アフォーダンスで考えてみよう
2025年8月 3日 (日) 投稿者: メディアコンテンツコース
2025 猛暑の夏です
特任准教授の安原です。
毎年拙研究室を「卒業研究」を行う場所として希望してくれる学生が多く、興味を持っていただけることにとても感謝しています。
自分の主催する研究室は「インタラクティブコンテンツデザイン」というテーマを掲げる、ヒトとデジタルメディアのより良いコミュニケーションを探求し、そのアイデアを実際に設計して組み上げて、社会生活を少し便利にするための場所です。
情報工学的な知識と認知科学的な知識をベースにして、ハードやソフトの設計(デザイン)と実装を行います。
「アフォーダンス」というデザインの分野では必ず使われる言葉があります。
アメリカの心理学者 ジェームス・ギブソンによって提唱された言葉で、環境や周囲のモノや物質が、意図せずにヒトや動物にaffordしている形状や性質のことです。例えば森の中でちょうど良い高さの切り株を見つければ、ヒトは「座れる」と感じますし、または、何かを「置く」ことができると感じたりします。そのような行為の関係性が存在していることを、この切り株は「座る」というアフォーダンスがある、とか、この切り株は「置く」という行為をアフォードしている、と言います。
例えば、階段のような形状のものは、ヒトが「上る」アフォーダンスがある、と言えるでしょう。
ビデオゲームの世界でも、プレイヤーに登らせたい場所には階段状になるように、モノをセットして、上ってほしいことをアピールするわけです。
さて、話はここからなのですが、今年のゼミ募集の説明会に参加した学生たちに次のような問いかけをしました。
「エスカレーターの片側を空ける習慣が日本だけではなく世界にあります。片側空けはかつては急ぐ人のためのマナーのために定着した経緯があります。この習慣のため、エスカレーターの片側だけに負荷がかかり、エスカレーターの機械の寿命を下げてしまうという問題が起きています。そして現在は、急ぐ人はその空いたステップを歩いて上ったり下ったりして、危険だと指摘され始めたことで、特に駅のエスカレーターでは歩いてはいけないマナーが推奨されています。
では、どうすればこのエスカレーターの「歩く」問題を解決できるでしょう?このような問題の解決を真剣に考えることが好きなら、この研究室はたぶん、皆さんにあっています。実際には使えなくても構わないので、架空の世界のエスカレーターの形状を考えみてください。」 というものです。
これに良いアイデアを出した学生を、ゼミ生に採用するわけではないのですが、普段あまり気づかずに過ごしている社会インフラの問題や潜在的な課題に目を向けてもらう意図での問いかけでした。
ヒントは、「上る」アフォーダンスがある限り、ヒトは上ってしまうものだ、ということです。
考えてみると存外にたのしいと思います。 寄せられたアイデアはまた次回にお披露目しようと思います。
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