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【コラム】金子達仁

結果のみこだわったなでしこ 池田監督の思い描く未来は?

[ 2024年8月8日 07:00 ]

涙に暮れる長野(右)をなぐさめる池田監督(ロイター)

パリ五輪女子サッカー決勝のカードが、ブラジル対米国に決まった。米国の決勝進出はともかく、ブラジルが準決勝でスペインを粉砕したのには驚かされた。

ブラジルは、決勝トーナメントに入ってからの2試合を、大黒柱のマルタを欠いて戦っている。日本に食らった大逆転は、マルタがベンチに下がってから起きたものであり、彼女がブラジルにとって重要な選手であることに疑いの余地はなかった。そんな存在を出場停止で欠きながらの決勝進出は、意外であると同時に、見事というしかない。

ご存じの通り、1次リーグで日本はブラジルを下している。劇的かつ紙一重の試合ではあったものの、力関係でいけば五分五分か、やや日本の方が上ともとれる内容だった。となれば、つい「日本にも決勝進出できる実力はあったのでは」と考えたくなってしまうところだが、正直、そのレベルにはなかった、と個人的には思う。

初戦のスペイン戦がそうだった。準々決勝の米国戦もそうだった。どちらの試合でも、日本は内容で相手を圧倒することを最初から放棄してしまっていた。自分たちは格下であるとの前提で試合に入っていた。そこが、実力的には日本ととんとんながら、どの試合も勝ちにいっていたブラジルとは明らかに異なっていた。

サッカーには、押し込まれる試合と押し込ませる試合がある。男子日本代表のスペイン戦は、押し込もうとしながら、小さな差の蓄積によって、結果的に押し込まれてしまった試合だった。

米国戦でのなでしこは違った。彼女たちが優先したのは、相手の良さを消すことであり、自分たちの長所をぶつけることではなかった。これは、アジアで日本と戦う多くの国、特に中東勢が採りがちなスタイルであり、わたしは"アンチ・フットボール"として彼らを批判してきた。

なので、メダル獲得がならなかったという結果以上に、なでしこの戦いぶりには不満を覚えている。

リオ五輪の出場を逃し、東京五輪でも結果を残せなかったことで、世界におけるなでしこの地位が大幅な地盤沈下をしていたのは間違いない。どん底からの脱出を図るには、日本女子サッカーの未来を拓(ひら)くためには、まず結果が必要であり、そのために現実的なやり方を選択した池田監督の気持ちも理解はできる。

ただ、勝つだけでなく、スタイルで、内容で日本人以外のファンをも魅了したなでしこを知る者の一人としては、最初は中立だったファンが次第に「USA!」を連呼するようになっていった準々決勝の内容があまりにも寂しかった。

問題は、この結果と内容を池田監督がどうとらえているか、である。

わたしは、結果だけでなく、内容で世界を魅了する日本がみたい。一方で、内容はどうでもいい、結果さえあれば、という考え方があるのもわかる。結果のみにこだわったように見える今大会の先に、池田監督はどんな未来を描いているのだろうか。

つまり、今大会はW杯へ向けての途中経過だったのか、はたまた、集大成の場だったのか、ということである。落ちた底の深さを考えれば、3年という就任期間は十分とは言い難い。ただ、いまのスタイルを続けていくのであれば、世界におけるなでしこのブランド力は着実に削られていく。

協会は代表監督に何を求めるのか。これは今後、男子にも訪れる分(ぶん)水(すい)嶺(れい)である。 (金子達仁=スポーツライター)

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