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2015年12月

2015年12月25日

『ファーナス 訣別の朝』

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何処かで予告編を見て気になっていた映画。

クリスチャン・ベール
ケイシー・アフレック
ウィレム・デフォー
フォレスト・ウィテカー
サム・シェパード
ウッディ・ハレルソン

とキャストはやけに豪華。

さらにプロデューサーとしてリドリー・スコットやレオナルド・ディカプリオの名前がある。

クリスチャン・ベールとウィレム・デフォーなんて、バットマンとグリーン・ゴブリンなんだけれど、アメコミ映画よりも圧倒的にこういう映画のほうが似合う。


内容はとても地味。

なんでこんな面子でこんなに地味なんだ。


ペンシルベニア州ノース・ブラドックで父親と同じように製鋼所で地道に働く兄。

片や定職には就かずギャンブルで借金を抱え、町の金貸しに命じられ賭け格闘技(八百長込み)に出る弟。

兄弟の絆は強い。


だが、兄はある晩自動車事故を起こしてしまい刑務所へ。

刑期を終えて出所すると弟が迎えに来ている。

いい兄弟だ。


しかし、兄が刑務所に入っている間に病気の父は亡くなり、恋人は町の警察官と付き合い妊娠しており、弟はイラク戦争に従軍したりで荒んでいた。

色々と失ったが兄はまた製鋼所で働く。

弟は「これで最後にする。終わったら兄貴みたいにまじめに働く」と置き手紙を残し、町での賭け格闘技よりもっと危険な、隣の州でイカレた奴らが元締めの試合に。。。


アメリカにはホワイトトラッシュと呼ばれる貧乏で教養も無い(そもそも与えられる、得る機会が無い)白人層がいる訳だが、そんな奴らが山の方で何代も地元警察にも従わずに「俺達の掟」で生きている。

この辺りはホラー・スプラッターの舞台にもなりやすいのだが、この映画は揃った面子からしてそんな映画にはならない。


寂れて荒れてゆく町の閉塞感、碌な仕事もなく荒んだ住民の心。

そんな社会的な問題を、いや現実を切り取っているのだろう。


とにかく地味な映画だ。

でも見応えはある。


OPとEDでやけに印象に残ったPEARL JAM「RELEASE」
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poponu_august at 21:25|PermalinkComments(0)TrackBack(0)

2015年12月24日

『プリデスティネーション』・『輪廻の蛇』

しかく『プリデスティネーション』
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コイツは凄い。

原作はSFの巨匠ロバート・A・ハインラインが思いつきで一日で書き上げたという28ページの短編小説『輪廻の蛇』

てか、『All You Zombies』を『輪廻の蛇』と訳した事がまず素晴らしい。
(映画とは関係ないけれどw)


1970年。

場末の酒場に告白小説を書いている男が現れる。

男はバーテンと賭けをする。

様々な話を見聞きしてきたバーテンが驚くような話をしたらウィスキーボトル一本。

そして男は語り出す。

「俺がまだ少女だった頃。。。」



予告にあるような時を刻むスピーディな内容ではない。
(映画の予告は時に人目を引きやすくする為か本来の物語とは捻じ曲げられることもある)

もっと淡々とした二人の人物による会話劇であり、原作を踏襲した素晴らしいタイムパラドックスムービー。

無駄はなく、必要なものは欠くこと無く備わっている。

実は全てがヒントである。


原作を読んでいるのならばその完成度に、原作を読んでいなくとも素晴らしいタイムパラドックス映画として、是非とも堪能して頂きたい。

poponu_august at 23:35|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2015年12月20日

『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』

『オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分』
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(多分)大手建設会社勤務の男は、帰宅し息子と妻とサッカーの試合をTVで観るはずだった。

そんな男に一本の電話が。。。


浮気した女が「もうすぐ産まれる」と。

「出来ちゃった」ではない。

「産まれる」と。


そこから男の戦いが始まる!

浮気した女の出産も、その事実を知らせた妻との問題も、共にサッカーを観る約束をしていた息子に問題を悟らせない為の無様な言い訳も、翌日に控えている巨大ビルを建てるためのコンクリート注入準備を部下に丸投げすることも、全てを電話で片付けるという過酷な戦いが!

自動車に電話が組み込まれているので安心です。


この映画は、観る側がどんな状況・状態にあるかでだいぶ印象が違ってくるかもなぁ。

どんな物語であっても受け手の状況で受け取り方は分かれるものではあるのだけれど、その「分かれやすさ」はそれぞれで。


予告にある特別な映像体験とかは無く、決断ではなく結果という真綿に絞め殺されてゆくような、嫌な圧迫感がある。

やってしまったこと、起きてしまったことに対して選べる選択肢などは実は無く、ただその一本道を進むしか無い恐ろしさがある。

如何に当人が「責任は取る」と真っ当な事を言っているつもりでも、周りから見るとただの傲慢さの現れにしか見えず、「責任は取る」という言葉の裏には身勝手な自己満足感がある。


何も解決はしていない。

問題は山積み。

正直、この夜で詰んでしまった。


ラスト前の息子の台詞に望みをかけるのか。
(だとしたらあまりに認識が甘い)

ラストの産声は新たな希望の象徴なのか?
(だとしたらとても陳腐な話だ)

poponu_august at 02:45|PermalinkComments(2)TrackBack(0)

2015年12月11日

『サンチャゴ -レベリオン・シマバラ-』

しかく円城寺真己 『サンチャゴ -レベリオン・シマバラ-』 全三巻
サンチャゴ1

サンチャゴ2

サンチャゴ3

その名の通り「レベリオン=反乱」、1637年(寛永14年)12月11日に起きた「島原の乱」を題材にした漫画。

まさに「今日」ですね。

378年前。


江戸幕府が成立した後、ここまで大規模な乱は幕末まで起きていないであろう。

元々この地域はキリシタン大名(有馬氏)が治めていたのだが転封、松倉氏が治めることになり、その年貢の取り立ての厳しさを発端とする一揆がキリシタンという弾圧されていた集団と結びついて拡大したものである。


この漫画では、その圧政と重税の厳しさ、そして不作に寄る飢餓、キリシタンであった農民や元武士らが結びつき代官所を襲撃、その後大きな乱へと拡大、鎮圧されるまでを描いている。


最終巻での、イスパニア人・ディエゴと益田フランシスコ(天草四郎)とのやり取りには、唸らせられる。


信ずる者達に希望を与えるために嘘をつく。

教えには反している行いの赦しを与える。


"科(とが)ありて罪なし"


「報われない想いの代わりに希望を与えてやったんだ」

益田フランシスコは偽善者でもあるが、迷い苦しむ者たちに道を示す者でもあった。

道という希望がなければ人は生きられないのだから。



全ての偽善や想いを見抜いたディエゴは亡くなった七右衛門への想いを捨てられないサチにこう言う。

「生き残れ」

poponu_august at 18:40|PermalinkComments(0)TrackBack(0)
こんなひと
趣味は物語に触れる事です。
(本、漫画、映画、何でも) 様々な物語に救われてきました。
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