保釈を勝ち取る
90事例の裁判理由からみる傾向と対策
第1章では、結果として無罪になっている事例を取り上げ、結果として無罪になる案件の保釈が難航している実情について検討する。
第2章では、より対審的に審理されるべき保釈裁判の手続的な現実と、実務的に行われている若干の工夫について取り上げた。
第3章では、否認事件を中心に取り扱う執筆担当者において、起訴直後から少なくとも相当早期に保釈を得てきた実践を素材に、裁判所をどのような視点で納得させていくか、いくつかの着眼点を指摘した。あわせて、第5章、第8章ないし第11章のように、事情変更を作出したり保釈条件を工夫したりする実践についても、参照すると良いと思われる。
第4章、第6章、第7章では、重大前科(2号)や、暴力団関係者、逆に主婦といった、一定の人的属性を有する被告人の場合に、その人的属性がどのように扱われているかを検討した。
第10章では、上訴保釈の実情を検討した。
第12章では、不服申立審で結論が変更されている事案の実情を検討した。
また、コラムも豊富に掲載。コラムは、肩のこらない読み物であったり、思いの丈であったり、実務的なちょっとしたコツであったりするが、時に各章の論文よりも鋭い問題意識が示されていたりする。
さらに、我が国を代表する刑事弁護士4名に、保釈との関係での一文を寄せて頂いた。今も昔も「人質司法」であることを鮮明に描き出す浅井弁護士、郷原弁護士。証拠隠滅や逃亡の危険が無に等しくなるまで保釈を認めない裁判所の姿勢は、あたかも子どもの水難事故を防止するために水位の低い池以外はすべて埋めてしまうが如しと喝破された後藤弁護士。人質司法の実態を明確に伝えるため、情報隠しを行う司法統計に抗して刑事弁護人が情報を出し合っていく必要性を訴える高野弁護士。期せずして、その問題意識は一カ所に凝集したように読める。
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第1部 事例分析
第1章 無罪と保釈
第2章 検察官意見の入手
第3章 4号事由を乗り越えるためのいくつかの視点
第4章 2号事由と裁量保釈
第5章 保釈条件の工夫
第6章 人的属性と裁量保釈
第7章 暴力団関係者の保釈
第8章 否認事件と保釈
第9章 接見禁止と保釈
第10章 上訴保釈の現状
第11章 勾留理由開示による事情変更の作出
第12章 不服申立審で判断変更されている事例の検討
第2部 裁判例集
【コラム】
コラム1「保釈事件の標準処理速度」
コラム2「当初決定理由を具体的に説示する裁判官」
コラム3「検察官の怠慢と裁量保釈」
コラム4「2号事由の事実誤認を認めた権利保釈事例」
コラム5「保釈金の一部を現金納付求められる場合がある」
コラム6「保釈条件を嵩上げして保釈金が減額された事例」
コラム7「余罪と保釈」
コラム8「保釈取消請求について」
コラム9「否認事件における早期保釈―34%という数字」
コラム10「上訴保釈の手続」
【特別寄稿「保釈と私」】
保釈が語る刑事裁判の楽屋裏(浅井正)
隠すな! 埋めるな!(後藤貞人)
ちゃんとした統計を作ろう(高野隆)
「人質司法」との戦いの始まり(郷原信郎)