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【コラム】金子達仁

J新時代へ "特別"な最終節を見逃すな

[ 2024年12月6日 20:30 ]

練習後の取材で最終戦への意気込みを語る横浜のハッチンソン監督
Photo By スポニチ

24年のJ1も残り1節、10試合となった。昨年は最終節を待たずに神戸が優勝を決めていたが、今年はまだ3チームに優勝の可能性が残り、かつ、3チームが降格の危機に直面している。

しかも、優勝、もしくは残留を争う6チームのうち、実に5チームは敵地での試合となっている。最終戦を地元の大観衆をバックに戦えるのは、首位を走る神戸1チームのみ。これは、相当に大きなアドバンテージとみる。

ただ、2位広島との勝ち点差はわずかに「1」。つまり、G大阪と戦う広島が先制点を奪った時点で、両者の立場は入れ替わり、また、神戸が湘南に先制されるようなことがあると、これまた得失点差の関係で広島が首位に立つこととなる。こうなると、3位の町田にもチャンスが出てくる。

数ある競技の中でも、サッカーは先制点が極めて大きく意味を持つスポーツだが、この最終節に関してはまさに千金の意味を持つ。チームによって対応は違ってくるだろうが、他会場の途中経過はすべてのベンチが把握しているはず。飛び込んでくる朗報、あるいは凶報によって、やるべきことや戦い方も変わってくる。

では、どのチームが他会場に最初の凶報を伝えるのか。普通に考えれば、得点力の優れた広島が有利ということになるのだろうが、試合開始から15分までの得点数では、神戸、町田が広島を上回っている。これはもう、まったくわからないとしかいいようがない。

いずれにせよ、最終節を迎えた段階で3チームに優勝の可能性が残り、しかも、3チームの勝ち点がすべて違うという状況は、なかなかあるものではない。当事者にとってはたまったものではないだろうが、第三者としてはドラマチックな90分を大いに楽しませていただくつもりである。

残留争いに関しては、勝ち点、得失点差で大きく磐田を上回る柏が優位なのは間違いない。ただ、最終節の相手は良くも悪くもすべての重圧から解き放たれた札幌。柏の立場からすると、相当にやりにくい試合となる。

それでも、彼らの苦境も新潟に比べればまだマシかもしれない。勝ち点で磐田を「3」上回る彼らだが、得失点差の優位も「3」。もし、伝統的に極めて分が悪い敵地での浦和戦に敗れると、磐田が2点差の勝利を収めた場合は総得点の差で逆転を許すことになる。

新潟としては、できるだけ早く他会場に凶報を届け、磐田の気持ちを折りにいくのか、はたまた、引き分け狙いに徹するのか。新潟「らしい」のはもちろん前者のやり方だろうが、この状況であれば、後者の戦い方を望む声も当然あるだろう。どんな結果に終わるにせよ、その戦い方は、今後の新潟というチームの哲学、方向性を決定づけることになるかもしれない。

それにしても、同日同時刻にキックオフされる10試合のうち、6試合が特別な意味を持つという状況は、狙ってもつくり出せるものではない。まして、そのうち5試合は当事者にとって敵地での試合。いろいろな意味で、チームの、あるいはファンの底力が問われる状況となった。

日本代表が圧倒的な強さを見せていることもあり、アジア各国のJリーグに対する関心も確実に高まってきている。来季のJ2には「RB」の名を冠した黒船も出現する。今週日曜日、日本各地で繰り広げられるであろうドラマは、Jが新たな時代に突入するための号砲になりそうな、そんな気がしている。(金子達仁=スポーツライター)

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