家計調査はお呼びでないのですか?
1月30日の日経夕刊には、1面トップに、「鉱工業生産、最高を更新」とありま
す。何と、昨年12月の鉱工業生産指数は、前月比0.7%上昇し3ヶ月連続で過去
最高を更新し109.5(2000年=100)となったとのことです。
新聞の紙面には、グラフも掲載されています。
もちろん、最初は鉱工業生産指数の推移を表したグラフで、最近は右肩上がり
になっています。
その下に、完全失業率のグラフが掲載されています。こちらは山のような形に
なっていています。そうですね。完全失業率は、5%台の半ばまで上昇した後、着
実に下がり続けています。もっとも、最近は、3%台突入を目前にしながらも、そ
の壁を突破できずにいますが..。
さて、その下に3番目のグラフが掲載されています。「消費は力強さを欠く」と書
かれています。季節調整済みの実質消費支出のグラフで、2005年の水準を100
とした指数は、最近では100を割り、均してみると右肩下がりであるように見えま
す。
そうです。消費活動はあまりぱっとしないということのようです。
総務省は、30日に家計調査の結果を発表していますが、1世帯当たりの消費
支出は、340,959円だとか。これを物価変動を除いた実質ベースでみると、前年
同月に比べ1.9%のマイナスになっており、前年同月比がマイナスになっている
のは12ヶ月連続しているということです。
シェー、そうだったざんすか。
そんなに消費は落ち込んでいた
ざんすか。
前年同月と比べて、この1年間途切れることなくマイナスが続いているというこ
とは、消費が力強さに欠けると解釈せざるをえないかもしれません。
しかし、では、どうして調査結果を、小さく扱っているのでしょう。
日経新聞は、消費はそんなに弱いはずがないと信じている..、つまり、統計に
信頼性がないとでも考えているのでしょうか。
その統計とは、家計調査です。
[画像:家計調査]
私が、家計調査と申します。
全国の約9千の世帯が協力してくれています。
家計簿をつけさせてごめんね。
実は、以前から家計調査というのは、あまり評判がよくないのです。調査の中
身は極めて細かく、他国に例をみないような調査であると言われているのです
が、サンプル数が少ないことなどから、調査結果のブレが大きいことが指摘され
ているのです。
そうしたこともあり、近年、いろいろ改良がなされているようなのですが、既に述
べたように、集計結果は、いつも消費の弱さを示すようなものなので、新聞なども
あまり深く関わりなくないかのような態度をとっているのです。
でも、この統計がおかしいと明確に立証できない以上、この統計の結果も、そ
れなりに読者に伝えるべきではないかと考えます。
そうでないと、せっかく協力してくれた全国9千世帯の人々が浮かばれないとい
うものです。
私は協力したことがありませんが、毎日毎日家計簿をつける作業が6ヶ月も続
くのですよね。そこまで、国民に協力を仰ぎながら、信頼性がいまいちなんて言
われると、卒倒しそうです。
で、今回の消費支出1.9%減というのは、非常に悪いニュースなのかと思って、
チェックをしてみたのですが、実は、そういう受け止め方ばかりではないようなの
です。
昨年7月から12月の消費支出を挙げてみましょう。
前年同月比(名目比)
18年7月 292,328円 ▲さんかく0.8%
18年8月 292,087円 ▲さんかく3.3%
18年9月 273,194円 ▲さんかく5.2%
18年10月 294,693円 ▲さんかく1.8%
18年11月 282,860円 ▲さんかく0.3%
18年12月 340,959円 ▲さんかく1.5%
何が言いたいかといえば、7-9月と10-12月を括って比べると、10-12月の方が、
前年同期比の落ち込みが少なく済んでいるということです。要するに、前年比マ
イナスが続いているが、そのマイナス幅は縮まっているということなのです。
ただ、これは以前解説したことですが、前年同月の比較では、足元の動向が
分からないので、前月との比較が有効になります。ということで、前月と比べたい
ところなのですが、単純に前月と比べれば、季節要因が邪魔をして実態が見え
にくくなってしまいます。
ということで、季節調整をした実質消費指数を挙げてみます。
前月比
18年7月 97.0 ▲さんかく1.7%
18年8月 96.4 ▲さんかく0.6%
18年9月 94.5 ▲さんかく2.0%
18年10月 98.4 4.1%
18年11月 98.9 0.5%
18年12月 97.7 ▲さんかく1.2%
実は、前年同月で見る限り、12ヶ月連続で前年同月水準を下回っていたので
すが、足元の動きでみると、10月、11月と2ヶ月連続で、前月の水準を上回る動
きを見せていることが確認できます。
12月は、再び前月比がマイナスになっているので何ともいえない面があります
が、季節調整をした指数でみると、最近、回復の兆しが窺えるということができる
かもしれません。
統計の結果をどのように解釈するか、大変に難しい問題ですね。
いずれにしても、家計調査の結果も、少し詳細に見てくると、我々の経済に対
する理解度が相当深まるように思われます。
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庶民的タッチで書いています。
でも、レベルは高いです。