だから、ワタシは「罪に問われた人たち」と生きる。
犯罪と向き合う7人の物語
そのような世間の風潮とは別に、彼・彼女らの更生を信じ、 自立した生活を送れるように彼・彼女らに関わる人たちがいる。 犯罪とは、どこか遠くで起こっている他人事ではなく、 我々の生活する社会と地続きの自分事である。
罪を犯し刑務所に入所した人は、死刑判決でない限り(再審無罪の場合もある。もっと言えば死刑確定者であっても支援は必要な場合もある)、原則として出所し、地域社会で生活を送ることとなる。また、執行猶予判決を受けた者は、刑務所への入所することなく、一定のルールのもと地域社会で生活を送ることとなる。その際に、彼・彼女らに十分な支援はなされているのであろうか? 彼ら・彼女らを、「あんな奴ら」とみなし、軽蔑し、遠ざけ、排除しようとしているのではないだろうか? そのような世間の風潮とは別に、彼・彼女らの更生を信じ、自立した生活を送れるように彼らに関わる人たちがいる。
本書は、そういった人たちと関わろうとするソーシャルワーカー、公認心理師・臨床心理士、刑事弁護人、依存症当事者・依存症回復施設職員、刑務官(元)・看護師、研究者(犯罪学・刑事政策)による対談を収録したものである。彼・彼女らが罪を犯した人と関わろうとする動機は、再犯防止、罪を犯した人の生き直し、人が生きたいように生きる社会の実現、自身が生きる意味を考えるため、自分の生きる社会を良くしたい、とさまざまである。
罪を犯した人への支援は不要であると考える人もいるかもしれない。また、支援が必要かどうかの答えを持ち合わせていない人もいるであろう。しかし、犯罪とは、どこか遠くで起こっている他人事ではなく、我々の生活する社会と地続きの自分事である。
罪を犯した人との関わりを考えることで、我々が身を置く社会のあるべき姿はどのようなものであるかを検討する機会を提供する。
[フレーム]
プロローグ 司法と福祉が交わるとき〜その方程式は掛け算か割り算か〜
木下大生 ... 研究者(障害者福祉)・ソーシャルワーカー
●くろまる専門職連携による包括的支援の重要性●くろまる福祉職が刑事司法領域に関与するまでの経緯●くろまる専門職の連携の必要性
第1章 ×ばつ「ソーシャルワーカー」= "社復復帰" のその先へ
金子毅司 ... ソーシャルワーカー
●くろまる経験を積むほど湧き上がる疑問●くろまる実践へ●くろまる本人の希望に添い、必要な支援を見極める●くろまる小さなきっかけで新たな排除が生まれる
Column1 司法と福祉の連携の"これまで"と"これから"
第2章 ×ばつ「治療的司法」=被告人という「人間」と向き合う
菅原直美 ... 弁護士
●くろまる誰だって「より良く生きたい」と願っている●くろまる「治療的司法」という哲学に出会う●くろまるある依頼者のケースから得た気づき●くろまる司法と福祉をどう繋いでいくか●くろまる「自己責任」という言葉で片づけない
Column2 あのオバちゃんは誰やねん
第3章 ×ばつ「当事者スタッフ」=安心できる場所で生きる
渡邊洋次郎 ... 依存症当事者・依存症回復施設職員
●くろまる自分を見つめ直す試みの場●くろまる支援者として何をするのか、何ができるか●くろまる寂しさから犯罪、依存症に至る●くろまる社会でうまくやっていくには、自分が変わらなければならない●くろまる「絶対に譲れない価値」を持つ
Column3 自分の弱みだったことが強みに変わるとき
第4章 ×ばつ「当事者の対話」=ニーズを知りリスクを捉える
毛利真弓 ... 公認心理師・臨床心理士
●くろまる心理師として少年に向き合う●くろまる少年の心の動きや背景にある問題の大きさ●くろまる変化のために共同体を使う●くろまる変わっていった人たち●くろまるセンシティブな問題にどう取り組むか●くろまる島根あさひの「回復」プロセス●くろまる実感したさまざまな効果●くろまる支援とともに自分も生きやすくなった
Column4 治療共同体という存在
第5章 ×ばつ「ニーズが高い人」=地域社会でともに生きるために
加藤公一 ... 元刑務官・看護師
●くろまる刑務官という職の特殊性に抱いた違和感●くろまる脱人格化せざるをえない環境●くろまる出所後の社会での適応能力は身につくのか?●くろまる新しい刑務所運営と社会復帰支援の取組み●くろまる個別対応と教育支援による刑務所改革
Column5 日本から懲役刑が無くなるけど70年ほどは無くならない!?
第6章 ×ばつ「ダイバーシティ」=その人らしく生きるということ
丸山泰弘 ... 研究者(刑事政策・犯罪学)
●くろまるその人と一緒に闘う●くろまる刑事政策と向き合う●くろまるドラッグコートとの出会い●くろまる刑罰に頼らない薬物政策とは●くろまるさまざまな視点から薬物問題を考える●くろまる"その人らしく生きる"を支援する
Column 6 "Addict" は偏見を生み出すのか
第7章 「誰か」と「社会問題」が交わる時→答え合わせ
●くろまる罪を犯した人々への支援感の醸成●くろまる刑務所改革の現状と課題―教育刑の導入とその影響●くろまる刑務所改革に向けた多様なアプローチ―障がい者対応の改善の必要性●くろまる罪を犯した人々への支援の意味
おわりに
編著者略歴
関連書籍
関連記事
-
【書評掲載】『だから、ワタシは「罪に問われた人たち」と生きる。』
2025年04月24日
-
[正誤表]『だから、ワタシは「罪に問われた人たち」と生きる。 』
2024年10月31日