護送船団方式のユーロ圏
突然ですが、何故ユーロ危機は収まらないのか? 再びイタリア国債の利回りが上昇している(具体的に言えば、危機ラインの7%で推移している。29日に実施した3年物国債の入札の結果、落札利回りは、7.89%になった)というのですが..
結局、投資家が将来どんな事態が発生するかについて、確信を持てないでいるからでしょう。
でも、もう何度も何度もドイツやイタリアは、南欧諸国を救済する姿勢を鮮明にしていることも事実です。
しかし、投資家や南欧諸国にお金を貸している銀行は、思っているのでしょう。本当に、とことんイタリアやスペインを救うつもりでいるのか?と。だって、ギリシャの債務は、結局50%カットされてしまったからなのです。
どんなにお金がかかろうと、ドイツやフランスなど余裕のある国が中心となって、イタリアを救うつもりがあるのか?と。そこのところに、投資家はどうも確信が持てないでいるのでしょう。
これまでに何度も何度もドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が握手をし、協力体制を演出して見せているのですが..ただ、そうしてギリシャやイタリアを支援する姿勢は示すものの..例えば、ドイツのメルケル首相は、欧州共同債については一蹴するのです。
何故かといえば、そうやって共同債を発行するということは、ドイツがイタリアの国債に対して連帯保証をするのと同じことになるからです。確かに、そうやってイタリアなどが今までより安い金利で国債を再び発行できることになれば、欧州危機が収まる可能性もあるのですが..万が一のときには、当然のことながら連帯保証人に責任が及ぶと。そして、仮にドイツがそこまでコミットすれば、今度は、ドイツの資金繰りのために発行する共同債に対して、ドイツは今以上の金利を支払うことを余儀なくされることでしょう。
つまり、ドイツがコミットすればするほど、ドイツの国民に重い負担がかかるのは必至であるのです。
いずれにしても、ドイツやフランスなどは、17のユーロ圏加盟国の一か国たりとも脱落者にしたくはない。もし、脱落者を認めることになれば、ユーロという壮大な実験が失敗したことになる、と。
なんか20年ほど前の、我が国の金融行政を思い出してしまいます。「一行たりとも潰すことはない!」なんて。これぞ有名な護送船団方式。まあ、船団の一員であるということは心強くもある訳です。必ず皆が助けてくれるから、と。
で、そうして皆で皆を助けようとする方式について、外部の者がとやかくいうこともないのかもしれませんが..
傷が浅いうちはまだいいのですが、段々傷が大きくなると..果たして、全部を守ることができるのか、少しずつ心配になってくるのです。ひょっとしたら、他人のことどころではなくなるかもしれない、と。
それに、護送船団で守られているという意識があるうちは、徹底した改革が実行に移されにくいといこともあるのです。
ユーロ圏の理想というか、目指す姿は、ユーロ圏は一つであるということです。今は、形の上では別々の国のままであるが、目指す姿はアメリカ合衆国のように一つの国になる、と。で、そうなれば、どこかの国がどこかの国を救うなんていう発想もなくなる訳ですが..しかし、現実は違う。今でも、同じ国の人間なんていう意識はまるでない。民族も違えば言葉も違う。それなのに、何故自分たちが南欧の国を救わなければならないのか、なんて雰囲気が蔓延しているのです。
だいたい、ユーロ圏の問題を自分たちの力でどうにかすると気持ちがあれば、何も外部の中国に資金支援をお願いする必要などない訳です。そもそも、必要なお金はとことん、ドイツやフランスが出せばいい、と。
しかし、繰り返しになりますが、それは国民感情が許さない。また、そんなことをすれば第一次大戦中のようにハイパーインフレになってしまうかもしれないという恐怖心がある。それに、あまりのもドイツが支援しすぎると、イタリアが必要な努力を怠る可能性がある、と。
要するに、そのようにまだユーロ圏のなかに迷いがあるから、ユーロ危機が終息しないのです。
どっちかにせい! 助けるなら、とことん助けろ!
では、ここで関係者の考え方を整理しておきましょう。
・ドイツ(メルケル首相):共同債は必要ない。南欧諸国は救済するが、同時に彼らが緊縮政策を実施しなければならない。
・フィンランド:共同債の考えを否定。
・欧州委(バローゾ委員長):共同債を発行すべし。
・ポーランド:ECB(欧州中央銀行)が積極介入すべし。
・フランス(サルコジ大統領):ドイツの考えにも理解を示す。
さあ、如何でしょう。
「とことん助けろ派」は、バローゾ委員長とポーランドと言っていいでしょう。ドイツは危機感が足りないのではないか、と。
その一方で、債務国側の自助努力を強く求めるのがドイツとフィンランドであり、特に共同債の考えを真っ向から否定するのです。
まあ、共同債に関しては、私は、ドイツなどの主張が筋が通っていると思うのです。ギリシャやイタリアの国債の利回りが高いということは、そこに投資家の判断が反映されるということで、また、そうして市場が機能すればこそ、債務国側の努力も促されることになるのです。
ただ、それはそうであるものの、現実に、イタリアの国債の利回りが7%を超えるような事態が長く続けば、イタリアの財政事情が益々悪化することも否定できない事実であるのです。つまり、悲観的な見方がさらに悲観的な見方を呼ぶというself-fulfillingなプロセスに入っているということで、そのような場合には、一時的に市場の機能を停止させる措置が必要かもしれません。
それに、何故イタリアの国債の利回りが7%台に突入しているかといえば、ギリシャ債務の50%削減まで求めながら、それでもなおギリシャはデフォルトを起こしたわけではないからという理由で、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の支払いを行わないなんて恣意的なことをやったために、銀行勢による国債離れが始まったからというのです。
その辺のことは、本当に欧州の政治家に猛省を求めたいとことであるのです。
いずれにしても、ドイツなどの考えが正当であり、とことん助けることが適当ではないというのであれば、一時的に、例えばギリシャなどをユーロ圏から退出させ、自助努力で財政再建を果たさせることが適当であるのではないでしょうか。
10年以上前、日本発の不況を起こしてはいけないと、あれだけ偉そうなことを言っていた欧米勢ですが、今、一体どうなっているのでしょうか?
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結局、投資家が将来どんな事態が発生するかについて、確信を持てないでいるからでしょう。
でも、もう何度も何度もドイツやイタリアは、南欧諸国を救済する姿勢を鮮明にしていることも事実です。
しかし、投資家や南欧諸国にお金を貸している銀行は、思っているのでしょう。本当に、とことんイタリアやスペインを救うつもりでいるのか?と。だって、ギリシャの債務は、結局50%カットされてしまったからなのです。
どんなにお金がかかろうと、ドイツやフランスなど余裕のある国が中心となって、イタリアを救うつもりがあるのか?と。そこのところに、投資家はどうも確信が持てないでいるのでしょう。
これまでに何度も何度もドイツのメルケル首相とフランスのサルコジ大統領が握手をし、協力体制を演出して見せているのですが..ただ、そうしてギリシャやイタリアを支援する姿勢は示すものの..例えば、ドイツのメルケル首相は、欧州共同債については一蹴するのです。
何故かといえば、そうやって共同債を発行するということは、ドイツがイタリアの国債に対して連帯保証をするのと同じことになるからです。確かに、そうやってイタリアなどが今までより安い金利で国債を再び発行できることになれば、欧州危機が収まる可能性もあるのですが..万が一のときには、当然のことながら連帯保証人に責任が及ぶと。そして、仮にドイツがそこまでコミットすれば、今度は、ドイツの資金繰りのために発行する共同債に対して、ドイツは今以上の金利を支払うことを余儀なくされることでしょう。
つまり、ドイツがコミットすればするほど、ドイツの国民に重い負担がかかるのは必至であるのです。
いずれにしても、ドイツやフランスなどは、17のユーロ圏加盟国の一か国たりとも脱落者にしたくはない。もし、脱落者を認めることになれば、ユーロという壮大な実験が失敗したことになる、と。
なんか20年ほど前の、我が国の金融行政を思い出してしまいます。「一行たりとも潰すことはない!」なんて。これぞ有名な護送船団方式。まあ、船団の一員であるということは心強くもある訳です。必ず皆が助けてくれるから、と。
で、そうして皆で皆を助けようとする方式について、外部の者がとやかくいうこともないのかもしれませんが..
傷が浅いうちはまだいいのですが、段々傷が大きくなると..果たして、全部を守ることができるのか、少しずつ心配になってくるのです。ひょっとしたら、他人のことどころではなくなるかもしれない、と。
それに、護送船団で守られているという意識があるうちは、徹底した改革が実行に移されにくいといこともあるのです。
ユーロ圏の理想というか、目指す姿は、ユーロ圏は一つであるということです。今は、形の上では別々の国のままであるが、目指す姿はアメリカ合衆国のように一つの国になる、と。で、そうなれば、どこかの国がどこかの国を救うなんていう発想もなくなる訳ですが..しかし、現実は違う。今でも、同じ国の人間なんていう意識はまるでない。民族も違えば言葉も違う。それなのに、何故自分たちが南欧の国を救わなければならないのか、なんて雰囲気が蔓延しているのです。
だいたい、ユーロ圏の問題を自分たちの力でどうにかすると気持ちがあれば、何も外部の中国に資金支援をお願いする必要などない訳です。そもそも、必要なお金はとことん、ドイツやフランスが出せばいい、と。
しかし、繰り返しになりますが、それは国民感情が許さない。また、そんなことをすれば第一次大戦中のようにハイパーインフレになってしまうかもしれないという恐怖心がある。それに、あまりのもドイツが支援しすぎると、イタリアが必要な努力を怠る可能性がある、と。
要するに、そのようにまだユーロ圏のなかに迷いがあるから、ユーロ危機が終息しないのです。
どっちかにせい! 助けるなら、とことん助けろ!
では、ここで関係者の考え方を整理しておきましょう。
・ドイツ(メルケル首相):共同債は必要ない。南欧諸国は救済するが、同時に彼らが緊縮政策を実施しなければならない。
・フィンランド:共同債の考えを否定。
・欧州委(バローゾ委員長):共同債を発行すべし。
・ポーランド:ECB(欧州中央銀行)が積極介入すべし。
・フランス(サルコジ大統領):ドイツの考えにも理解を示す。
さあ、如何でしょう。
「とことん助けろ派」は、バローゾ委員長とポーランドと言っていいでしょう。ドイツは危機感が足りないのではないか、と。
その一方で、債務国側の自助努力を強く求めるのがドイツとフィンランドであり、特に共同債の考えを真っ向から否定するのです。
まあ、共同債に関しては、私は、ドイツなどの主張が筋が通っていると思うのです。ギリシャやイタリアの国債の利回りが高いということは、そこに投資家の判断が反映されるということで、また、そうして市場が機能すればこそ、債務国側の努力も促されることになるのです。
ただ、それはそうであるものの、現実に、イタリアの国債の利回りが7%を超えるような事態が長く続けば、イタリアの財政事情が益々悪化することも否定できない事実であるのです。つまり、悲観的な見方がさらに悲観的な見方を呼ぶというself-fulfillingなプロセスに入っているということで、そのような場合には、一時的に市場の機能を停止させる措置が必要かもしれません。
それに、何故イタリアの国債の利回りが7%台に突入しているかといえば、ギリシャ債務の50%削減まで求めながら、それでもなおギリシャはデフォルトを起こしたわけではないからという理由で、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の支払いを行わないなんて恣意的なことをやったために、銀行勢による国債離れが始まったからというのです。
その辺のことは、本当に欧州の政治家に猛省を求めたいとことであるのです。
いずれにしても、ドイツなどの考えが正当であり、とことん助けることが適当ではないというのであれば、一時的に、例えばギリシャなどをユーロ圏から退出させ、自助努力で財政再建を果たさせることが適当であるのではないでしょうか。
10年以上前、日本発の不況を起こしてはいけないと、あれだけ偉そうなことを言っていた欧米勢ですが、今、一体どうなっているのでしょうか?
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