スピードではなく、人とのつながり。ボツワナが教えてくれたこと(野村ミカエル介 職種:青少年活動)
2025年12月05日
帰国直前のJICA海外協力隊隊員へ、後輩隊員からボツワナでの日々についてインタビューを実施する本シリーズ。今回からはマーケティング隊員の金子がインタビューを担当します。青少年活動隊員としてNGOチャイルドラインへ派遣された野村ミカエル介さんにお話を伺います。NGOでどのような活動をされたのでしょうか。
1.
野村さんの活動内容や、取り組んだことを教えてください。
私の配属先のチャイルドラインは1991年に設立され、子どもの虐待やSOSに対応する無料ホットライン運営、一時保護施設(シェルター)の運営を行っています。 そこで私はオフィス業務と子どもたちと関わる活動の2軸で活動していました。
オフィスでは、レポート作成や資金調達のためのプロポーザルづくり、デザインなどを担当しました。元々デザイン経験があり、ポスターや教材などのデザインをすべて任され、2年間で作成したポスターは100枚以上になりました。スタッフが今後も使えるようにテンプレートを整え、デザインツールやAIの活用も指導しました。
一方で、子どもたちとの活動も欠かせません。施設の子どもたちと遊んだり、他の日本人隊員やボツワナ大学の学生を招いたイベントを実施したりしました。特に力を入れていたのは「逆遠足」をテーマにしたプロジェクトです。外に出られない子どもたちのもとへ地域の人や協力隊員が訪れ、文化や遊びを一緒に楽しむ企画です。日本の遊び「おてだま」を子どもたちに体験してもらった際は、子どもたちの笑顔があふれる時間になりました。おてだまはそのまま施設に寄付をしたので、今後も子どもたちが楽しんでくれることを願っています。
また配属先の活動以外では、「Kagiso展」というイベントを主催しました。Kagiso(カヒソ)とは、『平和』を意味する現地語(ツワナ語)です。私は広島にルーツがあるため、原爆と平和について考えてほしいという思いからボツワナで展示会を行いました。イベントには10を超える国の人が来てくれ、とてもいい思い出になりました。
2.
協力隊に参加されたきっかけを教えてください。
実は、協力隊に参加する前は海外経験が全くありませんでした。「ただ旅行するだけではなく、現地で人のために何かしたい」という思いが強く、大学時代に地域おこし協力隊*の方と関わった経験がきっかけで、JICA海外協力隊に興味を持ちました。大学院では国際協力を学んでおり、教育分野に携わりたいという思いから応募を決意。ボツワナでの活動は、まさにその第一歩でした。
*地域おこし協力隊:総務省が推進する制度で、都市部から地方に移住した人材が、地域振興や地域課題の解決に取り組む活動を行う仕組み
3.
ボツワナで活動する上で大変だったことや、日本との違いはありますか?
一番大変だったのは、資金カットにより多くのスタッフが解雇された時です。特に、広報担当やデータ管理を担っていたスタッフが抜けてしまい、組織としての機能が落ちてしまった時には、自分の無力さを痛感しました。NGOという組織の現実を目の当たりにした瞬間でもありました。
文化面では、日本とボツワナの価値観の違いも大きく感じました。ボツワナは「権力の格差」が大きく、「個人主義」が低い社会だと感じます。責任を個人ではなく組織全体で受け止める傾向があるため、日本のようなスピード感で物事が進まないこともありました。ただ、その分、人と人とのつながりや「助け合い」を大切にする文化が根づいており、温かい関係性のなかで活動できました。
4.
ボツワナでの生活を一言で表すと?
「Thuso(トゥソ)=助け」 です。
ツワナ語で「Help」という意味があります。協力隊として"人を助けたい"という思いでボツワナに来ましたが、実際には多くの人から助けられることばかりでした。同僚も常に「What do you need?(なにか必要なものはある?)」と気にかけてくれて、精神的にも支えられました。お互いに助け合いながら活動できたことが、本当にありがたかったです。
5.
これから協力隊に参加する方へのメッセージ
私から特に言えるアドバイスはありません。協力隊への参加を考えている時点で、すでに自分のなかに強い思いがあるはずです。人によって活動内容や環境は違いますが、「自分のペースで、自分のやり方で進めばいい」と思います。結果がどうであっても、その経験は必ず次につながります。頑張ってください。
インタビュー・文:金子(ボツワナ派遣、マーケティング隊員)
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