原善広『日本の路地を旅する』(文春文庫)を読んだ。
中上健次の作品を読んだことのある方ならご存知と思うが、彼は非差別部落を「路地」と呼んでいた。本書の題名にもなっている「路地」も非差別部落のことである。
上原善広氏自身、大阪の被差別部落出身で、自らのルーツをたどるために、北は北海道から南は沖縄まで全国の「路地」を探訪している。本書はそれをまとめたものだが、単なる紀行文ではなく、自らの出自と感情などをからめた随筆になっている。「自分探しの旅」というと、少々軽薄に聞こえるかもしれないが、この作品は本当の意味での〈自分探しの旅〉になっている。
被差別部落の問題はいわば現代のタブーになっている。特に被差別部落そのものが少ない東日本に住む人には、ピンとこない人が多い。僕も小学生だったか中学生だったかのときに同和教育を受けたが、どこか外国の話のようで理解できなかった。差別をしてはいけないというのは分かるが、なぜ忘れられつつある差別をわざわざ教えるのか、これは逆に差別を助長するのではないかと、比較的最近まで思っていた。
ところが、意外にも部落差別は身近なものであることに気付かされたことがあった。僕のルーツは滋賀県である。滋賀県は全国的にみても被差別部落の多い地域で、本書によると東日本の被差別部落には滋賀から移住させられた人も多いという。
個人的に何があったか、詳しくは書けないが、身内の様々な出来事、言動から、差別というものの根深さを知った。それは「俺は差別と黒人が嫌いだ」というエスニックジョークそのものだった。それ以来、風化で差別を無くすことは不可能だと悟った。
〈路地〉そのものは現在では風化しつつある。しかし、差別意識は様々に形を変えて生き残っている。それを理解するために、部落差別の少ない地方の人にこそオススメしたい作品である。
[フレーム] (追記) (追記ここまで)
中上健次の作品を読んだことのある方ならご存知と思うが、彼は非差別部落を「路地」と呼んでいた。本書の題名にもなっている「路地」も非差別部落のことである。
上原善広氏自身、大阪の被差別部落出身で、自らのルーツをたどるために、北は北海道から南は沖縄まで全国の「路地」を探訪している。本書はそれをまとめたものだが、単なる紀行文ではなく、自らの出自と感情などをからめた随筆になっている。「自分探しの旅」というと、少々軽薄に聞こえるかもしれないが、この作品は本当の意味での〈自分探しの旅〉になっている。
被差別部落の問題はいわば現代のタブーになっている。特に被差別部落そのものが少ない東日本に住む人には、ピンとこない人が多い。僕も小学生だったか中学生だったかのときに同和教育を受けたが、どこか外国の話のようで理解できなかった。差別をしてはいけないというのは分かるが、なぜ忘れられつつある差別をわざわざ教えるのか、これは逆に差別を助長するのではないかと、比較的最近まで思っていた。
ところが、意外にも部落差別は身近なものであることに気付かされたことがあった。僕のルーツは滋賀県である。滋賀県は全国的にみても被差別部落の多い地域で、本書によると東日本の被差別部落には滋賀から移住させられた人も多いという。
個人的に何があったか、詳しくは書けないが、身内の様々な出来事、言動から、差別というものの根深さを知った。それは「俺は差別と黒人が嫌いだ」というエスニックジョークそのものだった。それ以来、風化で差別を無くすことは不可能だと悟った。
〈路地〉そのものは現在では風化しつつある。しかし、差別意識は様々に形を変えて生き残っている。それを理解するために、部落差別の少ない地方の人にこそオススメしたい作品である。
[フレーム] (追記) (追記ここまで)
コメント
コメント一覧 (2)
解放運動の始原とも言うべき水平社は大和の地に生を発しました。
その必然性は、当然差別のし烈さ(もちろん他にも数多くの要因がありますが)によって導かれたものでもあります。
様々な差別解消の施策を終えた今において・・・ちょいと目を凝らし、耳を澄ませば・・・そこには封建社会の残滓があちらこちらにこびりついています。そしてそれが生活そのものと結びついてしまっている・・・だから、表面上は目につかなくとも、平常は気づかれないままに、大事な時にだけふっと姿を見せる・・・
同和教育が名を人権教育とかえますます見えにくくなってきた部落差別・・・
見えにくい・・・いや見えなくなってしまった(けれども無くなってしまったわけではない)ものにいかに抗ってゆく・・・そんな仲間を増やす営みが今私たちには課せられています。
どうなんでしょうね。
出身ではないので、何とも言えませんが、両親の出身地のまわりにもいくつかあります。実際に教えてもらったこともありました。
本書によると近江牛がブランド牛として全国的に有名になったのも彼らの努力によるものだそうです。
>だから、表面上は目につかなくとも、平常は気づかれないままに、大事な時にだけふっと姿を見せる・・・
そうですね。僕も一番最初にこれを理解したのは、結婚(もちろん僕のではない)の話でした。
>同和教育が名を人権教育とかえますます見えにくくなってきた部落差別・・・
三友亭さんは実際に同和教育に関わってこられたことと思います。
どんな差別でsも、結局は人権問題なんだけど、その人権を伝えるのは難しいことですね。
今の在日朝鮮人に対するヘイトスピーチなどを見ていると、教育の無力さを感じてしまいます。