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【コラム】金子達仁

【パリ五輪サッカー男子】負けは負け。ただ3年前より縮まっていた差

[ 2024年8月4日 18:00 ]

敗れて肩を落とす日本代表(ロイター)

実力は相手の方が上だった。ただ、日本に致命的なミスはなく、かつ、相手GKが弾(はじ)き出せるシュートを弾ききれなかった。そのうえで、肉眼では完全に「アウト」だったプレーをVARが救ってくれた。それが、W杯カタール大会でのスペイン戦だった。2―1だった。

今回も、実力は相手の方が上だった。ただ、先制点につながったのは日本のミスだった。GK小久保はシュートを弾ききれず、VARは味方をしてくれなかったどころか、完全に足を引っ張ってきた。それゆえの、0―3だった。

まずはスペインの先制点。ショートカウンターのきっかけを作ってしまったのは、出し手と受け手のわずかなズレだった。出し手が山本だったことも、ミスに対する反応をわずかに遅らせた一因ではあっただろう。信頼できる選手がからんだミスは、そうでない選手のミスよりも対処が難しい。

そして小久保。ミスと断ずるにはいささか酷な、素晴らしい相手の一撃ではあったものの、守っていたのはノイアーであれば、ドイツのメディアは彼を袋叩きにしていたことだろう。超一流のGKであれば、絶対に弾き出さなければならないシュートでもあった。

加えて、素晴らしい同点弾を台無しにしてくれたVARの介入......というよりは主審の判断。通常、「ほおら、肉眼では見えなかったでしょうけど、実はこれだけ出てたんですよ」と自信満々に提示される"証拠"が、この試合ではなかなか表示されなかった。そして、ずいぶんと時間が経(た)ってから流された映像には、"その瞬間"を拡大したものも、CGで飛び出した部分を際立たせたものもなかった。主審がオフサイドを主張したものの、VAR担当者が裏付けとなる映像を"発見"できず、途方に暮れていたのではないか、などと穿(うが)った見方もしたくなる。

なにしろこの主審、前半26分には副審はもちろん、映像ですら"発見"できなかったオフサイドを、自己顕示欲丸出しの"オーバーコール"で捏造(ねつぞう)してくれていた。そんな御仁の無理筋にしか見えない判定を、「はい、そうですか」と受け入れる気持ちにはなかなかなれない。

正直、腸(はらわた)は煮えくり返っているし、悔しい思いは当然ある。ただ、負けた試合から無理やり"惜しかった"ポイントを引っ張りだして敗北の痛みを緩和しようとしたり、他者に敗北の責任を押しつける行為に意味があるとも思えない。負けは負け。スペインは日本より強かった。そのことだけはまず認めておきたい。

2日前、わたしは「今大会のスペインはユーロやW杯のスペインとは違う」と書いた。顔ぶれも、意気込みも、最高レベルとは言い難いチームと状況ではあるからだ。なので、W杯カタール大会時よりも競った内容になったからといって、彼我の格差が縮まった、などというつもりはない。

ただ、地元開催で、かつ考えうるベストメンバーで戦った3年前のスペイン戦と比べると、明らかにその差は縮まっていた。これは、日本サッカー界にとっての収穫であり、批判はあったものの、大岩監督のチーム作りの方向性が間違っていなかったことを証明している。

この敗戦で23歳以下代表の活動は終わった。各々が今大会での教訓を胸にクラブへ戻るだろうが、個人的には、細谷に期待したい。今季、彼が柏であげたゴールはわずかに「2」。もし彼が本気で世界を狙うのであれば、残り試合で最低でも2ケタに乗せてほしい。それが、スペインをもっとも苦しめた男のノルマである。(金子達仁=スポーツライター)

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