[フレーム]
新聞購読とバックナンバーの申込み
×ばつ

【コラム】金子達仁

最終予選初戦なら...称賛できた被枠内シュート0

[ 2024年10月16日 11:30 ]

W杯北中米大会アジア最終予選C組 日本1ー1オーストラリア ( 2024年10月15日 埼玉スタジアム )

試合後、円陣で指示を出す森保監督(撮影・西海健太郎)
Photo By スポニチ

日本が最後にオーストラリアに敗れたのは15年前のことだという。以来、戦績の上では日本が圧倒的に優勢だったこともあり、今回、日本人のみならず、第三者の予想でも日本の勝利を予想する声が大多数を占めていた。それだけに、引き分けという結果は多くの人々に驚きと失望をもたらしたことだろう。

だが、この試合が最終予選の初戦であれば、受け止め方はずいぶんと違ったものになっていたかもしれない。

日本は、オーストラリアにただの1本も枠内シュートを打たせていなかったからである。

これまで、アジアの圧倒的な格下相手にならば、1本のシュートも打たせずに試合を終えたこともあった。だが、曲がりなりにもW杯常連国を相手に、GKがフィード以外の仕事をしないまま終わったことはなかった。

冷静に考えてみると、これ、相当にとんでもないことである。

だが、9月シリーズの2試合で12点を挙げ、5日前に敵地でサウジを下していたことが、この日の埼玉で起きたとんでもない内実を、完全にボヤけさせてしまった。日本凄い、どんなチームにとってもなかなかできることではない......という感想ではなく、それどころか失望感さえ呼び起こしてしまった。

さらに驚くべきは、これほどまでにオーストラリアに何もさせなかった日本は、最高の出来どころか平均点以下の内容だった、ということである。

谷口のオウンゴールは仕方がないにしても、この日の日本は相当にミスが多かった。堂安、久保がイヤなところでボールをロストするシーンがあったかと思えば、三笘や伊東のつまらないミスもあった。体調不良の遠藤に代わって入った田中も、穴を埋めた、あるいは自分らしさを出したとはとても言えない出来だった。

当然、選手たちも自分たちの出来の悪さは感じていたはずだが、にもかかわらず、先制点を奪われても全く焦りを感じさせなかったのは凄い。チームから伝わってくる雰囲気は、半年前、アジア杯で相手にゴールを奪われた際とはまるで違うものになっていた。

この試合が、この内容が最終予選の初戦だったとしたら、たぶん、わたしは日本の圧倒的な安定感に舌を巻いていたことだろう。オーストラリア相手のこの内容は凄い、凄すぎる、と。

だが、残念ながらこの試合は最終予選の4試合目で、わたし自身、失望もしているしちょっとした怒りすら覚えている。特に、相手に1本も枠内シュートを打たせなかった点は評価できるにしても、相手GKを疲労困憊(こんぱい)の状態に追い込めなかったことに関しては、大いに不満がある。

もちろん、違う見方をすれば、枠内シュートを1本も放てないほど、オーストラリアが守備に全精力を注ぎ込んでいた、ということもできる。日本相手に敵地で引き分けたことで、前の試合から指揮を執るポポビッチ監督の評価は高まるのかもしれないが、個人的には、日本を内容で圧倒しようとしたサウジのマンチーニ監督の方にシンパシーを覚える。

勝ち点4の獲得となった10月シリーズを終えての印象は、月が変われば対戦相手の日本対策も確実にアップデートされる、ということ。9月はうまくいったから10月も、というのは通用しない時代になった。9月シリーズの成功は、ひとまず忘れた方がよさそうだ。(金子達仁=スポーツライター)

続きを表示

バックナンバー

もっと見る

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /