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初戦6位も高木美帆にとっては想定内か 少ない氷のしぶき 足元に見る強さ

[ 2022年2月6日 05:30 ]

北京冬季五輪第2日・スピードスケート女子3000メートル ( 2022年2月5日 国家スピードスケート館 )

滑走する高木美(AP)
Photo By AP

【藤山健二 五輪愛】国家スピードスケート館(国家速滑館)は館内が青色にコーティングされ、1万2000人の観客席を持つアジアでも最大級のリンクだ。コロナ禍もあって報道陣の動線は厳しく制限され、レース中はリンクに近づくことはできない。今では考えられないが、まだ屋外のリンクが主流だった80〜90年代はリンクサイドの壁に寄りかかり、かぶりつきで取材するのが当たり前だった。すぐ近くで見るといろいろなことが分かる。特に注目して見るようにしていたのは、選手の足元に上がる氷のしぶきだ。

エッジで氷を削り、大量のしぶきをまき散らしながら滑る選手は一見、ダイナミックで力強いように見えるが、実は違う。しぶきが多いということは氷面を蹴るタイミングや角度が悪く、加速する瞬間に必要以上に力を入れ続けているということだ。自分の体重を一番乗せられる理想的なタイミングで着氷すれば、自然と氷がバネのように反発して前方への推進力を得ることができるので、無駄な力を使う必要がない。加速はその繰り返しだ。

高木の滑りは極めてしぶきが少ない。ほとんどないと言ってもいい。完璧な角度とタイミングでしっかり体重を乗せて氷を捉えている何よりの証拠だ。最小限の力で氷から最大限の反発を得ているので体力の消耗を抑えることができ、他の選手よりも後半の落ち込みが少ない。小柄な体で大柄な外国勢と対等に渡り合い、短距離から長距離までオールラウンドで力を発揮することができる高木の強さは、足元を見ただけで十分に垣間見ることができた。

初戦の3000メートルは6位に終わったが、気にすることはない。百戦錬磨の高木にとってはこれも想定の内だろう。もとより本命はあす7日の1500メートルだ。

初めて出た10年バンクーバー五輪の1500メートルは23位で1000メートルは最下位だった。平昌でも個人種目は金メダルに届かなかった。今後こそ正真正銘の下克上へ。準備は整った。(特別編集委員)

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