2025年8月
国際ワークショップ
2025年8月22日 (金) 投稿者: メディア社会コース
ドイツで国際ワークショップに出席しています。
今週の最初に卒業論文の発表のお話をしましたが、学生さんが分析をするときに
私も指導するために分析を一緒にしています。具体的には、ビデオデータを見るときに一緒に
みて発見をしています。その積み重ねで国際ワークショップや学会、雑誌に発表ができるようになっています。
今回は、イギリス、ドイツ、デンマークの研究者と日本の第一線の研究者が意見を交換し、とても意味のある
ワークショップとなりました。学生さんの教育と私の研究は連動していますし、学生さんに熱心に指導することが
私の研究を支えていることが改めてわかりました。これからも頑張りたいと思います。
ドイツ(1)
2025年8月20日 (水) 投稿者: メディア社会コース
卒業論文の発表の後、私はドイツのワークショップで発表をするために、準備をしておりました。
一つは、ミュージアムでの観賞についてです。
助教の陳先生と一緒に発表するために、今までの学生さんと分析していたデータを見返しました。
ドイツでは評判が良く、これから論文の準備を進めたいと思っております。
山崎晶子
卒業論文前期発表
2025年8月18日 (月) 投稿者: メディア社会コース
前期はいろいろなことがありましたが、卒業論文を書いている
4年生は様々なテーマで論文を書いてくれました。新しい場所を見つける過程を発見する学生さんなど自分では思いつかないことを
書く学生さんを見るとうれしくなります。
最近は、SNSやゲームなどについて書く学生さんも増えてきました。
後期はもっと論文を書くことに集中して行きたいと思います。
山崎晶子
赤青眼鏡(アナグリフ)の話
2025年8月15日 (金) 投稿者: メディア技術コース
1年生の前期にある"視聴覚情報処理"という授業の中で"立体視"の話をする機会があった。
人間の視覚は結構いい加減で、左右の目に入る映像のズレを人工的に作ることでいわゆる"立体を見ている"という感覚を騙して作り出すことができる。これがいわゆる"立体視"というもので、対象までの距離が変わらない平面にもかかわらず、奥行きの間隔が生じる。
この原理で左右に"視差"を考慮した画像を見せて立体風に見せる技術は結構古く、写真が発明されてからちょっとしたおもちゃで実現されていた(1860年代にはすでにあったとか)。
映画の歴史的にもこの"立体視"を利用した作品は目新しさも手伝って、1950年代、1980年代、2010年代あたりの30年周期でいわゆるブームが起きている。虎が襲ってきたり、モリが突き出たり、ギロチンがこちらに飛んでくるなど、特殊効果の臨場感的な目新しさもあるが、特に1950年代だと、当時のスター俳優が立体で見られるのが、全般的な映画ファンとしてはなんともありがたい(例えば、「ダイヤルMを廻せ!(1954)」のグレース・ケリーや、「キス・ミー・ケイト(1953)」のアン・ミラーの華麗なタップダンスなど、動く様を立体で見ることが出来る。)
さて、安価な立体視の装置として、アナグリフという技術がある。年齢が上の方ならなじみがあるかもしれないが、いわゆる赤青のフィルターを左右に入れたメガネである。
左右の赤青のフィルターを通して両目に視差を伴う違う映像が入ることで、見ているものを立体に感じる仕組みだが、筆者が子供の頃は安易に作れるため、雑誌の付録などによく付いていた。"高級な"劇場の立体映画はもっぱら偏光板で左右の目の映像を切り替えるものが多いが(その分設備が必要)、赤青というのは眼鏡を配ればよいだけなので、特別な設備は必要ない。ただし見ていて疲れやすいので、"お手軽"さを前面に出した売り方も多い印象だった。(一部、映画では赤青眼鏡方式の3Dを使った劇場用映画として、ロバート・ロドリゲス監督の2000年代の「スパイキッズ3ーD:ゲームオーバー(2003)」「シャークボーイ&マグマガール 3-D(2005)」あたりはあります。もっと古くには「飛びだす冒険映画 赤影(1969)」のような"東映まんがまつり"的なプログラムの中の作品もあり)。
なお、映画館の観客席にギミックを持ち込んだウィリアム・キャッスルの「13ゴースト(1960)」などのように、観客に赤青のセロハンフィルターを配り、"どちらを通してスクリーンを見るか"で、見える映像が変わる、という立体視以外の使い方がされた例もあるようです("イリュージョン・オー"とか名付けた手法だそうな)。
さて、赤青眼鏡の映像は左右の目に入る映像の色をそれぞれの色(赤フィルタ:左目で青色の画像が見え、青フィルタ:右目で赤色の画像が見える)にすればよいので比較的簡単に(安価に)制作できる。
実際の画像例をこのページに載せておくので、興味がある人は眼鏡を作って試してみると良い。下の映像は単純に赤青二つの立方体の間隔を変えたGIF動画である(クリックで動くかも)。
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この画像、赤青眼鏡をかけずに見ていると単純だが、眼鏡をかけて試してみると画面の中にひとつの立方体が浮かぶような感覚が生じる。ただ、観察するともう一つの効果に気が付く。つまり、立体視をしている時の感覚として、同じ大きさのものが手前に来る場合と、奥に来る場合で、その大きさの実感が(画面上の大きさは変わらないにもかかわらず)変わるのだ。奥に行くほど立方体を大きく感じ、手前に来るほど立方体が小さく感じる効果が生じる。この現象はつまり、脳内で遠くにあるものほど"実際の大きさは大きく"近くにあるものほど"実際の大きさは小さい"という自動判定がなされていることに起因する。まあ、自然界ではその推論は当たり前なのだが、"騙された"視覚体験の後に、眼鏡をはずしてスクリーンに投影されているだけの2次元の映像を見るとなんとも奇妙な感覚になる。
(以上文責 「視聴覚情報処理の基礎」担当 永田)
★8/17は東京工科大学のオープンキャンパスに行こう!★2025年8/3レポート★その4(メディア学部藤崎実)
2025年8月14日 (木) 投稿者: メディア社会コース
みなさん、メディア学部の藤崎実です。
2025年8月3日(日)に、蒲田キャンパスで夏のオープンキャンパスが開催されました。
このブログでは、主に「東京ゲームショーに出展したゲームの体験コーナー」や「個別相談の様子」などをレポートしますね!
写真をたくさん掲載しますので、当日の雰囲気がよくわかると思います!
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学生たちが、自分たちで作ったゲームの説明をしてくれました!
東京工科大学では実際に自分でゲームを作る教育を行なっています!
ゲーム制作に青春を燃やすって、かっこいいですよね!
多くの来場者が体験してくれました!
会場は大盛況でした!
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大学進学に対する個別相談コーナーも大盛況でした。
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どんなことでも相談してくださいね。教員たちが丁寧に解説します!
入学希望者にとっては不安がたくさんあると思います。それらを1つずつ解決すると良いと思いますよ。
もちろん、在学生もみなさんの相談に乗ります!
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オープンキャンパスでは入試の説明会も開いています!
どんなことでも相談してくださいね!
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蒲田キャンパスは眺望もすごいですね!
#オープンキャンパス #東京工科大学 #メディア学部 #メディア #大学 #八王子 #TUT
★★
次回のオープンキャンパスも蒲田キャンパスで、8/17(日)に開催します!
実際にご自身の目で見て、いろいろ体験してくださいね。
★お申込みは、こちらまで!
★当日は2部制(午前コース10:00-12:30、午後コース13:00-15:30 )です
★8/17のプログラムはこちらです!
8/17(日)蒲田キャンパスでお待ちしています。
きっと新しい発見がたくさんあります。
どうぞご来場ください!
(メディア学部 藤崎実)
★ゲームキャラクターのAIについての体験講義★東京工科大学2025年8/3オープンキャンパスレポート★その3(メディア学部藤崎実)
2025年8月13日 (水) 投稿者: メディア社会コース
みなさん、メディア学部の藤崎実です。
2025年8月3日(日)に、夏のオープンキャンパスが蒲田キャンパスで開催されました。
当日は学部説明会はもちろん、体験講義、個別相談、東京ゲームショーに出展したゲームの体験コーナーなど、多くのイベントが開催されました。このブログでは体験講義の様子をレポートします。
当日の雰囲気がよくわかると思います!
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メディア学部の渡辺大地先生による体験講義が始まりました!
タイトルは「ゲームキャラクターのAIについてお話しします」という内容です!
興味深いお話が続きます!初期ゲームのAIは「パックマン」(1980)だったのですね!
なるほど!
みなさん大変興味深く、聞き入っています!
確かにおもしろい内容です!
体験講義は午前と午後に行われ、どちらも大盛況でした。
ありがとうございます!
在校生もみなさんをお待ちしています!
#オープンキャンパス #東京工科大学 #メディア学部 #メディア #大学 #八王子 #TUT
★★
さて!次回のオープンキャンパスも蒲田キャンパスで、8/17(日)に開催します!
ぜひともお越しいただき、実際にご自身の目で見て、いろいろ体験してくださいね。
オープンキャンパスでは、実際の先生や大学生から、直接いろいろなお話を聞ける点がメリットです。
★お申込みは、こちらまで!
★当日は2部制(午前コース10:00-12:30、午後コース13:00-15:30 )です
★8/17のプログラムはこちらです!
では、8/17(日)蒲田キャンパスでお待ちしています。
きっと、わくわくした体験ができると思います!
(メディア学部 藤崎実)
オーストラリアで行われた19th International Pragmatics Conferenceに参加してきました
2025年8月13日 (水) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の榎本です。
6月のことですが、オーストラリアで行われた19th International Pragmatics Conferenceに参加してきました。
International Pragmatics Association(通称 IPrA)という学会が主催する国際学会です。
IPrAは、言語とコミュニケーションに関する機能的(すなわち、認知的・社会的・文化的)視点として、「言語使用の科学」である語用論の分野を代表しています。会の趣旨は以下です。
言語使用や言語の機能性に関わる研究者が行う、様々な学問分野における基礎研究の成果について、国際的な枠組みの中で議論・比較する場を提供すること。
言語教育、異文化・国際コミュニケーションの問題研究、言語障害を持つ患者の治療、コンピュータ通信システムの開発など、多様な応用分野を刺激すること。
語用論的な言語の側面に関する知識を、異なる立場の語用論研究者や言語研究者のみならず、原則として言語使用の問題についてより深い洞察を持つことで個人的または専門的に利益を得られるすべての人々に広めること。
今回は広島大学の名塩征史先生にお誘いを受けて、以下のセッションで発表をさせていただきました。
Making "experts’ inner sense" accessible to learners: Multimodal analysis of interactions in instruction in practical skills (「熟練者の内的感覚」を学習者に開示する: 実践的技能指導における相互行為のマルチモーダル分析)
これは、武道や、茶道・書道・能といった文化活動(日本語で「芸道」と総称される)における指導において、動作の形や型だけでなく、熟達者の「内的感覚」を学習者に体感させるためにどのような工夫がされているかということを研究するという主旨です。
私が発表したのは、When Other's Words Make Sense: Analyzing The Experiences of A Swimming Novice(「他者の言葉が分かるとき」――水泳初心者の経験分析)というタイトルで、以下のような内容です。
水泳の学習者が物理的世界の中で、自身の身体と物理世界とのインタラクションを通して、コーチの言葉が意味するところを体得する過程を分析する。「力を抜いて」という表現を例にしよう。水を掻いたり蹴ったりするためには、力がいる。一方で、身体が緊張状態にあると身体は水に沈んでいく。この矛盾する動きは初心者には難しい。それができるようになっていく過程は、手のひらに「水が吸い付いて」、その水の塊を「バランスボール」のように抱え込み、自身の身体をそのボールの「上へ持ち上げて」いくというコーチのメタファーが、体感とし一つずつ手足で感じられるという段階を踏むことである。これら一つ一つの段階を指導者は身体部位の動きだけではなく、その動きから得られるべき身体感覚のメタファーによって伝える。しかし、学習者はメタファーだけでは身体感覚を実現できないというジレンマがある。本研究では、筆者が全くの素人として水泳を始めた2018年から、選手として水泳大会に出場している2024年度にかけて学んできた具体例を分析する。そして、身体感覚として表現されたコーチが伝えたい技法を、学習者が水とのインタラクションの中で掴んでいく過程を明らかにする。
コアラとカンガルーと狼も見たよ。
★東京工科大学でメディア学を学ぼう!★2025年8/3オープンキャンパスレポート★その2(メディア学部藤崎実)
2025年8月12日 (火) 投稿者: メディア社会コース
みなさん、メディア学部の藤崎実です。
2025年8月3日(日)に、夏のオープンキャンパスが開催されました。
今回は、諸事情により蒲田キャンパスでの開催となりました。
当日は学部説明会はもちろん、体験講義、個別相談、東京ゲームショーに出展したゲームの体験コーナーなど、多くのイベントが開催されました。
このブログでは、学部説明会の様子をレポートしますね!
写真をたくさん掲載しますので、当日の雰囲気がよくわかると思います!
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メディア学部の三上浩司学部長から、メディア学部についてのお話が始まりました!
まず東京工科大学が掲げる「AI University」のお話がありました!
多くの親子が熱心に耳を傾けてくださいました。ありがとうございます!
メディア学を学ぶことは、現代に必要なコミュニケーションを学ぶことです!
在学生も、みなさんの来場をお待ちしています!
オープンキャンパスでは、資料も豊富に用意していますので、いろいろ持ち帰ってくださいね。
#オープンキャンパス #東京工科大学 #メディア学部 #メディア #大学 #八王子 #TUT
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次回のオープンキャンパスも蒲田キャンパスにて、8/17(日)に開催します!
オープンキャンパスでは、実際に大学で学んでいる大学生たちから、直接いろいろなお話を聞ける点がメリットです。
少しでも興味のある人はぜひともお越しいただき、実際にご自身の目で見て、いろいろ体験してくださいね。
★お申込みは、こちらまで!
★当日は2部制(午前コース10:00-12:30、午後コース13:00-15:30 )です
★8/17のプログラムはこちらです!
では、8/17(日)蒲田キャンパスでお待ちしています。
きっと、楽しい体験ができます!
(メディア学部 藤崎実)
★AI Universityをめざす東京工科大学★2025年8/3オープンキャンパスレポート★その1(メディア学部藤崎実)
2025年8月11日 (月) 投稿者: メディア社会コース
みなさん、メディア学部の藤崎実です。
2025年8月3日(日)に、夏のオープンキャンパスが開催されました。
今回は、いろいろな事情により蒲田キャンパスでの開催となりました。
当日は大学案内や学部説明会はもちろん、体験講義、個別相談、東京ゲームショーに出展したゲームの体験コーナーなど、多くのイベントが開催されました。
そこで、いくつかのレポートをこのブログで連載します。
写真をふんだんに掲載しますので、当日の雰囲気がよくわかると思います!
蒲田キャンパスは駅から近く、とてもきれいなキャンパスです!
さっそく、学生たちが迎えてくれました!
では、メディア学部の説明会に行ってみましょう!
多くの親子が参加してくださっています。オープンキャンパスでは、教職員一同がみなさんをお迎えします!
最初に東京工科大学の香川豊学長から大学についてのお話がありました!
数字で見る東京工科大学には、いろいろな発見がありますね!
東京工科大学は「AI Universityをめざす」というお話がありました!
多くの親子が真剣に耳を傾けてくださいました。ありがとうございます!
オープンキャンパスでは、資料も豊富に用意していますので、いろいろ持ち帰ってくださいね。
#オープンキャンパス #東京工科大学 #メディア学部 #メディア #大学 #八王子 #TUT
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次回のオープンキャンパスも蒲田キャンパスにて、8/17(日)に開催します!
オープンキャンパスでは、実際に大学で学んでいる大学生たちから、直接いろいろなお話を聞ける点がメリットです。
少しでも興味のある人はぜひともお越しいただき、実際にご自身の目で見て、いろいろ体験してくださいね。
★お申込みは、こちらまで!
★当日は2部制(午前コース10:00-12:30、午後コース13:00-15:30 )です
★8/17のプログラムはこちらです!
では、8/17(日)蒲田キャンパスでお待ちしています。
きっと、楽しい体験になることと思いますよ!
(メディア学部 藤崎実)
消えていくゲームを未来に残す(2)
2025年8月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース
こんにちは。メディア技術コースの羽田です。
今回も前回に続き、「ゲームをどうやって保存するか」というテーマでお話しします。
前回は「現物がないゲームをどう残すのか?」という問題を取り上げました。
昔のゲームソフトはカセットやディスクの形で手元に残りましたが、今では ダウンロード専用 のタイトルや、 サーバがなくなると遊べないソーシャルゲーム がたくさんあります。たとえば、スマホにダウンロードしたゲームは、その端末を大事に残せば保存できます。でも、そのスマホが壊れたら? もう二度と遊べなくなってしまうのです。だからこそ、研究機関や博物館では「古い端末をあえてアップデートせずに保存する」などの工夫をしています。
私たちの研究室では、ゲームを保存する方法のひとつとして ゲーム動画を記録する ことに注目しています。
今ではYouTubeなどで「ゲーム実況動画」が人気ですよね。でも実は、YouTubeのようなサービスがいつまで続くかはわかりませんし、人気のゲームは実況動画が大量にあっても、マイナーなゲームはほとんど記録されていないこともあります。
そこで私たちは、自分たちで実際にゲームを遊びながら、その映像を記録しています。さらに「どんな動画なら、将来の人たちにそのゲームの面白さを伝えられるのか?」ということも研究しています。
特にスマホゲームには「位置情報」を使った作品が多くあります。ポケモンGOのように、現実の場所を歩いて遊ぶタイプです。こういうゲームは、画面の映像だけでは体験の魅力を伝えきれません。そこで今後は「プレイヤーが遊んでいる姿」や「その場所の風景」も一緒に撮影することを考えています。つまり、ゲームをやっている人の「雰囲気」ごと記録して残そう、という試みです。
とはいえ今はまず「動画を収録する」ことに取り組んでいます。最終的には、それらの動画を解析して「どんな記録があれば、未来の人にゲームを伝えられるのか」という指針を見つけることが目標です。次回は、その動画解析の研究について紹介できればと思っています。どうぞ楽しみにしていてください。
(羽田久一)
「上らせない」より「上らせる」工夫を探す
2025年8月 8日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
2025 本当に今年は猛暑です。
特任准教授の安原です。
昨日のエスカレーターのアイデアの回答例はどれもユニークな視点を持っていて、おもしろいと感じました。私たちの回りには、「正解のない問題」が数多く存在します。そんなとき、単に感覚に頼るのではなく、「アフォーダンス」という視点や発想の道具を持つことで、人の行動を促す形、デザインとは何かを考える手がかりになります。
では、次にヒトが「上る」ことを思いつかない、「歩き」たくならないエスカレーターとはどういうものだろう?と考えてみましょう。
実際、「乗りたくない」と感じるエスカレーターは存在します。その一つは上り、下りの距離が長いエスカレーターです。東京都心にある、深い地下から見上げるくらい長いエスカレーターは、日頃から登山で鍛えている人ならともかく、多くの人にとっては歩いて上ることは避けたくなる存在です。
そしてまた、単純に幅が狭いエスカレーターもそうかもしれません。物理的にすれ違えないほど狭ければ、混雑しているときに「歩く」ことを防止できますが、この狭さという点がヒトの効率的な移動を阻害してしまいます。狭いエスカレーターしかない狭い駅のホームでは常に長い人の列ができていますから、通勤時間帯の混雑したホームでの事故を誘発する原因となるでしょう。
結局のところ、エスカレーターは深度のある場所での移動には適していても、必ずしも万能ではありません。人の身体的感覚に沿った「上れる」と感じる距離や設計を超えるとき、従来の「階段」と併用することが望ましいと思います。
では、ヒトが自ら進んで上りたくなる「階段」とは、どのようなものでしょうか。
有名なものは「Fun Theory」として紹介されたピアノを模した音の出る階段があります。各ステップを踏むと音が鳴るため、ヒトは音とともにリズミカルにたのしく「上る」体験が得られます。インタラクティブ性がヒトの行動を変容させる良い例です。
今なら、「上ると「ポイント」が貯まる階段!」、という健康アプリの活用などがすぐに思い浮かびます。今までは可視化されなかった個々人の日常生活の活動を「定量化」することがスマホの普及によって容易になりました。すでに万歩計でポイントが貯まるサービスなどがありますから、同じように駅の店舗で貯めたポイントが使える施策をすれば、「階段」を使うヒトも増えて、個人の健康だけでなく、ひいてはホームでの安全にも寄与できるかも、とメディアコンテンツ研究への可能性が膨らみます。
しかし、毎日これだけ暑いと「階段」を上るのも少し身体には危険なことかもしれませんので、みなさんくれぐれもご自愛を。
アフォーダンスをアイデアに
2025年8月 5日 (火) 投稿者: メディアコンテンツコース
2025 相変わらずの猛暑です。
特任准教授の安原です。
昨日のエスカレーターのアイデア問題はいかがだったでしょうか?
学生から、様々なアイデアが寄せられて、とてもたのしかったです。
多かったのは、片側を上ると「警告表示」が出る、というものでした。
子どもの頃から、「してはいけない」という倫理観が身についている学生はルールを守る意識が高い傾向にある気がします。でも、これでは、ルールを守らないヒトたちには対処できませんね。
そして、その「警告」のアイデアでは、モノの自然の形状と、そこにヒトが見出す役割の関係性を意味するアフォーダンスとは違う、社会的規範を利用するソリューションになってます。
エスカレーターのステップにトゲを生やしてヒトが立てないようにする、というアイデアもありました。
危ないと感じるものを置くのは直感的ですが、それでは多くの人を安全に運搬するエスカレーターの役目が弱くなりますね。
数名の学生が、ステップに靴の足跡や矢印を描いて、立つべき位置の「目印」にする、というアイデアを出してくれました。これはヒトは自分の靴を「目印」の上に重ねあわせたくなる性分を利用するもので、実際に多くの実在するエスカレーターに使われているアイデアです。ヒトに立つべき位置を教えてあげることで、子供のサンダル巻き込み事故などを予防する意味もあります。しかし、これではまだ、片側に立つ習慣を止めるためのアイデアとして十分とは言えません。
ヒトが乗るステップに「傾斜」を付ける、というアイデアがありました。とてもユニークです。これはステップに立ちづらい、そして歩いて上りづらいエスカレーターですね。しっかりベルトに掴まってないと転んでしまう人も出てきます。後ろに傾斜を付けるとひっくり返るヒトが出そうだし、前に傾斜を付けると、降りる時につんのめってしまいそうです。転倒事故を招いてしまうことが明確なので、実際に作ることはできないアイデアですが、モノの形状で、「上る」ことを止めさせるには「警告」を出すより、「上りづらい」と思わせるには効果的かもしれません。
アイデアの一つに、ものすごく急勾配で手すりにがっちり掴まっていないと滑り落ちてしまう、というものがありました。これも架空の世界では漫画のようですが、おもしろい発想だと思います。
・・続きます
アフォーダンスで考えてみよう
2025年8月 3日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
2025 猛暑の夏です
特任准教授の安原です。
毎年拙研究室を「卒業研究」を行う場所として希望してくれる学生が多く、興味を持っていただけることにとても感謝しています。
自分の主催する研究室は「インタラクティブコンテンツデザイン」というテーマを掲げる、ヒトとデジタルメディアのより良いコミュニケーションを探求し、そのアイデアを実際に設計して組み上げて、社会生活を少し便利にするための場所です。
情報工学的な知識と認知科学的な知識をベースにして、ハードやソフトの設計(デザイン)と実装を行います。
「アフォーダンス」というデザインの分野では必ず使われる言葉があります。
アメリカの心理学者 ジェームス・ギブソンによって提唱された言葉で、環境や周囲のモノや物質が、意図せずにヒトや動物にaffordしている形状や性質のことです。例えば森の中でちょうど良い高さの切り株を見つければ、ヒトは「座れる」と感じますし、または、何かを「置く」ことができると感じたりします。そのような行為の関係性が存在していることを、この切り株は「座る」というアフォーダンスがある、とか、この切り株は「置く」という行為をアフォードしている、と言います。
例えば、階段のような形状のものは、ヒトが「上る」アフォーダンスがある、と言えるでしょう。
ビデオゲームの世界でも、プレイヤーに登らせたい場所には階段状になるように、モノをセットして、上ってほしいことをアピールするわけです。
さて、話はここからなのですが、今年のゼミ募集の説明会に参加した学生たちに次のような問いかけをしました。
「エスカレーターの片側を空ける習慣が日本だけではなく世界にあります。片側空けはかつては急ぐ人のためのマナーのために定着した経緯があります。この習慣のため、エスカレーターの片側だけに負荷がかかり、エスカレーターの機械の寿命を下げてしまうという問題が起きています。そして現在は、急ぐ人はその空いたステップを歩いて上ったり下ったりして、危険だと指摘され始めたことで、特に駅のエスカレーターでは歩いてはいけないマナーが推奨されています。
では、どうすればこのエスカレーターの「歩く」問題を解決できるでしょう?このような問題の解決を真剣に考えることが好きなら、この研究室はたぶん、皆さんにあっています。実際には使えなくても構わないので、架空の世界のエスカレーターの形状を考えみてください。」 というものです。
これに良いアイデアを出した学生を、ゼミ生に採用するわけではないのですが、普段あまり気づかずに過ごしている社会インフラの問題や潜在的な課題に目を向けてもらう意図での問いかけでした。
ヒントは、「上る」アフォーダンスがある限り、ヒトは上ってしまうものだ、ということです。
考えてみると存外にたのしいと思います。 寄せられたアイデアはまた次回にお披露目しようと思います。
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そもそも、オーラキャストって何?
2025年8月 1日 (金) 投稿者: メディア社会コース
オーラキャストは、Bluetoothの新しい機能で、音声や音楽を多くの人に同時に届けることができる技術です。これまでのBluetoothは1対1の通信が基本でしたが、オーラキャストではペアリングなしで、複数の人が同じ音をスマートフォンや補聴器、ワイヤレスイヤホンで受け取ることができます。たとえば、駅のアナウンスや学校の授業、映画館などで使われ、聞こえにくい人や騒がしい場所でもはっきりと音を聞くことができます。公共の場での情報伝達がより便利で、誰にとってもやさしい社会の実現に役立つ技術です。
前回のブログで書いた通り、このオーラキャストとWi-Fiを用いた音声配信システムを導入し、聴覚障害者にもアナウンスなどの声や音が届く社会基盤の実現を目指します。最新の補聴器や人工内耳にはオーラキャストが搭載されていますが、まだ社会で実装されていないのでその機能はオンになっていません。今後、鉄道・空港・公共施設・ホール・スタジアム・映画館・学校・病院などに導入が進むことで、その威力を発揮することになるでしょう。
実は、この仕組みにより聞こえる人々も便利になります。
・雑音の多い場所でも、ワイヤレスイヤフォンなどでアナウンスの声が聞こえる
・多言語放送により、日本語以外の言語の観光客などに放送を流すことができる
・大きな音が出せない場所でも、ワイヤレス送信することで音楽イベントを開催することができる
・そのエリアだけの小さなラジオ局を運営できる(避難所などでも使える)
すでにオーラキャストを搭載したヘッドフォンやイヤフォンが販売されていますが、まだ価格が高いので普及はしていません。しかし、今後スマートフォンに搭載される可能性も示唆されているので、例えばiPhoneに搭載されると一気に普及するでしょう。「オーラキャスト」という言葉を覚えておきましょう。
メディア学部 吉岡 英樹
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略歴:バークリー音楽院ミュージックシンセシス科卒業後、(有)ウーロン舎に入社しMr.ChildrenやMy Little Loverなどのレコーディングスタッフや小林武史プロデューサーのマネージャーをつとめる。退社後CM音楽の作曲家やモバイルコンテンツのサウンドクリエイターなどを経て現職。1年次科目「音楽産業入門」を担当。現在は聴覚障害支援を専門としており、メディア専門演習「サイレント・コミュニケーション」、3年次科目「音声情報アクセシビリティ」、聴覚障害支援メディア研究室 を担当している。
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