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芥川賞作家の新井満さん死去 75歳「千の風になって」翻訳&作曲、マルチに活躍「現代のダビンチ」

[ 2021年12月5日 05:30 ]

新井満さん
Photo By 共同

ヒット曲「千の風になって」の翻訳と作曲で知られる芥川賞作家の新井満(あらい・まん、本名新井満=あらい・みつる)さんが3日午前8時46分、誤嚥(ごえん)性肺炎のため北海道函館市内の病院で死去した。75歳。新潟市出身。葬儀・告別式は近親者で営む。喪主は妻紀子(のりこ)さん。♪私のお墓の前で泣かないでください――の歌詞で始まる同曲は、多くの日本人の心を癒やした。

大切な誰かを失い、悲しみに暮れる人を励まし続ける名曲の生みの親が亡くなった。紀子さんは公式サイトで「新井満は風になりました。いま、千の風になって日本中、世界中、宇宙中を自由に吹き渡っていることでしょう」と歌詞になぞらえて報告した。

親しい音楽関係者によると、2010年に静けさと景観にひかれ北海道七飯町に移住。紀子さんがアニメ「アルプスの少女ハイジ」ファンだったこともあり「最近は森の中でヤギを飼ったりして暮らしていた」という。

今年は五輪やパラリンピックに関連したアイヌ文化を紹介するイベントなどに携わったが、夏以降に体調を崩し「仕事で東京に来られなくなっていた」(同関係者)という。

上智大卒業後、電通に勤務する傍ら、1977年に社員として歌ったカネボウのCMソング「ワインカラーのときめき」がヒット。88年には小説「尋ね人の時間」で芥川賞を受賞。98年の長野冬季五輪では、開閉会式の構成を担当するイメージ監督を務めるなど「現代のレオナルド・ダビンチ」と評する声も上がるマルチな才能を各方面で発揮した。

活動の根底には「死」への視線があった。高校3年生だった64年に新潟地震で津波の恐怖を体験。PTSD(心的外傷後ストレス障害)のため十二指腸潰瘍を患い、潰瘍部と胃のほとんどを摘出。「以来、死はいつかではなく、すぐそこにあることを知った」と語っていた。

「千の風...」は、米国に伝わる作者不詳の詩を翻訳、作曲し、自身で歌ったのが最初。亡くなった人は墓に入るのではなく、風になって残された人々のそばで吹き渡るという、やさしい世界観が人々の心をとらえた。

06年のNHK紅白歌合戦で、テノール歌手の秋川雅史(54)が歌って人気に。翌07年にミリオンセラーとなった。新井さんはその際「この歌には"死とは再生すること、命とは永遠に不滅なのだ"というメッセージが込められている」とコメントしていた。東日本大震災で残った岩手県陸前高田市の「奇跡の一本松」を題材に写真詩集「希望の木」も刊行。遺族の心に寄り添い、勇気付けた。

◇新井 満(あらい・まん)1946年(昭21)5月7日生まれ、新潟県出身。電通で環境映像の製作に携わる傍ら、小説や歌などの創作活動を行う。87年に小説「ヴェクサシオン」で野間文芸新人賞を受賞。「千の風になって」は2001年に制作。07年、同曲で日本レコード大賞作曲賞受賞。高校の校歌も手掛けた。

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