1:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:46:14.59 :
dMq3QRAJ0
女生徒A「... ... ...」
女生徒B「... ... ...」
A「ちょっと」
B「... ... ...」
A「ねえ、ちょっと」
B「... ... ...」
A「ねえ!わざと無視してるフリしてるでしょ!?アンタよアンタ!」
B「... ... ...?」
A「そのわっざとらしい『私ですか?』みたいな首の傾げ方やめなさいよ!アンタだって言ってるでしょ!」
2:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:47:10.81 :
dMq3QRAJ0
B「なにか用?」
A「あのねえ、用も何も...私の状況見ればわかるでしょ!?」
B「... ... ...?」
A「だから首を傾げるな! 今の私!!どうなってる!?」
B「埋まってる」
A「どこに!」
B「地面に。コンクリートの」
A「そう!分かってるじゃない! それなら貴方はどうするべきなの!?」
B「... ... ...」
A「しゃがみこんで手を合わせるなーーーッ!!」
3:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:48:29.52 :
dMq3QRAJ0
A「普通この状況みたら助けようとかどうしようとか思うでしょ!?なんで素通りしようとしてたわけ!?」
B「めんどくさいから」
A「なにが!?」
B「こうやって絡まれるのが」
A「キーーーーッ!!」
B「... ... ...」
A「...人通りさえ多ければアンタみたいな人でなしに声なんかかけないわよ。この道、この時間だとほとんど人がいないんだから...」
B「... ... ...」
A「黙ってないで助け呼ぶなりレスキュー呼ぶなりなんでもしなさいよ!!人としての常識でしょ!?」
B「... ... ...」
A「... なによ。その物言いたげな顔は」
B「『お願いします』は?」
A「どういう性格してるのよアンタは」
4:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:49:37.55 :
dMq3QRAJ0
A「アンタ... 私と同じ制服よね?何年生?」
B「2年」
A「私3年よ」
B「おー」
A「なんだその感情のない感激の仕方!?」
B「3年生」
A「そうよ!アンタの先輩!」
B「うん」
A「... ... ...」
B「... ... ...」
A「うんうん頷いて納得しながら後ずさりするな!!帰ろうとするなーーーッ!!」
5:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:50:49.65 :
dMq3QRAJ0
A「あのねえ。人がコンクリートの地面に下半身が埋まって身動きが取れないのよ?しかも同じ学校の先輩」
B「うん」
A「...普通さ。人としてまず助けようって気が起きないわけ?」
B「起きる」
A「起きてるの!?意外!だったら実行してよ!」
B「わかった」
A「... ... ...」
B「... ... ...」
A「... なによ、その沈黙は」
B「『お願いします』は?」
A「... ほんっと性格悪いわね、アンタ」
6:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:52:14.26 :
dMq3QRAJ0
A「お願いします、助けてください...。 ...これでいい?」
B「うん」
A「...。 それじゃ、まず試しに引っ張ってくれる?」
B「そもそも自分で抜けない?」
A「さっきから踏ん張ってるんだけど... っっ...! だめ、ぴくりとも動かない」
B「もっと力入れてみて」
A「くーーーっ ...!!んんんんっ ...!!」
B「もっともっと」
A「ふぬうううううっ...!!ひぃいいいいいっ!!」
B「がんばれがんばれ」
A「ぐがあああああああ...!!! ...っぷはぁ! だ、ダメ...ホントに抜けないの...」
B「なんだか生まれたての仔馬を応援してる気分。素敵」
A「あんたの心境はどうでもいいから助けろ」
7:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:53:29.31 :
dMq3QRAJ0
B「とりあえず引っ張ってみる」
A「そうね、お願い」
B「うんとこしょ」
A「... ... ...」
B「どっこいしょ」
A「... ... ...」
B「うんとこしょ」
A「... ... ...」
B「しょうがない、おばあさんを呼んで来よう」
A「私の人生のピンチをカブのお話調にしないでもらえるかしら」
8:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:54:29.08 :
dMq3QRAJ0
A「駄目...アンタ一人の力じゃびくともしないわ...」
B「どないしまひょかあねさん」
A「誰が姉さんだ。 ...ねえ、今何時?」
B「...4時10分。夕方の」
A「...!!嘘でしょ...!さっきは余裕だと思ってたのに...!!ねえ、ちょっと、ホントに急いで誰か呼んできて!!力のありそうな人!」
B「レスキュー呼ぶとかは?」
A「時間がないの!そんな事したら間に合わなくなる!!」
B「なにに?」
A「塾!4時半からなの!遅れたら大変なんだから...!とにかく急いで!」
B「今日は休めば」
A「駄目駄目!!そんな事できない!!いいから早く!」
B「... ... ...」
9:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:55:25.34 :
dMq3QRAJ0
10分後
B「... だめ。人のいる気配がない」
A「あああ、もう、これだから田舎は...!!あと10分しかないじゃない...!!」
B「さっきも言ったけど、休んだほうがいいんじゃ」
A「仮に休んだとしてもすぐに家に帰ってピアノのレッスンがあるの...。それに、ママになんて言えば...」
B「それも休めば」
A「無理!ママに怒られる!」
B「...なんで?」
A「習い事サボるのよ?怒られないわけないじゃない...」
B「サボるわけじゃないんじゃ」
A「地面に埋まって出られなくなったなんて話、情けなくて出来るワケないよ...。下手に言い訳したら余計サボったと思われるし...あああ、ホントにどうしよう...!!」
B「ぷぷ、なんだか他人のピンチって蜜の味だね」
A「アンタ本当に性格悪いなーーッ!!いいからどうにかしてよーーッ!!」
10:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:56:41.65 :
dMq3QRAJ0
B「お母さんに怒られるくらいどうってことないんじゃ」
A「... 駄目」
B「なんでそんなに怒られるのが嫌なの」
A「... ちゃんとしないと...私の事、捨てちゃう」
B「え」
A「... ... ...」
A「昔から...習い事休んだり、テストで悪い点とると...ママに怒られてた。そのたび、『そんな子はいらない』って、家の外に追い出されてた」
B「ひどいね」
A「もう私も中3だし...こんなにママの事びびってるなんて、自分でも情けないと思う。...でも、ダメなの。ママの怒った顔考えただけで...ぞっとしちゃって」
B「... ... ...」
A「... ... ...お願いだから助けてよ... 塾に行かないと...また怒られる...。お願い...」
B「... ... ...」
11:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:58:00.63 :
dMq3QRAJ0
・
・
・
B「119番、呼んできた。もうちょっとで来ると思う」
A「...ありがと。...でも、塾はもう間に合わないね...。はは...どうしよ...」
B「... ... ...」
A「...?本当にありがとう。もう行っていいよ。あとはレスキューの人に任せるからさ」
B「ねえ」
A「なに?」
B「塾、楽しい?」
A「... ... ...」
B「ピアノは?習い事、楽しい?行きたいと思う?」
A「... ... ...」
A「思うワケ、ないじゃん」
12:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 19:59:34.55 :
dMq3QRAJ0
A「3歳の頃から習い事始めてさ。今じゃ塾とピアノに英会話にスイミング...今度はフィギュアスケートも始めさせるつもりなんだってさ、ママ」
B「すごい」
A「学校の皆は街に出て買い物したりゲーセン行ったりカラオケ行ったり...家に帰ってくつろいでる子だっているのに。私は...そんな事、した事ない」
A「ママとパパは遅くまで帰ってこない。私には習い事が保育所みたいなもの。預けておけばママは安心なの、近くに大人がいるからね」
A「小さい頃から...ずっとそうだった。友達と遊んだ事なんて...ない」
B「... ... ...」
A「この道だって...いつも通りたくなかった。その曲り角を右に曲がれば、また塾が始まる。大っ嫌いな、退屈な、夜までの時間が始まる」
A「折角学校が終わったのに、夜、寝るまでずっと...退屈で窮屈で息苦しい時間が、ずっと続いてく」
B「辛いね」
A「...絶対に、行きたくないのに。...はは、でもなんで私、こんなに塾に行きたがってるんだろ。おかしいよね」
B「... ... ...」
13:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:01:52.87 :
dMq3QRAJ0
A「アンタ、急いでたんじゃないの?ホントに、もういいよ。レスキューに任せれば」
B「... ... ...」
A「はは、流石に人間としての情が湧いたって?」
B「人間が大根みたいに地面から抜けるとこ、見てみたいから」
A「... 地面から抜け出したら一発ブン殴るわ、アンタ」
B「やさしめにおねがいします」
A「ははは...考えとくわ。 ... 今、何時?」
B「4時45分」
A「もう授業始まってる、かぁ...。 あー...久しぶりに塾休んだなぁ... この調子だとピアノも間に合わないかも」
B「嫌な気分?」
A「... ... ...」
A「んーん。なんかアンタに話したらすっきりしちゃった。諦めると気が楽になるもんだね。あはは、気持ちいいかも」
B「ママに怒られるのに?」
A「...それ言わないでよ、折角忘れてたのに」
14:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:02:57.68 :
dMq3QRAJ0
B「... ... ...」
B「ピアノ、何時から?」
A「6時半。...それがどうしたの?」
B「早めに抜けれたら、その角、左に曲がろう」
A「... ... ... え?」
B「いつも、右に曲がって塾なんでしょ?だから、左」
A「... ... ...」
B「せっかく大嫌いな塾休むんだから。反対の左に行って、思い切り好きな事しよう」
A「... ... ...」
B「左はいいぞー。ちょっと歩けば駄菓子屋がある。懐かしのメタルスラッグも置いてあるんだ」
A「だがし、や...?」
15:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:04:06.29 :
dMq3QRAJ0
B「30円のジュース買って、ポテトフライ買って、つまみながらメタスラやるのが通のやり方なのだ。私がやり方を教えよう」
A「... ... ...」
B「なんなら隣のぷよぷよで対戦してもいい。好きな方を選ぶがよい」
A「... なん、で...」
B「私が正しい放課後の過ごし方を教えよう。 だから、嫌な事なんて忘れろ。一緒に、左に曲がろうじゃないか」
A「... ... ... !」
B「な?」
A「... ... ...」
A「...っく...!ひぐっ...! ありがと...!っ、ほん、とに...ありがとう...っ!!」
B「なぜ泣く。そんなにアーケードでぷよぷよがやれるのが嬉しいか」
A「うわあああーーーんっ!!」
16:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:05:20.27 :
dMq3QRAJ0
B「落ち着いたか」
A「...うん」
B「それじゃ、一緒に行くか。駄菓子屋」
A「... ... ...」
A「無事に抜けたら...行こうかな」
B「かな、じゃない。誓え、一緒に行くと」
A「あははは...わかった。行く。...行きたい。一緒にお菓子買って、ゲームして...あと雑貨屋さんとかも見たいな。可愛い小物とか、みてみたい」
B「いいだろう。付き合おう」
A「ホント!?絶対だよ! ...それなら、ピアノもサボっちゃおうかな!!あははは!!」
B「お、いい心がけだぞ」
A「その代わり、付き合ってね、夜まで」
B「ああ。それじゃ、指切りだ」
A「... うん! ... ... ...」
A「... ... ... え?」
A(私が指切りに差し出した腕の手首を、彼女はそっと引っ張った)
A(たったそれだけなのに、私の身体はいとも簡単に地面から抜け出してしまった)
17:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:06:36.64 :
dMq3QRAJ0
B「身体は従っても、心が従わない時がある。 そういうときはずっと縛り付けられたままになってしまう」
B「大事なのは、心も従わせる事。 簡単な事なのに、なかなかこれが出来ないヤツが多い」
B「... 死んでるヤツは、特に」
A(... え ...)
B「もう誰も見えないのに。誰も気にしないのに。 それに気づかないまま、何かに怯えて、動けなくなっちゃうヤツ」
B「...ずっと苦しむのは、辛いことだ」
B「面倒だから、私はあまり助けない、普段は」
A(... え、え ...)
B「2日前、聞いた。この道を走ってたトラックから落ちた鉄骨が運悪く、ウチの女生徒の上に落ちて、その子が死んだって」
A(... じゃあ、私 ... )
B「... 塾とピアノ、とっくに終わってたんだ。レスキューも、呼んでない。...嘘をついて、すまん」
A(... ... ...)
18:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:07:45.04 :
dMq3QRAJ0
・
・
・
A(私と彼女は、近くの河原に場所を変えていた。 夕日が沈む頃。私と彼女は、ずっとそれを見ていた)
B「さすがにもう泣き疲れたか」
A「あはは... 一生分泣いたって感じ。 ...一生、って、もう死んでるけどさ」
B「上手い。座布団一枚」
A「... ... ...。 なんか、すっきりした。...もうママに会えないのは寂しいけど...でも、すっきりしてる」
B「良かったな」
A「...でも、いざ自由になるとなにしていいか分からないもんだね。大体、死んでるんだし」
B「... ... ...」
A「ね、これから私、どうなるの?天国とか地獄とかこの後行くとか?あ、連れてかれる感じ?天使とかに」
B「さあ。私はそういう事は全く分からない」
B「ただ、見えるってだけ。こんなふうに会話をする事は少ないから、そういう事は分からない」
A「...そう。 なんかアンタも、色々苦労してそうだね」
B「... ... ...」
19:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:08:46.79 :
dMq3QRAJ0
A「... ねえ」
B「...?」
A「お迎えがくるかどうか分からないけどさ... くるまで、アンタの傍、いていい?」
B「... ... ...」
A「誰からも見えないし、誰からも気付かれないなんて...辛すぎるよ。 ...お願い」
B「... ... ...」
A「ちょっとの間だけでいいから... この世界のコト、わかるまで...。 ... ...」
B「... ... ...」
B「よし。まずは約束通り駄菓子屋から攻める。おばちゃんに頼めばまだ開けてくれるだろう」
A「...!!! い、いいの...?」
B「安心しろ。ポテトフライはお供えしておいてやろう」
A「... ... ... っく...ありがと...!ありがとう...っ...!!」
B「おいおい、そんなにポテトフライが嬉しいか」
A「...っ、違うわよ、バカ...っ...!」
20:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月07日(日) 20:09:34.05 :
dMq3QRAJ0
A(それが、私とBの生活の始まりだった)
A(死んだ私、Aと、死んだ人が見える、B)
A(奇妙な2人の、新しい生活)
A(死んだ世界の後に、なにが起こるかは分からない。でも)
A(とりあえず私は、死んだまま... 今でもこの世界に暮らせている)
A(どうなるかは、まだ分からない。お迎えの天使は、いまだに私のところにはやってこない)
A(でも...)
A(自由になって、吸い込んだ息は... いつもとは違う匂いがした)
35:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:48:49.36 :
oGJauVLC0
B「うーん」
店員「... ... ...」
B「うーん」
店員「... ... ...」
B「うーん」
店員「... ... ... あのー、そろそろ...」
B「よし決めた。のり弁2つで」
店員「...。(30分悩んでそれかよ...)」
B「あ、お箸二つでお願いします」
店員「はい、かしこまりましたー...」
36:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:49:58.14 :
oGJauVLC0
・
・
・
B「ただいま」
A「うがーーーっ」
B「... ... ...」
A「ああああーーーーっ」
B「... ... ...」
A「あああ... くそぉ、死んだ...。 ...あ、おかえり、B。いたの?」
B「随分賑やかだな」
A「まあね。やっと6までいったからね、バイオ。まさか一週間で1から6まで出来ると思わなかったわ。暇ってすごいわね」
B「ゲーム史に残る快挙かもしれないぞ」
A「しかし今のゲームってすごいわね。こんなに楽しいと思わなかったわ...」
A「でもQTEウザすぎ」
B「わかる」
37:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:50:43.21 :
oGJauVLC0
B「弁当、買って来たぞ」
A「あ、ありがと。置いといて。もうちょっとやったら食べるから」
B「相変わらず食べるんだな、弁当」
A「お腹は減らないんだけどね。味は分かるから。それだけで満足なの」
B「ふーん」
A「う、またイベント... あああ。QTEホントにやめてよ...!」
B「... ... ...」
A「ふぬうう...!」
B「... ... ...あ」
A「あああああ、また死んだあああっ!もうやだああああっ!!」
B「お疲れ。ついでにピアーズ最後に死ぬぞ」
A「なんでこのタイミングでネタバレすんのよアンタはああああーーーーっ!!!」
38:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:51:49.52 :
oGJauVLC0
・
・
・
B「ムシャムシャ」
A「ムシャムシャ」
A「...しっかしアレね。アンタの部屋便利ね。幽霊の私でも物に触れるんだもん。おかげで退屈しないで済むわ」
B「なんでだろうな。私に霊感があるからか」
A「あはは、見えない人から見るとどう見えるんだろうね」
B「テレビが勝手についてゲームが勝手に動いてクリスが勝手にQTEミスってる」
A「ポルターガイストってやつだね」
B「随分ゲーム下手なポルタ―ガイストだけどな」
A「あははは」
39:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:52:43.04 :
oGJauVLC0
A「ムシャムシャ」
B「... ... ...」
A「ガツガツ」
B「... ... ...」
A「... ... ... なによ」
B「働かないで食うメシは美味いか?」
A「しょうがないでしょ、幽霊なんだから。どう働けってのよ」
B「仕方ないな」
A「ちゃんと感謝してるわよ。ありがとね」
B「... ... ...」
40:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:53:43.41 :
oGJauVLC0
B「... ... ...」
A「... ごちそうさまでした」
B「... ... ...」
A「なによ、まだ何か言いたいの?」
B「私、こんな感情初めてかもしれない」
A「え」
B「家族、いなかったから。ずっと。 だから、なんだかうれしい」
A「な、なによ、いきなり...!照れるじゃない...!」
B「きっと、こういう感じなんだろうな」
A「... ... ... 家族が?」
B「ううん、ペットの犬にご飯あげる感じって」
A「うがああああああああ」
41:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:54:51.87 :
oGJauVLC0
A「... そもそも、アンタ、家族いないの?」
B「いる」
A「どこに」
B「別居中」
A「なんでよ。一緒に住めばいいじゃない」
B「あっちが拒否してる。仕送りは貰ってるし、住む理由がない」
A「拒否?なんで... アンタ、娘なんでしょ?」
B「うん」
A「だったらなんで別居なんて...」
B「気味悪がってる。 見えるって知ってるから」
A「... ... ...」
A「ごめん」
B「気にするな」
42:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:56:11.83 :
oGJauVLC0
B「のり弁、あんまり美味くなかったな。今度はいつも通り唐揚げ弁当にしよう」
A「料理とかしないの?」
B「しない」
A「... アンタ、普段何食べてるのよ」
B「唐揚げ弁当」
A「それだけ!?そのうち絶対に身体壊すわよ!?」
B「とりあえず今の所大丈夫だし、ヘーキヘーキ」
A「今は平気でも絶対後でどうかするわよ...。よく今まで大丈夫だったわね」
B「身体は丈夫にできている。いいだろ、幽霊」
A「...どういう精神構造してんのよアンタは...」
43:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:57:06.27 :
oGJauVLC0
A「... ... ...」
A「よし決めた。明日から私が料理作るわ」
B「え」
A「そうと決まれば買い出し行くわよ。まだスーパー開いてるでしょ。明日の朝食から三食、しっかり栄養あるものとってもらうわ」
B「マジか」
A「さ、行くわよ。何買うか私が言ってあげるから、一緒にスーパー行くわよ」
B「... ... ...」
A「... なによ、その人を疑うような目は」
B「トカゲのスープとかカエルの丸焼きとかじゃないだろうな」
A「アンタはどういう目でアタシを見てるのよ!! これでも生きてる頃は週一で料理教室行ってたんだからね」
B「それはそれは。美味そうなトカゲのスープが飲めそうだ」
A「... 絶対見返してやる絶対見返してやる絶対見返してやる...!」
44:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 20:59:10.31 :
oGJauVLC0
・
・
・
店員「ありがとうございましたーっ」
B「しかしまた、えらい量買ったな」
A「しょうがないでしょ。アンタの家の冷蔵庫、ジュースと甘い物以外何も入ってなかったんだから、買う物も増えるわよ」
B「重い」
A「がんばりなさい。アタシは持てないんだからね」
B「ふええ」
A「... ... ...」スタスタ
B「... ... ...」スタスタ
A「こうして外歩いててもさ、なかなかいないもんね」
B「ん?」
A「幽霊。 アタシと同じような人、さ」
45:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:00:18.46 :
oGJauVLC0
B「そりゃあそうだ」
A「なんでよ。死んでる人なんて一日に何人もいるでしょ」
B「そいつらが全員幽霊になってたら今頃は日本全土が幽霊の満員電車だ」
A「... それもそうか」
B「たぶん、幽霊になるヤツは限られてる」
B「この世に強い未練があって」
B「それを残した形で死んでるヤツ」
B「だから、Aも幽霊になった」
A「... ... ...」
46:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:01:26.38 :
oGJauVLC0
B「それでも、大体は勝手に消えていくものなんだ」
A「え、そうなの?」
B「気付くんだろうな、途中で。自分が死んでるって」
B「そしてそれに気づいた段階で、大抵の未練なんてものは消えてしまうんだろう」
A「... ... ...」
A「それもそうか」
B「それでもこの世に残るヤツは、ヤバいヤツだ」
A「ヤバい?」
B「悪霊とか怨霊とか呼ばれるヤツになっちゃうから。そういうヤツを見かけたら、近づかない方がいい」
B「見えると分かった瞬間、人間だろうが幽霊だろうが、関係なくなるからな」
A「... ... ...」
A「あったの?危ない事」
B「多少」
47:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:02:46.63 :
oGJauVLC0
B「まあそんなわけで、野良猫みたいに幽霊がその辺で昼寝してる事なんて滅多にない事だ」
B「ましてAみたいに地面に埋まったまま自分が幽霊と気付かない呑気なヤツなんて初めて見たわけで」
B「正直、感動したよ」
A「えらく小馬鹿にした感動の仕方だね」
B「こんな風に幽霊と雑談しながら買い物来る日がくるなんて思わなかったし」
B「さらにその幽霊を養うハメになるなんて、泣けるぜ」
A「うるさいわねーっ!!アタシだって好きで居るワケじゃないわよ!!」
B「じゃあ、なんで居るんだ」
A「... ... ... う」
B「いつでも出て行っていいんだぞ」
A「うううううう」
A「バイオの続きやりたい...」
B「理由それだけかよ」
48:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:03:33.55 :
oGJauVLC0
A「... ... ...」
A「... ... ... あ」
B「どした」
A「さっき、言ってたわよね。幽霊なんてそこらへんにゴロゴロいるわけじゃない、って」
B「ああ」
A「...あれって、幽霊よね」
B「... ... ...」
B「ああ、間違いないな」
B「あんな風に電信柱に全身が埋まっているオッサンはまず、この世にはいないだろうな」
オッサン「... あ?」
49:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:04:58.85 :
oGJauVLC0
オッサン「なんだ、このガキ...。 ...んん?なんじゃこら。 ...おお?なんだこれ、動けねーぞ」
A「しかも今気付いたみたい」
オッサン「くそ、なんだ...電信柱かこりゃ...。 おい!そこのガキ!なんだかわからねーがすぐ助けろ!おい、こら!」
A「... どうする?助けてあげる?」
B「帰るぞ」
A「え」
B「見えないフリをすればあっちも諦める。とっとと行くぞ」
オッサン「おいコラ!無視すんな!おーい!!」
A「でも、かわいそうだよ」
B「... ... ...」
B「基本的には無視しろ。さっきも言ったが、そうすれば自然に消えるものだ」
A「でも」
オッサン「くぬうう...!!くそぉ、どうやっても出られねぇぇ...!! おい、ホントに...!!助けてくれよ!なあ!」
B「... ... ...」
50:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:06:25.83 :
oGJauVLC0
B「野良猫より少ないとは言ったが、それでも居るところには居るものだ」
B「そいつら全員にいちいち対処していたらキリがない事くらいわかるだろう」
A「... ... ...」
B「行くぞ」
オッサン「くそ...!なんでこんな事に...! 俺、一体どうしちまったんだよ...!!」
A「... ... ...」
B「置いていくぞ」
A「... ... ...」
A「ほっとけないよ、やっぱり」
A「オジサン!大丈夫!?今助けてあげるからね!」
オッサン「おお、なんだ嬢ちゃん。助けてくれるのか」
B「... ... ...」
B「はあ...」
B「案ずるなオッサン」
オッサン「誰がオッサンだこらぁ!!」
51:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:07:19.86 :
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A「B、ありがと」
B「うるせーやい」
オッサン「なあ、俺今どうなってるんだよ。まるで身動きできねぇ」
B「電信柱に埋まってて動けなくなってるからな」
オッサン「アホか!どうなったらコンクリートの柱に全身が埋まるんだ!!んなわけあるか!!」
B「実際にそうなってるのが分からんか」
A「ねえB。これ、どうやったら出れるの?」
オッサン「いいから110番でも119番でも電話して、助け呼んできてくれ!お前らじゃどうにもならんだろ!」
A「少なくともそれよりは私達の方が助けになるかもよ」
オッサン「ああ?」
B「基本的にこうなってるのは、Aの時と同じだ」
52:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:08:08.83 :
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A「私と同じ?」
B「何らかの理由で死んで魂はそこに残る。死ぬ間際の目的や行動に矛盾が生じている場合、そこから動けなくなる事が多い」
A「矛盾?」
B「行きたくない場所に行く時。やりたくない事をやろうとする時。身体は従っていても、心が従っていない場合だ」
B「身体を失って心だけの状態になるんだから、当然心が優先される。だからその場から動けなくなってそこに留まる事になってしまう」
B「このエレクトリックファンキーアンクルのようにな」
オッサン「勝手にあだ名つけんじゃねえ!!」
オッサン「大体さっきから何の話してるんだ!!死んだだの魂だの...俺が死んだとでも言いてぇのか!!」
A「正直に言う?」
B「そうだな」
A「...だってさ。オジサン、死んでるのよ」
オッサン「ふざけるんじゃねえええ!!!」
53:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:09:16.08 :
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オッサン「テレビの観過ぎだドアホ!俺が死んだだとぉ!?んな馬鹿な事起きてたまるか!」
A「実際に電柱に埋まってるんだから、その馬鹿な事が起きてるんだよねぇ」
オッサン「電柱に埋まってたら俺が死んだ事になるのか!」
B「死んでなきゃ身体がそんな事にならんしな」
A「かわいそうだけど、まずは受け入れないとね」
オッサン「くそ...お前らじゃ話にならん!とにかくここから出せ!!」
A「とは言ってもね...。ねえ、B、どうやったらここから出せるの?」
B「Aの時と同じ。この場所に留まっている理由を見つけて解いてやる感じ」
A「...うーん」
オッサン「ごちゃごちゃ言ってねェで早くだせえええええッ!!!」
A「難しいねこりゃ」
B「だな」
54:
◆だいやまーくl3y7Z.NoQU:2015年06月09日(火) 21:10:19.56 :
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B「ほっといて帰れば自然に消えてるもんだ。行くぞ」
A「でも...」
オッサン「あ、なんだお前!?俺をほっといて帰るつもりか!?ならせめて助け呼んでこい!」
A「だから、呼んでも無駄なんだってば。オジサンの心の問題なの。分かってよ」
B「おい、帰るぞA」
A「ね、オジサン、話だけでも聞かせてよ。そしたらすぐに助け呼んできてあげるからさ」
A「レスキューとか呼ぶにしても、現場の詳しい状況が分からないとダメでしょ?」
B「おい」
A「お願い、オジサン。私、助けたいよ」
オッサン「... ... ...」
オッサン「分かったよ。ただ、どう話せってんだよ」
A「良かった!ねぇ、B。聞いてあげてよ」
B「... はぁ」
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