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【内田雅也の追球】落合博満も第一段階は「見る」そして「慣れる」だった

[ 2022年2月4日 08:00 ]

ブルペンで打席に立ち、藤浪の投球にサムアップで応えるマルテ
Photo By スポニチ

打撃で肝心なのはまず「見る」ことである。投球の球筋を見る。そして、キャンプ中で大切なのは、その球筋に「慣れる」ことである。

前年のシーズン終了から何カ月間も打席から遠ざかっている。開幕の本番に向け、目を慣らしていく作業は欠かせない。

三冠王3度の大打者、落合博満(現野球評論家)はこの「目」と「慣れ」にこだわっていた。極端な例がある。

ロッテ時代の1986(昭和61)年3月2日、鹿児島・鴨池球場での巨人とのオープン戦。4番一塁手で出場したが、2年目の左腕・宮本和知(現巨人球団社長付アドバイザー)に2打席11球、1度もバットを振らなかった。ともに見逃し三振でベンチに下がった。

「きょうは球筋を確認しただけ。バットを振る気はなかった」と当時の本紙に談話がある。「打てる球はあったけど振る必要はないんだ。今年初めてだから打席に立ってもっと恐怖心があるかと思ったけどなかった。今年もこれで野球ができそうだと思ったよ」

振らないことは事前に監督・稲尾和久に了承を得ていた。まず「見る」、そして「慣れる」という、調整の段階だった。

現役引退後に出した著書『コーチング』(ダイヤモンド社)で<"慣れ"が肝心>と項目を立てて書いている。<現役時代はスローペースの調整をしていた。これは、目や体が140キロのストレートに慣れるまで、打席に立つことは自殺行為だと考えていたからだ>。

沖縄・宜野座での阪神キャンプ3日目、野手全員(捕手を除く15人)がブルペンで打席に立った。目慣らしである。

かつては金本知憲(現本紙評論家)や福留孝介(現中日)もよくブルペンに姿を見せていた。

ジェフリー・マルテは藤浪晋太郎の球を見て、「むちゃくちゃ速かった」と言った。もちろん藤浪の球は速いが、マルテが言いたかったのは「藤浪ということじゃなく、どんな速い球にも対応できるように、シーズンに向け、しっかりやりたい」という意味だった。

素直な、そして正しい感想だと思う。この時期は投手の仕上がりが早く、打者は戸惑うものだ。

落合は別の著書『超野球学』(ベースボール・マガジン社)で打撃の理屈として冒頭に「目」をもってきている。<目の錯覚と戦え><ボールを長く見る><目付け>......を説いている。ともあれ、まずは「見る」ことである。 =敬称略= (編集委員)

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