団方式。まあ、船団の一員であるということは心強くもある訳です。必ず皆が助けてくれるから、と。

で、そうして皆で皆を助けようとする方式について、外部の者がとやかくいうこともないのかもしれませんが..

傷が浅いうちはまだいいのですが、段々傷が大きくなると..果たして、全部を守ることができるのか、少しずつ心配になってくるのです。ひょっとしたら、他人のことどころではなくなるかもしれない、と。

それに、護送船団で守られているという意識があるうちは、徹底した改革が実行に移されにくいといこともあるのです。

ユーロ圏の理想というか、目指す姿は、ユーロ圏は一つであるということです。今は、形の上では別々の国のままであるが、目指す姿はアメリカ合衆国のように一つの国になる、と。で、そうなれば、どこかの国がどこかの国を救うなんていう発想もなくなる訳ですが..しかし、現実は違う。今でも、同じ国の人間なんていう意識はまるでない。民族も違えば言葉も違う。それなのに、何故自分たちが南欧の国を救わなければならないのか、なんて雰囲気が蔓延しているのです。

だいたい、ユーロ圏の問題を自分たちの力でどうにかすると気持ちがあれば、何も外部の中国に資金支援をお願いする必要などない訳です。そもそも、必要なお金はとことん、ドイツやフランスが出せばいい、と。

しかし、繰り返しになりますが、それは国民感情が許さない。また、そんなことをすれば第一次大戦中のようにハイパーインフレになってしまうかもしれないという恐怖心がある。それに、あまりのもドイツが支援しすぎると、イタリアが必要な努力を怠る可能性がある、と。

要するに、そのようにまだユーロ圏のなかに迷いがあるから、ユーロ危機が終息しないのです。

どっちかにせい! 助けるなら、とことん助けろ!

では、ここで関係者の考え方を整理しておきましょう。

・ドイツ(メルケル首相):共同債は必要ない。南欧諸国は救済するが、同時に彼らが緊縮政策を実施しなければならない。

・フィンランド:共同債の考えを否定。

・欧州委(バローゾ委員長):共同債を発行すべし。

・ポーランド:ECB(欧州中央銀行)が積極介入すべし。

・フランス(サルコジ大統領):ドイツの考えにも理解を示す。


さあ、如何でしょう。

「とことん助けろ派」は、バローゾ委員長とポーランドと言っていいでしょう。ドイツは危機感が足りないのではないか、と。

その一方で、債務国側の自助努力を強く求めるのがドイツとフィンランドであり、特に共同債の考えを真っ向から否定するのです。

まあ、共同債に関しては、私は、ドイツなどの主張が筋が通っていると思うのです。ギリシャやイタリアの国債の利回りが高いということは、そこに投資家の判断が反映されるということで、また、そうして市場が機能すればこそ、債務国側の努力も促されることになるのです。

ただ、それはそうであるものの、現実に、イタリアの国債の利回りが7%を超えるような事態が長く続けば、イタリアの財政事情が益々悪化することも否定できない事実であるのです。つまり、悲観的な見方がさらに悲観的な見方を呼ぶというself-fulfillingなプロセスに入っているということで、そのような場合には、一時的に市場の機能を停止させる措置が必要かもしれません。

それに、何故イタリアの国債の利回りが7%台に突入しているかといえば、ギリシャ債務の50%削減まで求めながら、それでもなおギリシャはデフォルトを起こしたわけではないからという理由で、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の支払いを行わないなんて恣意的なことをやったために、銀行勢による国債離れが始まったからというのです。

その辺のことは、本当に欧州の政治家に猛省を求めたいとことであるのです。

いずれにしても、ドイツなどの考えが正当であり、とことん助けることが適当ではないというのであれば、一時的に、例えばギリシャなどをユーロ圏から退出させ、自助努力で財政再建を果たさせることが適当であるのではないでしょうか。



10年以上前、日本発の不況を起こしてはいけないと、あれだけ偉そうなことを言っていた欧米勢ですが、今、一体どうなっているのでしょうか?
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世界の国々が参加する気候変動枠組条約17回締約国会議が28日、南アフリカのダーバンで開幕したと報じられています。

京都議定書の期限切れが2012年末に迫っていて、2013年以降の温室効果ガス排出の削減に向けて協議する最後のチャンスになるのだ、とか。

最後のチャンス?

でも、最後のチャンスにしては、世界中がしらけているとしか思えません。カナダなどは、そもそも京都議定書に参加したことが間違っていたなどと述べ..中国は全く関心を示しませんし、アメリカも、本気でこうした枠組みに参加するとはとても思えないのです。

ということで、我が国においても極めて関心が低いようで..新聞の論調も、温暖化阻止に向けて何とか努力すべきだなどという意見はなく、むしろ日本や欧州などだけに義務が課せられる京都議定書の延長には反対しろという意見が目立っているのです。

確かに、勝ち負けの観点で考えると、京都議定書の単純な延長は認めるべきではないでしょう。
でも..でも..

この際、アメリカや中国をその気にさせるように日本がリーダーシップを取る気はないのでしょうか?

もちろん、野田総理自身が、温暖化のメカニズムに懐疑的であるというのであれば話は違います。或いは、民主党として、温暖化をさほど問題視していないというのであれば、それならそれで今のような曖昧な態度にも納得がいくのです。

でも、もし、本気で地球温暖化の弊害を懸念するのであれば、とても今までのような生ぬるい対応では取り返しがつかないことになるのです。

取り敢えず、新聞報道をみてみましょう。

「政府は29日朝、地球温暖化問題に関する閣僚委員会を開き、地球温暖化対策などを話し合う「気候変動枠組み条約第17回締約国会議(=COP17)」で、アメリカなど温室効果ガスの主要排出国が参加しない場合、「京都議定書」の延長には応じないことを改めて確認した。」(NNN)

産経
「先進国でありながら京都議定書を離脱している米国や、途上国の一員として温室効果ガスの削減義務を負っていない中国やインドなど、すべての主要排出国が参加する新たな実効的枠組みの成立を期待したい。
だが、現実は極めて厳しい。昨年末のCOP16でもポスト京都の枠組み作りは不成功に終わっている。とりわけ日本は今回、苦境に立たされよう。このままでは13年以降に取り組みの空白期間が生じるとして、中国などが京都議定書の単純延長を強硬に主張しているからである。
(中略)
それでも京都議定書の単純延長論がまかり通るようなら、枠組み離脱を日本が宣言する事態となってもやむを得まい。日本には産業界の自主行動計画や、途上国への個別の技術支援を通じて削減を効率的に進める道がある。
地球温暖化防止交渉は、気候変動問題の本義を見失い、南北問題に逸脱しつつある。日本が
毅然とした姿勢を示せば、世界が正気を取り戻す効果も生まれよう。」


読売
「先進国のみに温室効果ガスの排出削減を義務付けた京都議定書は、欠陥の多い国際ルールだ。日本政府は議定書の延長に反対を貫く必要がある。
京都議定書の延長を主張する急先鋒せんぽうは、中国、インドなどの新興国だ。新興国にとり、
削減を義務付けられていない京都議定書は、都合のいいルールだからだ。
だが、経済成長が著しい中国は世界一の排出国となっている。インドの排出量も3番目に多い。
先進国でも、中国に次ぐ排出量の米国は、経済への悪影響を懸念して議定書を離脱した。上位
3か国が削減の対象外となっていることが最大の問題点と言えよう。
(中略)
日本は新たな枠組み作りを15年以降に先送りするよう主張する。13年以降は、各国が自主
的削減に取り組む「移行期間」とする。
現実的な提案だろう。今後の協議で支持が広がるよう各国に強く働きかけねばならない。」

日本や欧州勢だけが犠牲を強いられるようなスキームは、フェアではなく、また有効でもないことはよく分かります。だから、京都議定書の単純な延長に賛成すべきではないということも分かります。

でも、問題は、それだだけでは、地球温暖化の進展を食い止めることができないということなのです。何とかして、中国やアメリカ、そしてインドなどにも理解してもらい、ともに努力する道を探る必要があるのです。

何故、それを野田総理は目指さないのか?

やっぱり、地球温暖化の弊害がもっともっと顕在化しないことには、人間は気が付かないということなのでしょうか? でも、私には、相当に顕在化しているように思えるのですが..

問題は、中国やアメリカの石油や石炭の消費量に制約を設けようとするから、彼らがなかなかうんと言わないのです。そうではなく、石油・石炭の産出国に理解を求め、年間の生産量を絞ってしまえば済むことなのです。何故、その道を探ろうとしないのでしょう。


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依然として欧州危機が収まらないようです。

ライボー..、ライボーってご存知ですか?英語ではLIBORと書きます。London Inter-Bank Offered rates. ロンドンに所在する銀行が互いに融通し合う資金にかかる金利(ドル金利)を意味します。日本語で言えば、ロンドン銀行間取引金利と言うらしいのですが、その3か月もののLIBORが0.518%まで上昇しているのだとか。

何故、銀行間でやりとりするお金の金利がそんなに急上昇しているのか?

これは、金融危機が起きているときの典型的現象であるのです。つまり、通常であれば一番安全であるはずの銀行間の資金の融通に自信がもてなくなる、と。あの銀行に短期間とは言え、お金を貸しても大丈夫なのか? ちゃんと返してもらえるのか、なんてことを思うようになると金利が急騰してしまうのです。

ということで、依然として欧州が不安の種になっている訳ですが..それでも私は、最近のイタリアを巡る動きは少しばかり過剰反応ではないかと思っているのです。

何か急にイタリアに不安材料が発生しているのか?

ノーです。

イタリアの財政事情は急速に悪化しているのか?

ノーです。それどころかプライマリーバランスは黒字を達成していたのです。つまり、政府の借金の増加を食い止めるところまで来ていたのに..


では、イタリアには全く不安材料はないのか? ということで、本日は敢てイタリアの弱点を探ってみることにしました。

イタリアに弱点はないのか?

そういう質問をされれば、もちろんイタリアには弱点はある。それどころか大有りなのです。自分たちのごみの始末もできないイタリア。ゴミの始末もできないくらいだから、最初から原子力発電所を管理できるなんて思わない。従って、原発には反対。しかし、電力はどうしても必要だから、原発に頼っているフランスから電力を買う。

まあ、それはそれとして..英国のBBCは、イタリアについて次のようなことを言っているのです。
(What's the matter with Italy? 2011年11月14日)

・ギリシャ問題が飛び火する可能性のある国は、イタリアとスペイン。

・イタリアの経済力は強い。しかし、同時に公的債務の水準が高くなっており(対GDP比118%)、今後実現可能な方法で引き下げる必要がある。(メルケル首相の発言)

・イタリア政府の借金を減らすためには、歳出カットと増税が必要だという意見があるが、必ずしもコンセンサスができているわけではない。

・BISによれば、イタリアは、政府部門は別として、国全体としては海外に対する借金の依存度は高くない。

・イタリアは、ギリシャとは違い財政節度を保ってきた。

・イタリアの弱点は、経済成長力が低いこと。不必要な規制、既得権益、高齢化、投資の衰退。これらは全て、将来の成長率を引くするものである。

・イタリアの過去15年間の経済成長率は、年平均0.75%程度である。つまり、経済成長率が金利を下回っている。そして、この傾向が将来も続けば、イタリアの財政事情は悪化の道を辿ることになる。

さあ、イタリアの弱点がお分かりになったでしょうか?

規制が多い。既得権益がはびこっている。高齢化が進んでいる。そして、投資環境が悪い。これらはいずれも我が国に当てはまることばかり。そして、イタリアは、政府部門は借金を抱えているが、民間部門はそうではない、と。これもまた、我が国とそっくっり。

つまり、イタリアは見た目の借金は比較的に多いように見えても、本当に借金地獄にはまった状態かといえば、そうでもないというのが本当のところだと思うのです。

でも、ご承知のように、イタリア国債の利回りが7%台に達するなど不安は高まるばかり、だと。そして、不安が高まることによって、益々金利が高くなり、そうなれば、政府が幾ら緊縮財政に励もうとしても、財政状況は悪化するばかりであり..そして、そうやって財政事情が悪化すれば、益々金利は上がるのです。

つまり、今は、self-fulfilling、自己実現的なプロセスに入ってしまっているのです。こうなるともはや理屈ではない。行くところまでいかないと承知しないのでしょう。

政治家は、むしろ、黙ってみていればいいのです。イタリアの金利はどこまで上がるのか、と。10%を突破するようなことがあるのか、と。で、流石にそのような状況になれば、それは何でも行き過ぎだろうと、投資家が自ら考えるようになるでしょう。

つまり、投資家が冷静になるまで待つ! その態度がいいのです。

政治家が、ああでもない、こうでもない、なんて大騒ぎするから、市場が調子づいているのです。

ギリシャが幾ら緊縮財政を実行しようとも、財政事情が改善しないなんて声も聞こえるのですが、もっと長いスパンで判断する必要があることを皆分かっていないのです。



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ニュースをチェックしていたら「大企業の社外取締役義務付けへ」という文字が目に入りました。「政府・民主党は、25日、企業の不正を防いだり経営の透明性を高めたりするため、大企業には社外取締役を起用するよう義務づける方針を固めた」(日経)

まあ、こういうことが報じられるのも.. オリンパスや大王製紙の事件があったからでしょう。政府としても何か対策を打つ必要がある、と。

しかし、そもそもコーポレート・ガバナンスの問題であるのに、いきなり政府・民主党がモノを言うこと自体に認識の誤りがあるというべきでしょう。何故民間会社のガバナンスの問題に政治家が口を出そうとするのか? 先ずは、当該会社の株主たちがよく考えるべき話ではないのか? だったら、株主総会をもっと充実させるようなことを考えたらどうなのか?

それに、社外取締役を義務付けたからといって、本当に事故防止のために、もっと言えば、コーポレート・ガバナンスの充実強化のために役に立つものなのか、と。

私は、そんなもの殆ど役に立たないという意見です。もちろん、社外取締役を任命すれば、それはそれなりに意味があるでしょう。しかし、事故再発防止の効果まで期待できるかといえば、それは困難であるのです。

しかし、世間一般はそのようには考えず、社外取締役は会社内に緊張感をもたらし、結構な制度であると考えているようなのです。実際に、社外取締役或いは社外監査役を任命する会社が昔と比べ急増している訳ですから。

今、10名の取締役で構成される取締役会があるとします。トップは取締役会長。この会社のオーナーであり、最近まで社長を務めていた人が高齢になったために、代表権を返上し、会長に就任した、と。そして、次が代表取締役社長。会長の息子が社長を継いでいる、と。そして、その下に代表権がある専務取締役が1人いて、そして、その下に常務取締役が2人いて、そのうちの1人が社長の叔父にあたる人だとしましょう。そして、その下に平の取締役が5人いる、と。

10人の取締役のうち3人がオーナー一族の人間であり、一族以外の者は7人。しかも、その7人もこの会社一筋できた忠実なサラリーマン重役であるのです。

こんな会社があったとしたら、粉飾決算が起きやすいというべきなのでしょうか? 或いは、社長が、会社から借金をするようなことが起きやすいというべきなのでしょうか?

答えは、何とも言えない。それは、経営者や取締役の質の問題による、と。しかし、政府・民主党の案は、そもそも、役員のメンバーに部外者がいないような会社は、コンプライアンス上の問題が起こりやすいという前提を置いているのです。

確かに、役員の全部、或いは殆どが会長や社長が養ってきたような人々であれば、会長や社長に
とっては怖いものなし。ですが、誰を取締役にするかは株主の問題であって、株主が会長や社長の独断専行を許さないような体制を築くことが先決であり、形だけ社外取締役を義務化したから、それで問題解決になる訳ではないのです。

ただ、取り敢えず、法律で日本の大企業は、社外取締役の設置が義務付けられたと仮定しましょう。

そのような場合、ワンマンの社長や会長は、どんな人を社外から招へいするでしょうか? 自分に苦言を呈する人を選ぶのか? しかし、自分に文句ばかりいうような人をわざわざお金を出して呼んでくるほどお目出度い人がいるのでしょうか? しかし、だからといって、見るからにゴマすりタイプやイエスマンを呼ぶこともないでしょう。 ということで、外見は紳士的で、業界や海外の事情にも精通し、そして、ときに厳しい発言もする(しかし、本気になって自分たちを糾弾するようなことは決してない)ようなタイプの人を探し出そうとやっきになるでしょう。つまり、イメージを大切にするということです。如何にも外部の風が入り、今までの淀んだ空気が浄化され、経営体制に変化が表れたことを演出しようとする訳です。

しかし、今回のオリンパスや大王製紙の事件を見ても分かるように、仮に取締役会のなかの誰かがそうした不正な事実を告発しようとすれば、それは命がけの仕事にもなる訳です。決して生半可な
気持ちでは行うことなどできないのです。当然のことながらトップにもそれなりの責任が及ぶ、と。

そんな大変な役割を、縁もゆかりもない外部の会社の人間に期待することができるのでしょうか?
また、仮に、誰かがそうした社外取締役に就任するように要請されたとして、そのような命がけの仕事をしようという気になるものでしょうか?

社外取締役などになるのは、大抵は一流企業の著名な経営者か、或いは著名な弁護士、或いは
著名な公認会計士などに決まっているといってもいいのですが..そのような社外取締役が、これまでオーナー経営者の不正を摘発したというような話は寡聞にして聞いたことがありません。

むしろ、何かスキャンダラスな事件が起こった会社について調べてみたところ、結構有名な弁護士
などが社外取締役に名を連ねたりしているのが分かったりして..そして、急に社外取締役を辞めてしまう..なんていうケースが如何に多かったことか!

要するに、屁のつっぱりにもならない、ということなのです。

確かに、社外の者を新たに役員に登用するようなことをすれば、外部の空気がもちこまれることは
事実でしょう。しかし、だからといって、その1人か2人の社外取締役に大きな役割を果たすことを期待するのは大変に難しいのです。何故ならば、そうして新たに社外から取締役に選任されたものにとって、命がけの告発をするインセンティブが存在しないからなのです。

例えば、客観的なデータを公表する任務を負わされた監査法人であっても、自分たちの報酬がその会社から出ているために言いたいことも十分に言えない事実があるのに、単に1取締役の立場で
そこまででしゃばったことをするなんて..。もし、それが、自分が何十年と身を粉にしてきて働いてきた会社のためであれば、自分が首になろうとも..そして、今の若い社長が責任を取らされることになろうとも、先代への恩義を感じればこそ..という発想で、一石を投じるような行動に出ることも期待できないではないのですが。

私は、監督官庁を含め社会の目が、粉飾決算などに対しもっと厳しいものにならないことには、こうした事件の再発を防ぐことは難しいと思うのです。オリンパスは、こんなに長い間、偽装の会計報告を世間や株主に行ってきた訳ですが..内容を見れば分かる通り、監査法人や金融庁がその気になれば、見逃すような複雑な話ではない訳です。

如何にも..というような飛ばしであるからです。むしろ、それを粉飾と見抜けない方がどうかしているのです。ですから、社外から取締役をもってくるなんてことを義務化しないでも、金融庁や証券取引等監視委員会がもっと厳しく監視の目を常に光らせれば、こうした事件は起こりにくくなるのです。

でも、当局の幹部連中にはそうした摘発のインセンティブが働いていないのが事実です。つまり、そうしたことを仮に摘発しても、それが必ずしもその役人の出世につながらないから、役人も本気になろうとしないのです。

どうしても何かやるというのであれば、監査法人の収入源のあり方を抜本的に見直すことです。どうして監査対象の企業からお金をもらいながら中立な監査が確保できるなどと思うのでしょう。

監査法人や公認会計士の収入源について手を付けようとしないことが、政治家の知識のなさとやる気にのなさの表れであるのです。





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株価が落ちました。何故? とうとう危機がドイツにまで及ぼうとしているから。

ドイツに何が? ドイツが国債の入札をしたところ、応募が満額に達せず、札割れ(ふだわれ)が
発生したのだ、と。つまり、ドイツの国債でさえ人気が落ちているというのです。その証拠に、これまでは、ドイツ国債の方が英国国債よりも利回りが0.3%ポイントほど下回っていたのが、ついに逆転してしまったのだ、と。

ということで、今回も震源地は欧州ということになるのですが、どうにかならないものなのでしょうか?

メルケル・サルコジ・コンビに今回、マリオが加わって..仲の良さをアッピールしているのですが、
なんという手際の悪さ。というのも、仲良く見えるのは表面だけで、言っていることには大変な差があるからです。

今回もまた同じ。欧州危機を何とか食い止めたいということで、またまた欧州共同債構想が浮上しているのですが、それに対して、ドイツは聞く耳を持ちません。そんなことをしても効果はない、と。それよりも債務国側がもっと緊縮財政に努めるべきである、と。

まあ、そういう頑なな態度をドイツが取り続けると、どうしてもドイツは分が悪くなるというものです。
「ドイツも、自分の国のことだけを考えるのではなく、全体の利益を優先してはどうか?」なんてことを言う人も多いのです。

では、貴方に質問したいと思います。貴方は、欧州共同債を発行すべきだと思いますか?

はっきりいって、この問いにすぐに答えることができる人は極めて少ないのではないでしょうか。というのも、そもそも欧州共同債って何?という人が殆どであるからです。

欧州共同債とは何か?

簡単に言えば、これまで、ユーロ圏の各国が独自に発行していた国債を一本化しようというものです。つまり、これまでは、各国の信用度に従って、国債の発行条件(金利)に大きな格差が発生してたのが、共同債を発行することによって、各国とも同じ条件で資金調達することができるようになるということなのです。

「欧州共同債を発行するとどういうメリットがあるの?」

ですから、例えば、ギリシャでもスペインでもイタリアでも、或いはドイツでもみんな同じ借り入れ条件になるということです。

最近、イタリアの国債の利回りが危機ラインの7%を超えたなどということがニュースになっていたのですが、このように共同債を発行することになれば、イタリアなどは7%を大きく下回る金利でお金を借りることができるようになるでしょう。

「では、ドイツはどうなるの?」

多分、ドイツにとっては金利は高くなるでしょう。何故ならば、欧州共同債とは、どんぶり勘定で各国の国債を発行する制度であるので、各国の国債の発行条件がすべて反映されることになるからです。一番利回りが低いドイツ国債よりも共同債の利回りの方が高くなるのは当然でしょう。

「ドイツは、自国が支払う金利が増大することになるので欧州共同債に反対するのね?」

それもあるでしょうが、それ以外に、国債の発行が困難になりかけている国が欧州共同債の発行によって比較的低い金利で資金調達をすることができるということは、結局、ドイツなどの信用がバックにあるからできることなのですが、そのような保証を与えることにドイツは躊躇を感じているのです。

それに、幾ら金利が高くなっても..時には行き過ぎのこともあるかもしれませんが..それでも、基本的には市場の率直な声として捉えるべきものであるのです。つまり、投資家がある国の信用度について疑念を感じるから金利は上がる、と。そして、そのように金利が上がると、借り入れ国側としては、それに応じて行動を取る必要がでてくるのです。つまり、自国の財政再建の実現の可能性をマーケットに分かりやすい形で示すとか。そのようなことが望まれれるのですが..もし、共同債というものが導入されてしまうと、共同債で調達した資金が、どこの国によって使用されるかが不明確でもあり、また、借入国側では、財政再建に真剣に取り組むことをしなくても、一応資金調達に支障をきたすことがなくなるので、財政再建が進まなくなる恐れもあるのです。

ユーロ圏各国の国債の利回りが7%台に乗ると危機ラインだ!と叫ぶ共通認識が出来上がりました。

ついに、イタリアも危ないぞ!と。何とか、長期金利を引き下げる方法はないものか、と。そこで、共同債のアイデアが注目されているのだと思います。

共同債は、どんぶり勘定債。どこの国がそれによって得たお金を使うのかもはっきりしない。そして、全ての国が連帯して債務の支払いに責任を持ってくれる。

全ての国が連帯して責任を持ってくれると言えば、大変心強くなるのです。では、その全ての国が連帯して責任を有する共同債と今現在のドイツ国債の信用度はどちらが高くなるのか?

答えは、簡単です。単にドイツ政府だけが責任を有するドイツ国債の方が信用度が高いのです。

今回の共同債という構想は、またも事態の先送り、臭いものには蓋の方式に逃げ込む作戦であるのです。もちろん、そうした共同債を市場の投資家たちが歓迎するというのであれば、部外者が何も言うことはないのですが..そもそも、そういう投資家が欧州の財政事情や金融機関の経営内容に懐疑的になっているからこそ、このように危機が増幅してもいるのです。なのに、またまた後戻りするような政策なのですか?と私は言いたい。



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毎年のことながら、今年も年末ジャンボの売り出しが始まりました。どう思います?

別に冷や水をかけるつもりはないのですが、でも結果として、冷や水をかけるようなことを言う訳ですが..どうしてあんなに多くの人が大枚をはたいて宝くじを買うのか?

「買わないと当たらないよ!」

くーっ! 説得力のある一言。買わないと当たらない。全くその通り。私は、今まで宝くじを買っていないのに、宝くじに当たったという人を寡聞にして知りません。ということは、「買わないと当たらない」ということは、反論のできない事実であるのです。

しかし、反論させてほしい。確かに買わないと当たらない。しかし、買っても大抵の場合には、パーになる。つまり、買っただけ損をする。その代り、買わなければ損をすることもない。

「だったら、懐に相談して買えばいい!」

まあ、そういう風に言われれば、何も言うことはないのですが、いずれにしても、あれだけ行列が並び、そしてテレビでも盛んに報じられるのを見れば、もう少し冷静になって判断してもいいかも、と。それに、政府としてももう少し正確な情報の普及に力を注ぐようなことをすべきではないのでしょうか?

そもそも、宝くじが当たることの「夢」ばかりを過大に吹聴し..購入者の損失の可能性については、殆ど報じることがないのです。大体、払い戻し率は、どれほどであるのか?

仮に50%に近い払い戻し率だったとすれば、150円の価値もない宝くじの証票に300円も支払うことになるのです。つまり、宝くじは、籤だから..運だから..とはいうものの、全体としてみれば、必ず
販売元が儲かり、購入者側が損をするようになっているのです。(購入者側が一切購入を拒否すれば、販売元が企画倒れで損失を被ることがあるにしても、です)

ということで、大金を手にするという夢を与える一方で、理屈がイマイチ分かっていない庶民から大切なお金を吸い上げるのが宝くじなのだ、というのが私の感想なのですが、でも、そんなことを幾ら私が説いたところで、私は煙たがられるだけでしょう。煩いよ!なんて。

まあ、私も、10枚とか20枚買うという程度であれば、それほど心配して上げる必要もないのでしょうが、しかし、テレビなどで見ていると、10万円単位とか、場合によっては100万円単位で買う人もいるようで、どうやったら、そんなもったいないお金の使い方ができるのかと思ってしまいます。幾らそれによって「夢」を買うことができるにしても、です。

「だって、買えば買うほど当たる可能性は高くなるから!」

私、先ほど、「買わないと当たらない」というのは説得力があると言いました。それを否定できる人は誰もいないのです。では、買えば買うほど当たる可能性は高くなるのか? 確かに買う枚数が増えれば増えるほど、1等が当たる可能性が増えるのは、そのとおり。しかし、それと同時に、買えば買うだけ確実に損をすることになるのもその通りであることをどれだけの人が気が付いているのでしょう。

つまり、仮に連番で1千万枚買って、それによって確実に1等賞とその前後賞で3億円を手に入れることはできたとしても(2等以下の賞金を含めても)、結局、投資した額の半分も戻ってこないことをちゃんと理解しているのか、と言いたのです。

ですから、買うのだったら、1枚とか10枚とか、少なくなければ意味がないのです。

それから、あと思うのは、6等の300円の賞金というのは、一体なんなのでしょうね。面倒だという理由で、請求されない分が、相当な額に及んでいると思うのですが..

最後に、もっと言わせてもらえば..3億円が当たった人が不幸になる可能性もあるのです。

「3億円が当たったなら夢が叶うよ」

では、仮に貴方が運よく3億円を手にしたとして、貴方は、それっきり宝くじを買うのを止めてしまいますか?

「3億円当たるほど運がいいのだから、また買うにきまっているじゃない」

そうでしょ? ほとんどの人が、3億円を当てるとまた買うに決まっているのです。3億円を当てておきながら、もう宝くじは止めたなんて言う人は、想像ができません。

しかし、また買っても、そう簡単に宝くじに続けて当たるなんてことはない。しかし、もう一度あのエクスタシーを感じたい、と。ということで、また当たるまで、今度はもっともっと沢山宝くじを買い続けるでしょう。で、結局、そういう行動を取り続ければ、いつの間にか当たった3億円がパーになっているだけでなく、借金が増えているかもしれないのです。

宝くじを買う買わないはあなたの自由です。

買わないと当たらないのはその通り。しかし、買わないでもお金が入ってくる人はいっぱいいるのです。



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本日は勤労感謝の日。勤労に感謝するとともに、健康でいられることにも感謝しなければなりませんね。

まあ、こんな日に仕事の話をするのもなんなのですが..「IMF、新たな短期融資制度を導入」なんて見出しが目につきました。

IMFは、欧州の債務危機が金融危機に発展するのを防ぐために、原則6か月間の短期流動性を供給する制度を発足させることにしたのだ、と。

短期流動性の供給? まあ、とかく海外の制度を日本に説明するときの説明の回りくどさといった
らありませね。短期流動性の供給と聞いただけで、一般の方なら、恐らく9割方が、「そのニュースは
パス」なんて言うのではないでしょうか?

何故、期間6か月間の融資制度を導入することにしたと言わないのか?

しかし、そこまで理解すると、今度は次のような疑問が湧いてきます。そもそも6か月間だけ融資してもらっても、その後はどうなるのか?

そして、次に決定的な疑問が浮かんでくるのです。債務危機を深刻化させないための措置というのは分かるとしても、そのような予防的な支援を行うのが、果たしてIMFの役割なのか、と。

もうこれまで何度も繰り返し述べているように、最近のIMFは、全く手順ミスを犯していることに何故気が付かないのでしょう。

例えば、ギリシャ問題。ギリシャ債務の削減率についての結論をギリシャとその債権者の銀行団と
の間で合意する前にIMFが関与することを決めてしまい、現にギリシャ支援に乗り出していったため
に、その後ギリシャの国民の理解を得ることが難しい状況が続いているのです。

ドイツやフランスなどは、支援内容が固まった後で国民投票を行うと発表したパパンドレウ首相を批判しましたが、そもそも国民の意向を確認し、そのうえで銀行団と交渉し、最後にIMFの支援を求めるのが順序というものであったのです。

ギリシャの債務削減を認めるということは、ギリシャが財政破たんしたことを認めることになりかねない。そうなると、ギリシャにお金を貸している銀行の経営問題に発展しかねない。だから、ギリシャの債務削減率の話は先送りにした。そして、ギリシャはまだ財政的に破綻してないなんて、国民の一部が思っているものだから、何時までも昔の夢を捨て去ることができずにいるのです。

今回の、6カ月間の流動性の供与措置についても、財政赤字の問題が金融危機に発展することを
回避することを目的とするということが、どうも釈然としないのです。これまでの誤りにさらに誤りを重ねる、ことにはなりはしないのか?

私は、何もIMFが受け身になっていればいいなどと言うつもりはないのです。しかし、問題になっている国自身の国民が事態をよく認識もしていないうちに、最後の砦のIMFが早々と登場するなんて、どうも頂けないのです。番組が始まったら、15分も経たないうちに黄門様の印籠を見せつけられるようなものなのです。

さらに言えば、ユーロ圏には、欧州中央銀行があるのに、何故、欧州中央銀行がもっと動かないのか、という疑問も浮かぶのです。

何故だと思います? もちろん、中央銀行が野放図になり過ぎるとインフレを招いてしまうからと
いうのが理由だと思うのですが..金融危機が起きそうなときには、リーマンショックの直後のアメリカでさせ、極めて大胆に連銀(米国の中央銀行)が活躍したことを思うと、この欧州中央銀行は、一体何を考えているのかと思わざるを得ないのです。

通貨マフィアと呼ばれた人々が活躍するような時代はとうに過ぎ去った感がありますが、もう少し筋の通った意見を言うテクノラートが登場することはないのでしょうか?

いずれにしても、お金を借りる国(ヨーロッパ)がお金を貸すIMFのトップの座を占めるようなことも
おかしな話であるのです。




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月曜夜9時は、たけしのTVタックルという番組がありますが、ご覧になっていますか? 以前は何となく最後まで見ていることもあったのですが、最近は、直ぐにチャンネルを替えることも多くなっていました。

で、昨夜、そのTVタックルを見ていると、まあ、いつもの政治家やコメンテーターが出演していたのですが、そのなかで、なかなか地に足のついた意見を述べる人がいました。名前は、岡本重明さん。
この人が、どの程度の人物なのか速断することはできないのですが、それでも、彼の述べる意見には私も大きく納得した訳なのです。

いずれにしても、昨夜のテーマは何かと言えば..最近ずっと続いているTPPの話であり、今回は、
現場で農業に携わっているこの岡本さんに意見を述べてもらうのがメーンであるように思われました。

で、この岡本さんという人は、「農協との『30年戦争』」という本を書いていることから分かるように、日本の農業を弱体させている張本人は農協であるという極めて明快な考えを主張している人であるので、出演者の中には、反論者としてJA宮城の人も含まれていました。つまり、反農協対農協の議論で番組を盛り立てようという趣向だったのでしょう。但し、その目論見は失敗したように見受けられました。というのも農協の人が、岡本氏に反論するというよりも、農協は、政府の決定に従ったまでだというような弁明に終始したからなのです。

では、何故私は、この岡本氏の考えに共鳴したのか? でも、その前に、昨日の番組がどのように進んでいったのかを簡単に振り返ってみることにします。

まあ、この番組に拘わらず、この手の番組を作成するには、幾つかのキーポイントがあるということを教えられるような段取りになっていたのです。つまり、見え見えの番組作りの感じがしたのです。

例えば、日本の農業が海外の農業に比べ何故競争力が弱いかを、分かりやすく視聴者に伝えようとする場合、絶対に抑えておいた方がいい数値というものがあるのですが..、で、日本の農業問題の場合、農家1戸当たりの農地面積が、日本は2.0haであり、それに対し、アメリカは186.9ヘクタールであり、日本の約93倍。そして、オーストラリアに至れば、何と3068.4haを有し、日本の約1500倍にも当たるのだというのです。

(注)このデータは、農水省が発表しているものです。

こうした数字は、私も、日本の農業問題について考えるときに常に言及するものであり、その意味で必ず押さえておく必要があるでしょう。

で、日本の場合、1.8haになるということですが..実は、私が小学生の時に習ったデータは、確か
0.7haであった記憶があるのですが、皆様は如何でしょう? 因みに、1haとは、10000平米=1辺100m正方形の広さを意味するのですが..

ということで、現在の平均的な日本の農家の農地の広さは、仮に縦が100mであるとすれば、横の長さは、180mほどあることになるのですが..アメリカはと言えば、約90倍と考えれば、縦が1000mとすれば、横は1620mほどの広さの農地を保有しているということなのです。ああ、米国の農地のなんとでかいことか!

でも、驚くのはまだ早い! 何とオーストラリアの場合には、日本の約1500倍もの広さがあるということで、これは、仮に縦が1000m(1km)×ばつ150=27kmもの長さになる訳です。この広さだと、飛行機を使って種を撒くようなことをしないと対応が不可能でしょう。

海外の農地はなんとでかく、そして、日本の農地の何と狭いことか! まあ、そんなことを先ず最初に視聴者に理解させようとする訳です。そして、視聴者としては、そのような規模の違いを指摘されると、これはとても海外には太刀打ちできないな、なんて気にさせられてしまうのです。

では、何故、日本の農地は狭いのか?

すると、妙な説明が始まったのです。某大学の教授が、説明します。戦後農地改革が行われ、多くの小作農が地主になったからだ、と。

この説明、形式的にはそのとおりかもしれませんが、実質的な説明にはなっていないのです。というのも、大地主が農地を取り上げられたのはそのとおりだとしても、それまでも日本の農地は多くの小作農によって耕作されてきたのはそのとおりであるからです。反対に、仮に農地改革を実施することなく、農地の大半が少数の地主の物であり続けたとして、日本の農業は、今よりも遥かに強い競争力を有していたと言えるのでしょうか?

私は、それは、はなはだ疑問だと思うのです。というのも、各国の農家がどれほどの競争力を有するかは、例えば1haに投入する労働量と諸経費に依存すると考えていいからです。もう少し言うならば、例えば穀物1トン当たりの生産に投入する賃金と諸経費に依存する、と。

だとすれば、日本の農業が取り敢えず競争力がなさそうに見える最大の理由は、本当は、1戸当たりの農地の面積が狭いというよりも、1トン当たりの穀物生産に投入する賃金を含む経費が高くつくからに他ならないのです。

まあ、でも、たった1時間弱の番組のなかでとてもそこまでの説明をする余裕などない訳で..とにかく日本の農家の農地は狭いということを視聴者の頭のなかに叩き込もうとする訳です。で、そうしたとき、テレビであれば必ず、或いはあなたがサラリーマンであれば、プレゼンテーションなどをするときにそうであるように、面白いエピソードを添えると俄然、視聴者の目が輝くなのです。

たけしさんの出番です。

「戯け(たわけ)」とは、「田分け」とも書く!

つまり、農地解放によって大地主から農地を取り上げ、それを小作農に与えたことが、そもそも
日本の農業を弱くする下になったかのような解説をしたのです。まあ、私が言うまでもなく、中高年なら多くの方は「田分け」の話を知っていることでしょう。しかし、その場合の教訓というのは、今回の話とは少しばかり違うのです。

いずれにしても、テレビのニュース解説などというものは、内容の正確さというよりも、先ずは、分かりやすさに力をいれ、そのために、キーワードやキーになる数値を明確にし、そして、面白そうなエピソードも添える、ということが定番であることが分かるのです。

分かりやすいということは大いに結構! しかし、私は言いたい。分かりやすいと言っても間違ったことを教えたのではなんにもならない、と。

ということで、昨夜のTVタックルが通り一辺倒の説明や、根拠のない批判の応酬で終わっていたのであれば、私もすぐチャンネルを替えたと思うのですが..でも、岡本さんの話がよかったのです。

「コメ以外のモノを作るとそれ専用の作業用の機械が必要になる。だから、自分が耕作放棄地を
借り受けてコメを作っている。そうするとコスト低下につながる」

「中国へのコメの輸出は全農パールライス東日本のみ」

「農協が規制改革をして、農協も市場参加者として行動すべき」

(岡本氏の上記以外の持論)

・国民はイメージで日本農業は弱いと思い込み、保護すべき産業と見ている。

・農家への戸別所得補償制度は、農協の不良債権の回収策に過ぎない。

・農協組織は天下り役人のお手盛りだ。

・アメリカでは除草剤を撒き過ぎて農地が荒れている。除草剤に強い大豆やとうもろこし、腐らないトマトなどを遺伝子組み換えで作っていることに問題がある。

・日本はコメの減反政策ではなくコメを輸出出来るような政策を進めるべき。


はっきり言って、私は、中国へのコメの輸出が、全農パールライス東日本のみに限られている事実を知りませんでした。ただ、結果的に、私の日本農業の強化策に関する主張と重なる部分も多く非常に心強く思った次第です。

TPPへの参加を急ぐ必要はないのでしょうが、その代り、農協を含めた抜本的な農業改革が必要ではないのでしょうか。そして、TPP参加に絶対反対する必要はないという思いを強く致しました。

日本の農業は弱くはないのです。守られているから弱くなるのです! 発想を切り替えるべきなの
です。


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歳出規模12兆1025億円の第三次補正予算が成立しました。これをきっかけに震災の復旧事業がさらに本格化すること期待せずにはいられません。

でも、実はお金では解決できない問題もあるのですよね。瓦礫の処分場をどこに確保するか? 放射性物質で汚染した土砂などをどこで保管するのか? 或いは、原状どおりに復旧するのがいいのか? それに、地盤が大きく沈没している地域もあるのです。そうした地域は、泥を埋め立てて嵩上げすることが果たして望ましいのか?

ただ、いずれにしてもお金はあったことに越したことはありません。というか、お金がなければ何も進まないと言ってもいいでしょう。

ということで、ここのところは、取り敢えず第三次補正予算が成立したことを歓迎したいと思います。そして、私は、思うのです。日本は、今年未曾有の災害に見舞われたが、それでも経済的、財政的にはなんてラッキーなのか、と。

皆さん、12兆円の補正予算とお聞きになってどのようにお感じになるでしょう?

12兆円の補正予算を組むということは、非常にラフな計算をすれば、国民(大人)一人当たり約12万円の負担になるのです。

3.11が起こり、全国から多くの義捐金が寄せられた訳です。そして、国民の大多数は早く必要な補正予算を編成し、復旧事業を急ぐべきだと感じていたと思うのです。でも、そうは思っても、自分たち一人一人が12万円ほどの負担増になってもいいと何人の国民が考えていたというのか?

こんなこと言いたくはないのですが、被災地を助けるべきだ=俺は幾らでもお金を出すから、ということではないのです。

もちろん一度きりに12万円を支払わなくても分割払いでも可能ではあるのですが、いずれにしても、常識的には10年間ほどの間に12万円を支払う必要があるのです。それに、もし今後もこうした大規模な自然災害が起きれば、その度に国民は追加負担を求められることになるので、基本的には、なるだけ早く、今回の12万円分の追加負担を支払っておいた方が安全であるのです。

しかし、いずれにしても、すぐに増税が実施される訳ではないので、国民は、それほど追加負担の重みを感じるまでに至っていないのも事実であるのです。

そうした事情について考えるとき、私は、「ああ、日本は、経済的・財政的にはラッキーであるなあ!」と感じない訳にはいかないのです。

貴方はそう思いません? 思いませんか。では、私の考えをご説明いたしましょう。

仮に、多額の政府債務をこしらえてしまった国が、このような復旧事業を実施する財源を国債の増発で賄おうとすれば、普通はどのようなことが起こると考えられるでしょう。

そうなのです、ヨーロッパやアメリカの例を見れば、なんとなく想像がつくと思います。

借金に借金を重ねた国が、復旧事業のためにまたまた多額の借金を積み重ねるようなことをすれば、いずれはインフレが起きるのは間違いない、と。仮に、直ぐにインフレが起きることはないとしても、そのように借金が巨額に上れば、投資家がそうした国の国債の引き受けを敬遠するようになり、長期金利が急騰してしまう、と。

今、アメリカでは、米議会の財政赤字削減委員会の結論に注目が集まっているところですが..
ご存知ですよね、今年の夏、米国連邦政府の債務限度額引き上げを認めてもらう代わりにオバマ大統領が呑んだ財政赤字削減委員会の交渉が難航しており、決裂寸前に陥っているのだ、と。同委員会は、今後10年間で財政赤字を1兆2000億ドル(約92兆4000億円)削減する方策を策定することが求められているが、21日に合意取りまとめが不調に終わったと発表するのではないかと見られている、と報じられているのです。

アメリカの失業率は依然として9%台にあり、何とかして景気を回復させたいと必死で思っている
オバマ大統領。だからこそ、TPPの交渉進展にも力を注いでいるのです。

そこで、多くの日本人なら思うでしょう。そんなに景気回復が思わしくなく、失業率が高止まりしているのであれば、何故、更なる財政出動を行わないのか、と。或いは、百歩譲って、財政出動はないとしても、この時期、今後10年間で財政赤字を1兆2000億ドル(1年あたり1000億ドル=7兆6千億円)
も削減するようなことに着手するのか? もう少し後でもいいのではないのか、と。

ねえ、そう思いませんか?

要するに、欧州勢や米国は、日本みたいにバンバンと国債を増発する余力がなくなっているのです。米国の場合には、基軸通貨の国ですから、まだまだ米国債を保有したいという投資家がいる
のは事実であるのですが、それにしても、これ以上財政赤字を拡大させ、また、財政赤字削減のプランを投資家に示さないことには、いつかは投資家から敬遠されるであろう、と。そういう事態を米国は、非常に恐れているです。もう少し簡単に言えば、仮に、中国が今後も米国債をどんどん引き受けてくれれば、取り敢えず米国経済が混乱に陥ることはない訳ですが..でも、そういう状態になるということは、米国の財政経済を中国政府が牛耳ることを意味するので、米国としてはとてもそうした事態を受け入れることはできないということなのです。

翻って、日本はどうか?

私たち、納税者は、急に追加の12万円の支払いを求められる訳ではありません。取り敢えずは、国債の発行によって政府は財源を確保するからです。でも、そうしたことができるのは、日本だけなのです。何故なら、繰り返しになりますが、もし、他の国々がそんな安易な方法に頼ろうとすれば、多くの場合インフレに陥る可能性があり..そして、インフレになるということは、その分、国民が保有している現金の購買力が低下することを意味する訳ですから、幾ら名目的な増税はなくても、結局インフレという税を支払わされることになるのです。

我々日本国民は、将来は別として、今すぐ第三次補正予算のための追加負担を求められている訳でもないですし、だからといってインフレが起きる気配もありません。

ああ、何と日本はラッキーなことか! では、何故、日本だけラッキーなのか?

それは、日本が、アメリカの言う大きな短所を有していたからなのです。その短所とは何か?

つまり、貯蓄に励み過ぎ、消費が弱いということです。さんざん言われた訳なのです。個人の金融資産1400兆円の一部を消費に回すことができれば、どれだけ景気が回復するか、と。(この考え方のプリミティブな誤りについて、本日はコメントしません)

ということで、日本人が、無駄な消費はできるだけ抑え、そこそこ貯蓄をしてきたからこそ、幾ら政府部門は巨額な借金が積み重ねても、インフレを招かずに済んできたのです。

何とかしてインフレを起こせ! インフレが起きれば景気が回復するなんて、本気で声を張り上げている学者や評論家も多い訳ですが..実は、インフレが起きないからこそ、我々は、追加負担を直ちに求められることのなく、第三次補正予算を成立させることができたのです。


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There's a reason why I'm spending this time out here in Asia, and out here in the Pacific region. First and foremost, because this is the fastest growing economic region in the world and I want to create jobs in the United States, which means we've got to sell products here.

オバマ大統領が、APEC会合に続いて、オーストラリアを含むアジア太平洋地域を訪れている理由について、上のように答えているのです。

この地域は、世界中で経済が一番伸びている地域であり、この地域の人々にアメリカ製品を買ってもらい、そして、アメリカの雇用を回復させたい。

当然、他にも理由はある訳ですが、いずれにしてもオバマ大統領は経済的な理由として、そのようなことを言っているのです。

世界中で一番経済成長率が高い地域? では、そのなかに日本は含まれているのか? もちろん、地理的には含まれているのですが、日本の潜在的成長率は相対的に低く、そして、人口は減少している、と。つまり、そういうことがあるので、日本にはそれほど期待できないと思っているのです。

いずれにしても、アメリカはオーストラリアの国民に何を買ってもらいたいと思っているのでしょうか?

牛肉? オーストラリアも牛肉は安い訳ですから、オーストラリアの人々が牛肉をアメリカから輸入するとは思われません。おコメ? それもあり得ないでしょう? だったら何を?

或いは、アメリカは日本に何を買ってもらいたいと思っているのでしょう?

それは、当然のことながら、牛肉や..しかし、仮に日本が米国の牛肉をもっと輸入するようになったとして、アメリカの雇用の回復に結び付くものでしょうか?

結局、アメリカが如何にTPPに力を注ごうと、そして、仮に日本がアメリカからもっと農産物を購入するようになったとしても、アメリカの雇用がそれによって回復するなんてとても思われないのです。

というよりも、自由貿易を最大限進めてきた結果が、中国からの集中豪雨的な米国への製品輸出になり、そして、そのことによってアメリカの労働者の職が奪われている訳ですから、TTPを進めることによってそんなに簡単に雇用が回復するなんて考える方がどうかしているというものでしょう。

それに、アメリカの農産物が日本のそれに比べて格段に安い理由をご存知でしょうか?

それは、省力化が徹底しているからです。つまり、見渡す限りの広大な農地だというのに、そこでは、飛行機やトラクターや遺伝子組み換え作物の利用により極めて限られた人々しか働いていないのです。

だから、幾ら日本がアメリカからの農産物の輸入を増やしたところで..なんて思ってしまうのです。



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