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【コラム】金子達仁

Jリーガーにも世界と戦う機会を

[ 2024年12月16日 11:50 ]

MVPに輝いた武藤(右)と野々村芳和チェアマン(撮影・西海 健太郎)
Photo By スポニチ

神戸の連覇で幕を閉じたJリーグの各賞が発表された。考えさせられることの多い発表だった。

ネット上で話題になっていたのは、3位に躍進した町田から一人もベスト11に選出されなかったこと。ただ、もしわたしが選考委員の一人だったとしても、町田の選手を年間最高の11人の中に入れようとは思えなかっただろう。

ただ、優秀監督の選考には正直なところ驚かされた。チームを2位に導いた広島・スキッベ監督の手腕にケチをつけるつもりはない。結果はもちろんのこと、魅力的なサッカーという点においては、神戸をも上回っていたとみる。

とはいえ、一人で試合を決定づけてくれるような選手がいるわけではなく、そもそもベスト11に一人も選出されないチームを3位に導いた町田の黒田監督が、選手や監督の投票で5位に留(とど)まったのは驚きだった。

これまでの監督たちとはまったく違った経歴の持ち主でもある黒田監督は、これまでの監督が手をつけなかったこと、やらなかったところにも手を出した。そのことに対する反感やアレルギー反応はファンの間だけではなく、同業者、ライバルの間にも広がっていたということなのか。

曲がりなりにも結果を出した黒田イズムは、来年以降、依然として孤高の存在であり続けるのか。はたまた、フォロアーを生み出していくのか。新しいシーズンの興味がひとつ増えた。

もうひとつ考えさせられたのは、日本代表との関係性である。

海外でプレーする日本人選手がほとんどいなかった時代、Jリーグのベスト11は日本代表選手と大物外国人選手で占められていた。今年は、現役日本代表のフィールドプレーヤーがゼロ。Jリーグでの活躍が日本代表に直結していた時代は遠い彼方(かなた)となり、海外に出なければどうしようもない傾向はいよいよ強まってきている。

そうした流れを否定するつもりはない。欧州でプレーする選手が激増したことで、日本代表の格と実力は上がった。ただ、宇佐美であっても、大迫であっても、MVPを受賞した武藤であっても日本代表とは無縁という状況は、Jリーグの今後を考えるとあまりに寂しい。

Jリーガーたちのレベルが欧州組に比べると格段に落ちるというのであれば仕方がない。しかし、だとしたらなぜ、欧州に渡ってすぐに活躍できる日本人選手がこんなにも増えたのか。わたしたちが考えている以上に、Jリーグ全体のレベルが上がっているからではないのか。

幸いなことに、すでに日本代表は次戦の結果によっては本大会出場が確定する。本大会での組分け抽選を考えると、FIFAランクを落とすようなことは避けたいが、一方で、Jリーガーたちに挑戦の機会は与えられないものか、との思いも捨てきれない。ファンに、対戦相手に、世界に、Jリーグの実力を証明するためにも。

もちろん、これは本来代表監督が考えるべき案件ではない。代表監督がやるべきことは、チームを勝たせること、のみ。契約が終われば日本を去っていく外国人監督からすれば、Jリーグの未来など知ったことではない。

だが、いまの日本代表を率いているのは日本人で、Jリーグの監督経験もある人物である。通常では考えられないほどの余裕をもって迎える最終予選の後半戦、森保監督がどんな人選をするかにも注目したい。(金子達仁=スポーツライター)

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