先日、私は、2009年1−3月期のGDP伸び率がマイナス15.2%に
なったということに異議を述べました。
名目GDPの伸び率より、実質GDPの伸び率が低い、即ち、マイナス
の幅が大きいのは納得がいかないから、という理由でです。
何故ならば、GDPデフレーターは、次のようになっていたからです。
<GDPデフレーター>
2007/1-3 91.0
2007/4-6 93.4
2007/7-9 90.4
2007/10-12 93.2
2008/1-3 89.8
2008/4-6 92.1
2008/7-9 89.0
2008/10-12 93.9
2009/1-3 90.8
ご覧になったように、2009年1−3月期は90.8で、2008年10−12
月期の93.9に比べて3.1ポイントも低下しています。
しかし、内閣府は、前年同月比でデフレーターが上昇しているか低
下しているかで判断しているのです。
で、2008年/1−3月期と比べれば1.0ポイント上昇している、と。
どうも納得がいきません。どうして前年同期と比較するのか?
しかし、次のような指摘を頂きました。
内閣府が発表しているデフレーターは、季節調整がなされていない
ものであるから、実質GDPが前期と比べどれだけ伸びたかを計測す
る場合に、季節調整がなされていないデフレーターを使用することは
できない、と。
ご指摘は、よく理解できます。
しかし、そもそも内閣府は、季節調整済みのデフレーターを算出して
いるのでしょうか?
そうした疑問が残ります。
ただ、四半期ごとの季節調整済みの実質GDPと名目GDPがあるわ
けですから、結果として「季節調整済みのデフレーター」を計算すること
は可能です。
逆算するということです。
ただ、いずれにしても、内閣府が発表している四半期ごとのデフレー
ターの動きをみていると変なことに気がつきます。
<GDPデフレーター> <方向>
2007/1-3 91.0 ↓
2007/4-6 93.4 ↑
2007/7-9 90.4 ↓
2007/10-12 93.2 ↑
2008/1-3 89.8 ↓
2008/4-6 92.1 ↑
2008/7-9 89.0 ↓
2008/10-12 93.9 ↑
2009/1-3 90.8 ↓
気がついたでしょうか?
1−3月期と7−9月期は、前期比と比べれば、決まってデフレーター
は低下し、逆に4−6月期と7−9月期は、決まって上昇しているので
す。
物価が、こんなに規則正しく、上がったり下がったりすることなどある
のでしょうか。
おかしいですよね。何か臭います。
ということで、支出項目ごとにみていくと..、もっと特異な動きをする
ものがあったのです。
<政府最終消費のデフレーター> <方向>
2007/1-3 87.7 ↓
2007/4-6 102.4 ↑
2007/7-9 86.2 ↓
2007/10-12 104.5 ↑
2008/1-3 88.3 ↓
2008/4-6 103.3 ↑
2008/7-9 87.8 ↓
2008/10-12 105.2 ↑
2009/1-3 88.7 ↓
どうです?
面白いでしょう。実は、この政府最終消費のデフレーターが、GDPデ
フレーターに大きな影響を及ぼしていたのです。
実質GDPは、2009年1−3月期では、約516兆円あるとされていま
すが、そのうち政府最終消費は約99兆円で、全体に占める割合は約
2割もありますから。
では、政府最終消費のデフレーターは、どうしてこのような奇妙な、し
かし規則的な動きをしているか?
政府最終消費のうちの相当の部分が公務員の人件費です。
近年政府最終消費のデフレーターは低下傾向を示していますが、こ
れは公務員に対するボーナス支給の削減が主な理由です。
そして、公務員に対して支払われる人件費は、ボーナス時期の6月
と12月は増加します。
つまり、公務員が提供する労働の価格が、6月と12月は上昇すると
いうことなのでしょう。1ヶ月間の労働の量には、大して違いがないの
に、です。
<政府最終消費支出>
名目原系列 名目季節調整系列 実質原系列 実質季節調整系列
2007/1-3 21.4兆円 91.1兆円 24.5兆円 95.7兆円
2007/4-6 25.0兆円 92.5兆円 24.4兆円 97.2兆円
2007/7-9 20.5兆円 92.2兆円 23.8兆円 96.8兆円
2007/10-12 25.5兆円 93.7兆円 24.4兆円 98.5兆円
2008/1-3 22.2兆円 94.0兆円 25.1兆円 98.1兆円
2008/4-6 25.3兆円 93.6兆円 24.4兆円 97.4兆円
2008/7-9 20.9兆円 94.3兆円 23.9兆円 97.2兆円
2008/10-12 25.7兆円 94.5兆円 24.4兆円 98.7兆円
2009/1-3 22.5兆円 95.1兆円 25.3兆円 99.0兆円
上の表の見方、分かりますか?
政府最終消費支出にも4種類あるのです。
先ずは、全く加工を加えない生の数字。それが名目原系列ということ
になります。
国や地方公共団体は、2009年1−3月期に、公務員の給与などに
22.5兆円を支給したということが分かります。
原系列ということは、季節調整をしていないということですから、上が
ったり下がったりという規則的な動きをしています。
そして、そのような季節要因による影響を除外したものが名目季節
調整系列であり、年率換算して表示されています。
2009年1−3月期の政府最終消費は、年率換算すると95.2兆円に
なり、4半期ごと振れが小さくなっているのが分かります。
そして、名目原系列の数値から物価変動の影響を除外したものが、
実質原系列であり、さらに季節要因による影響を除外したものが実質
季節調整系列ということになります。
いずれにしても、政府最終消費のデフレーターは、4半期ごとに規則
的な変動を繰り返している訳ですから、季節要因が除去されていない
ということになり、その結果、GDPデフレーターとして公表されている
数値も季節要因が除去されていないことが確認できるわけです。
ということになると、公表されているGDPデフレーターを前期と比べ
るということは、季節調整がなされていない消費者物価指数を前月と
比べることと同じ意味を有することになります。
即ち、そうした単純な比較は、季節要因が除外されていないので、
適当ではないということです。
だから、ご指摘のように季節調整済みのGDPデフレーターで比較す
べきだ、ということになるのですが..
では、どうして内閣府は、季節調整済みのデフレーターを公表しない
のでしょうか。
これは推測ですが、内閣府は、季節調整済みのデフレーターを算出
していないのではないでしょうか。
算出しているのは、あくまでも生のつまり原系列のデフレーターだけ
なのでしょう。
実態を知っているよ、という方のご教授を期待したいと思います。
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