アイテム番号: SCP-XXX-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-XXX-JPは、サイト-8149の静物収容ロッカーに、五十音順にナンバリングされた状態で収容されています。実験を行う際はセキュリティクリアランス3以上の職員二名以上に許可を得て、監視の上で、Dクラス職員を用いて行ってください。
説明: SCP-XXX-JPは、およそ6500本ほどの、一般的な見た目をしたプラスチック製印鑑です。現在、高さ180cm、縦、横80cmの、一般的な見た目をした回転できるスタンド型の印箱に収納されています。このスタンド型の印箱には異常性が確認されていません。
19██年█月、██県██市のスーパーマーケット近辺で不審な事故が多数報告されたことから、収容に至りました。なお、収容された際、印箱の側面の穴には空白の部分が存在しており、57本のSCP-XXX-JPは既に販売されていたと考えられています。後の捜索で一部のSCP-XXX-JPは発見されましたが、現在も18本が発見されていません。これらのSCP-XXX-JPが流通したにも関わらず発見報告がされていない理由は、「一度も使われていないままに紛失、あるいは破棄されたから」であると考えられています。
SCP-XXX-JPは通常の印鑑と同様に押捺することが可能ですが、その際、印鑑を押捺した人物(以下、被験者)に特異な反応が見られます。被験者はSCP-XXX-JPを押捺した後、決まってそのSCP-XXX-JPに彫られている苗字に対して、オブジェクトが一般的な苗字であるにも関わらず「変わった苗字である」という旨の発言をします。しかし、発言することが困難である場合はこの限りではありません。
さらに、被験者は自分が押捺した苗字を持つ全ての人物について完全に忘却しているらしいことがこれまでの実験から判明しています。ここで忘却した人物にその後会うことや、その人物についての説明を行うことなどによって新しく記憶を作ることが可能ですが、この場合も押捺時に失われた記憶を復元することはできません。
補遺1: 実験記録
実験記録XXX-1 - 20██/01/██
対象: D-17670
実施方法: 「後藤」を捺させた後、後藤という知り合いがいるか聞く。なお、これは被験者の旧来の知人の姓である。
結果: 「後藤なんて知り合いにはいないよ。いたとしたら覚えてるでしょ、そんな変わった苗字の奴」と答えた。
分析: 後藤の苗字を持つ人物のことを忘却し、その苗字に関する知識を失っているようだが、その他の影響はない。
実験記録XXX-2 - 20██/01/██
対象: D-7670(なお、この被験者は四人組歌手グループ「█████」のファンであることを公言しています)
実施方法: 「小島」「西垣」「桜木」「貝原」を捺させた後、四人組歌手グループ「█████」のメンバーの名前を聞く。
結果: 「そのグループはまだメンバーが決まっていなかったと思うよ、プロデューサーがメンバーを探してるところだって聞いたな」と答えた。
分析: 相互的な知人でなく一方的に知っている場合でも記憶の欠落が確認された。また、その効果によって忘却した人物の周辺の事実に対する記憶について、変化による整合性を取るための別の記憶へと置換させられていることが確認できる。
実験記録XXX-3 - 20██/01/██
対象: D-17670
実施方法: 伊賀研究員と互いに自己紹介をした後、被験者に「六本木」「伊賀」の二つを捺させる。自己紹介の際、伊賀研究員は自分の名前を「六本木」であると偽っている。
結果: 「六本木」を捺した際に異常は見られなかったが、「伊賀」を捺した際には研究員の自己紹介の内容を忘却していた。
分析: 被験者が相手の名前をどう認識しているかとは関係なく、捺したSCP-XXX-JP-Bに彫られた姓を持っている人物のことを忘却することが確認できた。
実験記録XXX-4 - 20██/01/██
対象: D-17670
実施方法: 被験者の苗字である「西久保」を押捺させる。
結果: 自分自身、および同じ苗字を持つ親族に関する情報を思い出せない状態に陥った。
分析: 自分自身についてであっても関係なく、情報を忘却する。また、同じ苗字の人物を全員一気に忘却しているらしきことが確認された。
補遺2: 追加実験記録
20██/03/██、███研究員から追加実験の申請が行われました。
・実在しない苗字が混じっている。 ――███研究員の申請書より抜粋
これを受理し、20██/03/██、██博士の監視の下、追加実験が行われました。
実験記録XXX-5 - 20██/03/██
対象: D-19090
実施方法: 被験者に「[データ削除済]」を捺させる。
結果: 被験者は「変な苗字だな、こんな苗字本当にあるのか?」と発言。
分析: 被験者は「[データ削除済]」の苗字を持つ人物を誰も覚えていなかった。こんなにありふれた苗字なのにも関わらず、だ。 被験者がこの苗字を持つ人物を誰も知らなかったため、記憶に異常は見られなかった。
この実験により、サイト-8149、実験の行われた部屋から推定半径50km以内において、認識災害が発生したと考えられています。当時当該SCPによる効果を受けた人物は、「[データ削除済]」という存在しない苗字について「よくある苗字である」といった認識を持ったことが明らかになっています。更に、その苗字を持った人間を知っていると述べることもありました。なお、この時、被験者も効果を受けていました。
・中学の同級生に二人いたよ。 ――███研究員
・昔、町内会にいたな。 ――██研究員
これらの記述は全て当該SCPによる認識災害であるため、効果を受けた人物にはクラスBの記憶処理が行われました。また、施設外にも効果が及んだため、周囲の町村においてはテレビや看板などの多数の手段を用いて記憶処理が行われました。なお、供述をした研究員の通っていた中学校や町内会等の当時の名簿を調べたところ、そのような人物は発見されませんでした。
この実験により、現在財団が収容できていない18本のSCP-XXX-JPについても、一般市民が特異性に気付かず「物珍しさ」を理由に購入、所持している可能性もあるとして捜索が再開されましたが、捜索再開から現在まで一本も当該SCPは発見されていません。
わっしょい
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