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藤井竜王が最年少防衛「ホッと」20歳4カ月で渡辺名人の記録を1年3カ月更新 勝負を分けた"遠望"

[ 2022年12月4日 04:44 ]

第35期竜王戦で初防衛を果たし、花束を手に笑顔の藤井竜王
Photo By スポニチ

藤井聡太竜王(20)=王将、王位、叡王、棋聖含め5冠=が挑戦者に広瀬章人八段(35)を迎える第35期竜王戦7番勝負第6局は3日、鹿児島県指宿市「指宿白水館」で2日目が指し継がれ、113手で藤井が勝利した。4勝2敗とし、初防衛に成功。渡辺明名人(38)=棋王との2冠=が05年に達成した21歳7カ月での最年少竜王防衛を17年ぶりに20歳4カ月で更新した。年明けからは第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負で羽生善治九段(52)とタイトル戦で初対決する。

描いた遠望が勝負を分けた。飛車を捨てて角を生かす。肉を切らせて骨を断つような、藤井の強手だった。

70手目、広瀬の封じ手は本命視された飛車取りの銀打ち。前日、1時間16分の長考で導き出され、藤井に左右どちらへ飛車を逃げるのかと問い掛けた。

藤井の応手は違った。下段飛車を六段目へ、上に逃げた。直後の銀打ちで藤井飛車の逃げ場所がなくなるため、ないはずの選択肢だった。

「(銀打ち以降)攻め込んでいく展開で、手をつなげられたかなと思う」

藤井の回想以上に広瀬の告白は切実だ。「飛車を取らせる順は考えてなかった。"飛車を取れば何とかなる"は甘い考えで反省している」と振り返った。

藤井の考慮わずか10分。前日からの予定だったことは明らかで、銀を打ち、取る2手の代償に、広瀬銀を駒台へ。さらに攻防に据えた角が大車輪の働きをする。局面は中盤のさなかだが一人終盤の寄せ合いを見渡していたのだろう。以降、投了まで一方的に攻めきった。

言葉や態度で喜びを表現することなく、抑制的に振る舞う20歳に新たな勲章が加わった。渡辺が05年、開幕4連勝で前年奪った竜王位の初防衛に成功した。竜王防衛としては史上最年少の当時21歳7カ月。その記録を20歳4カ月で1年3カ月更新した。

タイトル戦に出場したのは今回が11度目で、これまでいずれも制している。広瀬は藤井にとって6人目のタイトル戦対戦者だった。また、今年度の勝率は指定席のようになった8割(28勝7敗)へ復帰した。

「広瀬八段に序盤から工夫されてうまい対応を返せない展開が続いた。課題を感じたが、結果を出せてホッとしてます」

快勝からも的確に課題をすくい上げる20歳が次に見据えるのは年明け。「番勝負で対戦できるのを楽しみにしている」。7人目のタイトル戦対戦者となる羽生を迎え撃つ。

1月8、9日、静岡県掛川市「掛川城二の丸茶室」。藤井は初防衛、羽生はタイトル獲得通算100期目を懸けるシリーズ。夢舞台は年をまたいでも続く。

≪広瀬「完敗だった」≫2勝4敗で敗退となった広瀬は第31期以来の竜王、そしてタイトルホルダー返り咲きも逃した。第31期は同じ2勝3敗で指宿白水館での第6局を迎え羽生に連勝して奪取した。4年前の再現はならず「中終盤で実力差を感じることがあった。スコア以上の完敗だった」。藤井から7番勝負で初めて挙げた2勝の手応えを示すことはなかった。

≪2人とも魚を選択≫昼食に藤井は海鮮丼定食、広瀬は指宿産鰻重(うなじゅう)を注文した。1日目は藤井が黒豚カツカレーで広瀬は鹿児島黒牛膳。詰みまで読みを入れる2日目は、比較的軽めに済ませる棋士は多い。両者、肉から魚へのチェンジは"定跡"と言えた。

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