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【コラム】金子達仁

登録18人...時代に取り残された五輪サッカー

[ 2024年6月6日 07:00 ]

スペイン遠征を終え、羽田空港で帰国後の取材に応じるなでしこジャパン・池田監督
Photo By スポニチ

三笘薫が、タイ・リーグワンのチョンブリに移籍する......なんてことになったら、ファンはどのような反応を示すだろうか。

チョンブリのファンが喜ぶのは間違いない。W杯でも活躍した、アジアを代表する選手の一人が、首都でもないおらが街のチームにきてくれる。わたしだったら、もう万々歳である。

では、日本のファンはどうか。嵐が吹き荒れるのは間違いない。まず日本代表への影響を懸念する声が噴出するだろう。タイだろうがどこだろうが、三笘だったら大丈夫、と太鼓判を押す人がいるとも思えない。

だが、本当に意識の高い選手であれば、どこでプレーしていようが、自身のレベルを維持することはできる。いまよりははるかにレベルの低かったJリーグに籍をおきながら、代表では腕章を巻き続けたドゥンガやストイコビッチが、そのことを証明している。

要は、自分の中にあるイメージや理想を、どれほど厳しく追求できるか、なのだろう。

すでにW杯アジア最終予選進出を決めている日本は、きょう、敵地でミャンマーと戦う。形の上では消化試合ということもあり、試合への関心がいまひとつ高まっていない印象もある。

ただ、選手たちにとっては重要な一戦である。

アジア杯で敗退したことで、昨年1年間で積み上げた"アジア最強"という自信は、手応えは、ほぼ完全に打ち砕かれてしまった。少なくとも、ファンの間にあった期待値は、リーマン・ショック時の株価並みに暴落してしまった。

ミャンマー戦は、再び株価を右肩上がりに変えるための大切な第一歩である。

この際、相手の実力は関係ない。前回は5―0で勝っていることも忘れていい。問題は、試合が終わったとき、選手一人一人が次の試合につながる手応えをつかめているか、である。

ミャンマーの選手がかけてくる圧力は、プレミアやリーガ、ブンデスに比べれば圧倒的に緩いだろう。だが、そこで緩さに甘んじたプレーをするような選手に未来はない。緩ければ緩いなりに、自分にかける負荷を変えることのできる選手がどれだけいるか。その一点に注目したい。

男子のA代表が"意味ある消化試合"に臨もうとしている一方で、女子の五輪代表はパリへ向けた大切な最終段階に入った。

日本と同じく、五輪への出場権を獲得しているニュージーランドとの2連戦で、なでしこたちは圧倒的な強さを見せた。

11年のW杯優勝が素晴らしすぎた分、その後は評価のハードルがあがりすぎてしまった面もあったが昨年のW杯以降、チームの実力、戦いぶりが期待に追いついてきた感がある。

ただ、チームを率いる池田監督からすると、うれしすぎる悩みがあるかもしれない。五輪の登録メンバーは、国際大会の標準からすると異様に少ない18人。今回の遠征で結果を残した選手の中からも、4人がつらい宣告を突きつけられることになる。

W杯では、カタール大会から1チームあたりの登録人数は26人となった。選手の安全や体調を考えれば当然の措置ではあるのだが、主管がFIFAではない五輪のU―23のみが、時代から取り残されてしまっている。

今回、男子の何人かの有力選手は五輪への参加を見送った。IOCが五輪サッカーに対する考え方を変えない限り、こうした流れは今後も広がっていくはずだ。

IOCは、それでいいのだろうか。(金子達仁=スポーツライター)

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