シルバー・ウィークが終わりました。
政治家の皆様、お休み期間中も激務のご様子で、一国民として
有難く思います。
で、その政治家の先生方ですが、ご承知のように鳩山総理は
ニューヨークで演説を行っています。そうです、温暖化対策につい
てです。
マスコミなどは、中身よりも鳩山さんの英語力に興味があった
模様です。
鳩山総理の英語を再現してみましょう。
Based on the discussion in the Intergovernmental
Panel on Climate Change (IPCC), I believe that the
developed countriesneed to take the lead in
emissions reduction efforts. It is my view that Japan
should positively commit itself to setting a long-term
reduction target. For its mid-term goal, Japan will
aim to reduce its emissions by 25% by 2020, if
compared to the 1990 level, consistent with what the
science calls for in order to halt global warming.
「IPCCにおける議論を踏まえ、先進国は、率先して排出削減に
努める必要があると考えています。わが国も長期の削減目標を
定めることに積極的にコミットしていくべきであると考えています。
また、中期目標についても、温暖化を止めるために科学が要請
する水準に基づくものとして、1990年比で言えば2020年までに
25%削減をめざします。」
This is a public pledge that we made in our election
manifesto. I am resolved to exercise the political will
required to deliver on this promise by mobilizing all
available policy tools. These will include the
introduction of a domestic emission trading
mechanism and a feed-in tariff for renewable energy,
as well as the consideration of a global warming tax.
「これは、我々が選挙時のマニフェストに掲げた政権公約であ
り、政治の意思として、国内排出量取引制度や、再生可能エネ
ルギーの固定価格買取制度の導入、地球温暖化対策税の検討
をはじめとして、あらゆる政策を総動員して実現をめざしていく決
意です。」
However, Japan's efforts alone cannot halt climate
change, even if it sets an ambitious reduction target.
It is imperative to establish a fair and effective
international framework in which all major
economies participate. The commitment of Japan
to the world is premised on agreement on ambitious
targets by all the major economies.
「しかしながら、もちろん、我が国のみが高い削減目標を掲げて
も、気候変動を止めることはできません。世界のすべての主要国
による、公平かつ実効性のある国際枠組みの構築が不可欠で
す。すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が、我が
国の国際社会への約束の「前提」となります。」
文字で見る限りでは、予想されたような内容になっており、特に
目新しいところはありませんね。関心はやっぱり、英語力の方に
行ってしまいます。
鳩山総理は、説得力のある英語で、スピーチを行うことができ
たのか?
答えは、まあまあというところでしょうか。
とくダネに出ていたデーブが、発音はちゃんとしていて、聞き取
れなかった単語はなかったというので、お世辞があるにしても、ま
ずまずだと理解していいでしょう。
ただ、固くなっていたことは否めませんね。
ところで、この鳩山総理の英語のスピーチをめぐって、ネット上
では、鳩山氏の英語が誤解されているのではないか、との指摘
がなされています。
どうでもいいような指摘なのですが、事情がよく分からない人々
は、ひょっとして誤解するかもしれないと思い、解説しておきま
す。
上に引用した最後の文章は、次のようになっています。
The commitment of Japan to the world is premised
on agreement on ambitious targets by all the major
economies.
このうちの、is premised の premised のp の発音が聞こ
えず、remised に聞こえ、このため、日本は無条件で25%の削
減を宣言をしたと受け止められたのではないか、と。
確かに、premised がremised に聞こえると意味は違ってく
るでしょう。
premise は、前提条件とするという意味であり、remise は、
放棄するというような意味になります。
でも、この指摘、どう考えてもおかしい。
何故ならば、もし、remised と聞こえたとすれば、日本の世界
に対する公約は放棄される、というような意味になってしまうから
です。英語を喋る人は、そんな文章は意味をなさない、と思うは
ずです。つまり、remised と聞こえたとすれば、それは、聞き間
違えか、発音を間違えたのだろう、と思うでしょう。
それに、そもそも何度聞いても、ちゃんとpは聞こえ、primised
と聞こえるからです。
ネットの世界には、そうした説を簡単に信じてしまう人が多数い
ることも驚きです。皆さんは、誤解しないで下さい。
さて、どうでもいい話はそれ位にして、オバマ大統領は、何と言
っているか、といえば、結論から言えば何も言っていません。
でも、それだけでは寂しいので、温暖化対策に関する部分をご
紹介しましょう。
Third, we must recognize that in the 21st century,
there will be no peace unless we take responsibility
for the preservation of our planet. And I thank the
Secretary General for hosting the subject of climate
change yesterday.
「第三に、21世紀においては、我々がこの地球を守ることなくして
は平和はあり得ないということを我々は理解しなければならな
い。そして、私は、昨日、気候変動の問題について会議を招集し
た事務総長に感謝したい」
The danger posed by climate change cannot be
denied. Our responsibility to meet it must not be
deferred. If we continue down our current course,
every member of this Assembly will see irreversible
changes within their borders. Our efforts to end
conflicts will be eclipsed by wars over refugees and
resources. Development will be devastated by
drought and famine. Land that human beings have
lived on for millennia will disappear. Future
generations will look back and wonder why we
refused to act; why we failed to pass on -- why we
failed to pass on an environment that was worthy of
our inheritance.
「気候変動がもたらす危険は、否定することができない。我々の
義務の履行は先延ばしするべきではない。もし、我々がこのまま
進み続ければ、この国連総会に参加する全ての国は、国境の内
側においても取り返しがつかない変化を目撃することになろう。
紛争を終わらせようとする我々の努力は、難民や資源を巡る戦
争によって妨げられるであろう。発展は、干ばつや飢餓によって
打撃を受けるであろう。何千年もの間人々が住み続けてきた陸
地は消失するであろう。未来の人々は過去を振り返り、何故我々
が行動することを拒んだのかと考えるであろう。何故我々は、相
続価値のある環境を将来世代に引き継ぐことができなかったの
か、と」
And that is why the days when America dragged its
feet on this issue are over. We will move forward
with investments to transform our energy economy,
while providing incentives to make clean energy the
profitable kind of energy. We will press ahead with
deep cuts in emissions to reach the goals that we set
for 2020, and eventually 2050. We will continue
to promote renewable energy and efficiency, and
share new technologies with countries around the
world. And we will seize every opportunity for
progress to address this threat in a cooperative effort
with the entire world.
「そして、それこそが、アメリカがこの問題に躊躇する時はもはや
終わったという理由なのだ。我々は、クリーンエネルギーが、採
算の合うエネルギーになるためにインセンティブを与えつつ、
我々のエネルギー経済を転換するための投資をしていく。我々
は、2020年の目標値を達成することができるような、そして、最
終的には2050年の目標を達成することができるような、大幅な
排出削減を推進する。我々は、再生可能エネルギーの促進と効
率化を継続し、新技術を世界の国々と共有する。そして、全ての
機会を捕え、この温暖化の脅威に全世界とともに協調して取り組
んでいきたい」
And those wealthy nations that did so much
damage to the environment in the 20th century must
accept our obligation to lead. But responsibility does
not end there. While we must acknowledge the need
for differentiated responses, any effort to curb carbon
emissions must include the fast-growing carbon
emitters who can do more to reduce their air
pollution without inhibiting growth. And any effort
that fails to help the poorest nations both adapt to
the problems that climate change have already
wrought and help them travel a path of clean
development simply will not work.
「20世紀において環境に対し多大のダメージを与えた豊かな
国々は、リードする義務を受け入れなければならない。しかし、責
任問題はそれだけではない。我々は、それぞれの対応の差異を
認識しなければいけないが、二酸化炭素の排出削減の努力に
は、成長を阻害することなく排出削減のために多くのことを行うこ
とが可能である主要排出国の責任を含めるべきである。気候変
動が既にもたらしている事態に最貧国が適合することを手助け
することや、クリーンな経済発展の道を歩むことを手助けすること
は失敗しており、機能することはないのだ」
It's hard to change something as fundamental as
how we use energy. I know that. It's even harder
to do so in the midst of a global recession. Certainly,
it will be tempting to sit back and wait for others to
move first. But we cannot make this journey unless
we all move forward together. As we head into
Copenhagen, let us resolve to focus on what each of
us can do for the sake of our common future.
「我々がエネルギーを使用するような、基本的なことを変化させ
ることは難しい。そのことは分かっている。そういうことを世界が
景気後退に陥っているときに行うのはなお難しい。確かに、少し
身を引いて、他国が動き出すのを待ちたくなる。しかし、我々が
皆ともに動きださねば、この旅は始まらない。我々は、コペンハー
ゲンに向かっているので、我々それぞれが将来のために何がで
きるかについて焦点を当てることを決意しよう」
オバマ大統領は、地球温暖化対策に積極的に取り組むことが
今や避けられないことをはっきりと認めています。しかし、その一
方で、では、アメリカが何をするかについては、具体的なことは何
も言いません。
2020年の中期目標を達成できるようにするために大幅な排出
削減を行うと言うのみです。そして、そのためには、中国と名指し
することはしないでも、中国の参加が前提条件だと言っているの
です。
では、その中国は、何と言っているのでしょうか。
China would: plant millions of acres of forest,
enough to cover an area the size of Norway; boost
renewable energy sources to supply 15 percent of
China's consumption within a decade; and cut
emissions by "a notable margin" from 2005 levels, as
measured against China's GDP, by the year 2020.
「中国は、ノルウェーの面積に匹敵するほどの何百万エーカーと
いう森林に植樹することになろう。再生可能エネルギーの開発を
促進し、10年間以内に中国のエネルギー消費量の15%を賄う
ようになるだろう。そして、2020年までに、中国のGDP比で見
て、排出量を著しく削減することになろう」
China would not sacrifice economic growth by
agreeing to binding international targets.
「中国は、拘束力のある国際的な目標値に合意することによって
経済成長を犠牲にすることはない」
We should and can only advance our efforts to tackle
climate change in the course of development and
meet this challenge through common development.
It is imperative to give fullconsideration to the
development stage and basic needs of developing
countries while we address climate change.
「我々は、この気候変動という難問題に対しては、経済発展を通
じて対応すべきだし、また、対応することができるに過ぎない。気
候変動問題に立ち向かいつつも経済の発展段階と経済発展の
必要性に最大限の考慮を払うことが必要不可欠である」
今回の中国の発言には若干の変化がみられます。それは、
a notable margin という表現を使用しているからです。中国も
少しは格好がいいところを見せたいのでしょうか。しかし、いくら
a notable margin の削減を行うと言っても、それは、あくまで
もGDP比で見て、というのです。つまり、仮に中国経済が8%で
成長を続ければ、今後4%ずつ二酸化炭素の排出量が増えて
も、著しく削減したと主張するわけです。
それで、アメリカや日本、或いは欧州勢は納得するのでしょう
か。
やっぱり、先はまだまだ長い気がします。そして、そうしている
間に益々温暖化の影響が顕在化する気がします。
中国が、そう簡単に欧米や日本の言うことを聞くはずがないと、
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