2024年11月
風変わりなアイデア
2024年11月29日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
コンテンツコースの椿です。
私は研究室の皆様に、イグ・ノーベル賞がとれるような卒業研究をしてね、と毎年話しています。
そこで、どのような研究がイグ・ノーベル賞を受賞したのかを調べていたところ、日本人に受賞者が多いと書かれた記事を見つけました[1]。「本当に風変わりなアイデアを思いついた人を排除することなく大切にして、自分たちの中の1人として受け入れてきた結果」とも書かれていました。
日本の研究力は低下していると言われることが多いですが、日本にはそういう強みもあるのかもしれないと思いました。
[1] https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240913/k10014580141000.html
研究棟Cと春
2024年11月27日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
コンテンツコースの椿です。
一昨日、虫のことを書いていて、春に見た虫のことを思い出しました。
部屋の窓の外側にとまっていたので写真を撮りました。
裏側からしか見えなかったのですが、美しかったです。私は初めて見ました。
調べたところ、ヨコヅナサシガメという虫のようです。
刺されると腫れることもあるとのことですが、窓の外側なので安心です。
研究棟Cと冬
2024年11月25日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース
ずいぶん寒くなってきて、冬のように感じる日もあります。
しかし、最近家の近くで数回蚊に刺されました。調べたら冬でも刺す種類の蚊がいるんですね。
メディア学部の研究室がある研究棟Cは、裏側に林があります。
カーテンを開けると春は新緑、夏には深緑に変わっていく様子がきれいです。最近は木々も冬の装いです。
窓の外には虫もよくやってきます。最初は驚きましたが、段々と虫を見るのが楽しくなってきました。
オオゲジという虫を知っていますか?ゲジゲジとも呼ばれていて、足がたくさん生えていて、体長が5cmほどの虫です。
オオゲジは建物の中にもたまに入ってきます。
一番驚いたのは、部屋に入ろうとしてドアを開けたら上から降ってきたときです。
あと、部屋の天井に数日滞在し続けたこともありました。
よく見ると、ちょっとかわいい顔をしています。
台風など、風が強かった日の翌日に入ってくることが多いようです。
寒くなり窓に虫が来なくなると、冬になったと季節を感じます。
コンテンツコース 椿郁子
ブレインマシンインターフェースのマーケティング活用について3
2024年11月22日 (金) 投稿者: メディア社会コース
こんにちは、メディア社会コースの進藤です。
今週はブレインマシンインターフェースのマーケティング活用についてお話したいと思います。
ブレインマシンインターフェースにはマーケティング面でも期待できます。あくまでもお客様の同意を得てのことになりますが、お客様のお好みや本心を、直接、マーケターが知ることができるようになりますので、遠慮して本心をおっしゃらなかったお客様の真のニーズを知ることが出来るようになるでしょう。しかし、人間の考えをオープンにするという場合、大変デリケートな問題が発生します。お客様が開示することを望まないようなことも開示されてしまう可能性があるからです。こうした配慮をしながら、マーケティングでもさまざまな新技術を活用していくことが重要であると考えています。(終わり)
ブレインマシンインターフェースのマーケティング活用について2
2024年11月20日 (水) 投稿者: メディア社会コース
こんにちは、メディア社会コースの進藤です。
今週はブレインマシンインターフェースのマーケティング活用についてお話したいと思います。
ブレインマシンインターフェースとは、人間の脳とマシンをつなぐ技術のことをいいます。今は、コンピュータを動かしたいと思ったときには、キーボードで文字を打ったり、言葉で話しかけて命令する必要がありますが、このブレインマシンインターフェースの技術を使えば、脳とコンピュータが直接つながりますので、頭で考えただけで、コンピュータにやらせたいことを実行することができます。とても期待できる技術と言えるでしょう。(3に続く)
ブレインマシンインターフェースのマーケティング活用について1
2024年11月18日 (月) 投稿者: メディア社会コース
こんにちは、メディア社会コースの進藤です。
今週はブレインマシンインターフェースのマーケティング活用についてお話したいと思います。
インターフェイスとは、界面、接触面のことです。コンピュータの利用が日常になったいま、どのように人がコンピュータなどのデバイスに接するかは、マーケティング的にも大きな関心事となっています。利用しにくいデバイスであれば、皆さんも使わなくなってしまうと思います。今回は、そうしたデバイスへの接し方として、今最も注目を集めている技術のひとつであるブレインマシンインターフェースと、そのマーケティング活用についてお話したいと思います。(2に続く)
人工知能とノーベル賞
2024年11月15日 (金) 投稿者: メディア技術コース
もう、ひと月以上前の話になってしまいますが...。
10月初旬に今年のノーベル賞の発表がありました。巷では「AI祭り」とも呼ばれていたように、5つのノーベル賞のうち、2つがAI関連でした!受賞した方々の功績が素晴らしいものであることは間違いないのですが、別の意味で驚きをもって報じられました。ノーベル賞の科学関連の賞は医学生理学賞、物理学賞、化学賞の3つであり、計算機科学からはノーベル賞は取れない、といわれてました。もちろん、それぞれの分野に関連する形での受賞はこれまでもないわけではなく、今年のノーベル化学賞も本質は化学研究に対する大きな貢献があっての受賞です。それに対して、今年のノーベル物理学賞は、受賞者の一人が物理学者で着想店のひとつに物理学的考えがあったとはいえ、本質的な部分は計算機科学であるため、驚きの声が多かったように思えます。実際、受賞したジェフリー・ヒントン博士も受賞の際に驚きを隠さなかったといいます。
さて、今年のノーベル物理学賞の内容はというと、今の人工知能の基礎となる人工ニューラルネットワークの仕組みを作り上げたことによるものです。人工知能そのものは、人工ニューラルネットワーク以外にも様々な技術・仕組みがありますが、ここ10年で発展し注目されている人工知能の基盤は、人工ニューラルネットワークになります。人工ニューラルネットワークは人間の脳にある脳神経細胞およびそれが接続されたネットワーク構造をコンピュータ上でシミュレートしたものです。この10年での人工知能の普及・発展には欠かせない研究だったからこその受賞ということになります。個人的な感想としては、これらの発展について、同時期に多大な功績を残している日本人研究者の甘利俊一博士およびメディア学部で教鞭をとっていただいていたこともある福島邦彦博士が入っていないことが少し残念です。
一方、ノーベル化学賞については、人工知能を用いてタンパク質の構造を予測する、というものです。これまでは非常に難解な作業といわれていたタンパク質の構造をAIによって高精度に予測するというもので、化学や薬学の分野で非常に有効なものを作り上げました。
AIが実用的なツールとして使われるようになっており、今後、様々な分野で当たり前のように使われるようになるでしょう。メディア学部でも多くの研究室で、AI・機械学習・生成AIなどを用いた研究が行われています。近いうちに、情報リテラシーならぬAIリテラシーという授業を大学生だけでなく小中高生も受けるようになるかもしれません。
(メディア学部:藤澤公也)
O-COCOSDA 2024 in 新竹 (1): 再び台湾へ
2024年11月13日 (水) 投稿者: メディア技術コース
メディア学部の榎本です。
さて、今回再び台湾へ学会発表に行ってきたのでご報告です。
今年の3月に初めて台湾へ行ったのですが、10月には何と再訪する機会が訪れました。Oriental-COCOSDAという学会が台湾の新竹という場所で開催されました。
Oriental-COCOSDAは以下の目標のもとに開催されています。
、「The purpose of O-COCOSDA is to exchange ideas, share information, and discuss regional matters on the creation, utilization, and dissemination of spoken language corpora of oriental languages and also on the assessment methods of speech recognition/synthesis systems as well as promote speech research on oriental languages.(O-COCOSDAの目的は、東洋言語の音声言語コーパスの作成、利用、普及、音声認識/合成システムの評価方法に関する意見交換、情報共有、地域的な問題についての議論、および東洋言語の音声研究の促進です。)」
英語や西欧語の対話データは大量に30年ぐらい前から収集が進んでいるのですが、東南アジア諸国の言語の対話データはそれに比べて収集が遅れており、危機言語も多くあるため早急に蓄積を進めてかねばならないという意識のもとにこの会議は編成されています。台湾の客家語(台湾に中国の清の時代に移り住んだ人々が話す言葉)なんかも、近年では話す人口が減り危機言語の一つと言われています。
台湾初日はとりあえず、羽田から台北の松山空港へ。
久しぶりの台湾、バイクの群れが懐かしいです。
ランチにルーローハンと青菜炒めをいただきます。どちらも懐かしい。
龍山寺という有名なお寺を見に行きました。残念ながら雨です。
つづく
素晴らしい社内情報システム
2024年11月11日 (月) 投稿者: メディア技術コース
東京工科大学でも2023年度から学内システム(教職員向け)が刷新され、ペーパーレスの仕組みが導入されました。以前のブログ記事でその話題を出した際に「これまでいろんな会社に勤務したが『これぞ素晴らしい社内情報システム』というのはほとんど無かった」と言いました。
今日は言ったことの回収です。数少ない素晴らしい社内システムの話をします。
1995年、私は初めて外資系の会社(「シリコングラフィックス」)に転職しました。3次元CGのコンピュータシステムを売る会社で、製品開発は米国本社です。まだ一般にはPCも普及していない時代に、世界中の社員は一人一台自社製品を仕事で使っていました。PCよりもはるかに高価なワークステーション(WS)という製品です。
Img_7873
写真はたまたま私の手元で今も保管している機種で、1995年当時私が使っていたものとまったく同型機です。ちなみに当時の価格は1,000万円以上です。シリコングラフィックスのCG用WSが爆売れしてバブルだった時代です。
正確にはバブルというより競合製品に市場で打ち勝ち寡占となった結果の爆売れです。それほど良い製品だったことは確かです。米国本社の開発チームには天才たちが多数集まっていました。彼らがそのような優れた製品を次々と出せた理由はいくつもあります。今日のテーマの「素晴らしい社内システム」はそのうちの一つです。
そのシステムは簡単なことです。各社員は設定さえすれば自分のWSのデータファイルの一部(指定したフォルダの下全部)を全社員から見ることができる、という暗黙の決まりがあったのです。具体的には、"guest"というユーザIDを使えば特定フォルダ下は見たりコピーしたりは自由とする文化です。
もちろん、アクセスするためにはその社員の使うWSのホスト名を知る必要があります。メールで「この製品情報はaaaa(ホスト名)にあるよ」と一人あるいは複数人に知らせることができます。そしたら
rlogin guest@aaaa
と命令(遠隔マシンにログイン)をタイプすれば、パスワードなしでその後はその人が使うaaaaというWSのファイルを見たり自分のWSにコピーしたりできます。あるいはファイルの遠隔コピーだけであれば、教えてもらった場所を
rcp guest@aaaa:~/product/info.sc .
とタイプ(遠隔コピー)すればこの1行だけで情報を自分のWSに持ってこれます。ちなみに.scというのは今のPowerPointのようなソフト("showcase")のスライドファイルです(なつかしい)。
このような文化が、世界中に1万人以上いる社員間の円滑なコミュニケーションにどれだけ役立ったか計り知れません。
ついでですが、各WSはそのままWebサーバーにもなっていて、各社員は自分のWebページを全社員に公開できました。これもWSのホスト名だけは知らせる必要ありましたが。
ちなみにシリコングラフィックスの米国本社はシリコンバレーのMountain Viewという街にあり、キャンパスと呼んでいました。2000年以降はPCに押されて製品は衰退し、会社は倒産し消滅しました。創業者を追い出したビジネススクール出のCEOが90年代半ばに下した経営判断のミスが理由です(結果論だけど)。広大な本社キャンパス敷地は、ほぼ全部の建物もそのまま居抜きでグーグル本社が入っています。
メディア学部 柿本正憲
先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その3)
2024年11月 8日 (金) 投稿者: メディアコンテンツコース
本シリーズの最後となる3回目は、受講生の研究をご紹介します。
これまで本ブログで紹介した先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」 での取り組みは、その2のような機材体験でした。下記の過去記事もご興味がありましたら、ぜひご覧ください。
■しかく先端メディア学/ゼミナール(ミュージック・アナリシス&クリエイション)で「打ち込み」に打ち込みました[2019年12月21日]
■しかく授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[準備編][2021年11月30日]
■しかく授業紹介:1980年代のハードシーケンサーへのデータ入力[実践編][2021年12月04日]
その1に書きましたが、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の受講生は2017年度前期の開講から2024年度前期までで32名を数えます。授業名の通り「楽曲分析」や「音楽制作」を行う学生が多く、今年度前期の受講生は以下のようなテーマでした。
(★のテーマの学生は現在、私の研究室に所属して新たな研究テーマに取り組んでいます)
★ボーカロイド楽曲「まにまに」は何故ヒットしたのか(3年生)
★ドラマ内における音楽とセリフの関係の分析:
1ドラマ『アンサング・シンデレラ』 2ドラマ『silent』(3年生)
★木管五重奏への編曲:
Valkyrie「Le temps des fleurs」【「あんさんぶるスターズ!!」より】(3年生)
■しかくヨルシカの楽曲分析とそれに基づく楽曲制作:
1「思想犯」【アルバム『盗作』より】 2「嘘月」【EP『創作』より】(3年生)
■しかく「オープンコードを用いたギター演奏において、コードトーンの高音域に
一貫した押弦箇所が存在するコード進行」の歴史的変遷の調査(2年生)
そして、この後期に受講している3名の学生はいずれも、これまでとは一味違ったユニークなテーマを掲げています。現在取り組んでいる研究について学生たちにコメントしてもらいましたのでご紹介しましょう。
【Aさん】(2年生)
私は「病みカルチャーと音楽の関連性」について研究を行っています。
現在、Z世代の若者を中心に「病みカルチャー」が流行しています。これは、メンタルの不調や自己肯定感の低さをあえて表出させたサブカルチャーであり、ファンションやSNS上でのコミュニティなど様々な場面で波及しています。有名な例では「地雷系ファッション」や「トー横界隈」が挙げられるでしょう。
病みカルチャーは音楽とも大きな関わりがあります。そして、これらの音楽には、カルチャー独自の特徴があるのではないかと私は考えました。
そこで、病みカルチャー内で流行している楽曲を調査し、これらの共通点の考察に取り組んでいます。このカルチャーは現在進行形で発展しているため、文献調査はもちろん、SNSを活用した情報収集も欠かせません。
今後の最終発表では、病みカルチャーに関連する音楽の特徴について結論づけ、音楽という視点から、若者のサブカルチャーが今後どのように発展していくのか考察したいと考えています。
日本の新しいサブカルチャーを深掘りする、意義のある研究にできるよう努めたいと思います。
[画像:Mac_01]
【Tさん】(1年生)
私は、自分自身がバレエを習っていた経験から「バレエ音楽と振付の関係性」についての研究に取り組んでいます。
バレエを完成させるには音楽と踊りの調和をとることが非常に重要です。そこで、音楽を体で表現するにはどのようなことが大切なのか、バレエ音楽の楽譜の解析や使用されている楽器の調査、また、振付に組み込まれている「パ」(ステップ)の種類や意味を考え、それらを照らし合わせて分析を行います。
今回は「『コッペリア』第1幕よりスワニルダのバリエーション」を研究対象としています。
この研究を通して、踊りと音楽の調和のとり方を考え、振り付けに込められた意味を理解することで表現力の向上につなげると共に、自分自身も楽しく、より美しく踊ることができると考えています。
[画像:Mac_02]
【Mさん】(1年生)
私は今回、SQUARE ENIXが手掛けたゲーム『NieR:Automata』のフィールドBGMである『遊園施設』の楽曲分析を行っています。このタイトルは大学でゲームサウンドを学びたいと思ったきっかけでもあり、毎日四苦八苦しつつ楽しく分析しています。
調査としては、インタビュー記事や感想記事などを読んで、制作面での楽曲意図を考察しました。現在はAIによるアプリケーションを使用して音源分離し、自身でスコアに起こして曲構成を分析するなど、様々な側面からの調査を行っています。
[画像:Mac_03]
当講義を共に受講する仲間たちや先生からの質問やアドバイスも研究の良き刺激となっています。これから、この楽曲がゲーム作品にどのような影響をもたらしているのか紐解いていくのが楽しみです。
[画像:Mac_04]
今後、それぞれの研究がどのように展開していくか楽しみです。
(メディア学部:伊藤謙一郎)
先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その2)
2024年11月 6日 (水) 投稿者: メディアコンテンツコース
先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」の紹介の第2回は「シンセサイザー体験」です。
皆さんは、シンセサイザー(synthesizer)を知っていますか? 実際に触れたことがなくても、名前を聞いたり実物を見たりしたことがある方は多いと思います。音楽制作や楽器演奏を趣味にしている方は、ソフトシンセサイザーやハードの機材を持っているかもしれませんね。
では、シンセサイザーの語源はご存知でしょうか?
これは英語のsynthesize(合成する)が元になっています。ですから、シンセサイザーは「音(音色)を電子的に合成して作る楽器」と言えるでしょう。
シンセサイザーの中には、ピアノや弦楽器、管楽器、もちろんシンセサイザーならではの電子的な音も含めて、あらかじめ用意(プリセット)されているものもあります。
[画像:Kross_01] [画像:Kross_02] [画像:Kross_03]
楽器のカテゴリを選ぶダイヤル部分 カテゴリ内の多様な音色が選べます プリセット型は外観が比較的シンプル
ですから、プリセットボタンやダイヤルを回せばすぐに「いろいろな音が出る楽器」と思われがちですが、本来は「ユーザーが自ら音を作る楽器」なのです。
(もちろん、プリセット機能のあるシンセサイザーも、プリセット音のエディットやゼロの状態から音の作成が可能です)
[画像:Jupiter4_04_20241106102001] [画像:Jupiter4_05] [画像:Jupiter4_06]
ツマミやスイッチを動かして音作り VCFの設定で音色が大きく変化します 作った音を記憶して呼び出せます
こうしたシンセサイザーの原点に立ち返り、先週の授業では学生たちがアナログシンセサイザーでの音作りを体験しました。
どの学生もアナログシンセサイザーに触れるのは初めてということで、まず最初に音作りの基本原理(VCO, VCF, VCA)を説明しました。しかし、イメージした音を初心者が作るのは、やはり難しいので、製品マニュアルに掲載されているセッティングチャート(その音色を作るためのツマミの位置や配線方法を指示したイラスト)を見ながら音作りを行いました。
このセッティングチャートには、「トランペット」「ヴァイオリン」「オルガン」「ベース」「ハイハット」などの楽器音のほか、「サイレン」「嵐」「光線銃」「流れ星」といった音の作り方が書かれています。実際の「流れ星」に音はありませんが、セッティングチャート通りに作って聴いたところ、全員揃って「なるほど〜」と納得の声を上げました。
(昔のアニメのシーンで耳にするような効果音です。イメージできますか?)
今回使用したシンセサイザーは、コルグ「MS-20 mini」、シーケンシャルサーキット「Prophet-5(ver.3.3)」、ローランド「JUPITER-4」の3台です。いずれもたくさんのツマミやスイッチがあり、それらを動かすときの感触も新鮮だったようです。
(これら3台は、そっくりに作られたソフトウェアシンセサイザーもあります)
以下の写真はその時の様子です。(音をお聞かせできないのが残念です...)
【MS-20 mini】
(1978年に発売された「MS-20」の復刻版です。モノフォニックなので和音は出ません。本体右側に配置された端子どうしをパッチケーブルで接続すると、より複雑な音色を作成できます)
[画像:Ms20mini_01] [画像:Ms20mini_02] [画像:Ms20mini_03]
セッティングチャートを見ながら音作り パッチケーブルを繋いでいるところ ちょっとした加減で音色が大きく変化
【Prophet-5(ver.3.3)】
(1978年から1984年にかけて製造され、ver.3.3はその最終型です。2020年からはver.4が販売されています。5音ポリフォニックで、ver.3.3は作成した音色の記憶数が40から120に拡張されています)
[画像:Prophet5_01] [画像:Prophet5_02]
黒のパネルと天然木を組み合わせた本体 機材の状態が悪く、この日はここで断念...
【Jupiter-4】
(1978年に発売された4音ポリフォニックで8つの音色を記憶できるシンセサイザーです。自動アルペジオ機能が搭載されています)
[画像:Jupiter4_01] [画像:Jupiter4_02] [画像:Jupiter4_03]
横一列に配置された扱い易いツマミ類 音色が大きく変わるVCFの数値を調整中 VCAで音の立ち上がりと持続を設定
最後に、学生たちの感想をご紹介します。
【Aさん】(2年生)
それぞれの機種によって音の特徴が大きく異なっていたことが興味深かったです。
例えば、管楽器を模した音作りをした際、どの機種も同じ音が出るわけではないのです。無限大の音が作り出せる一方で、機種によって音の「クセ」があるからこそ、シンセサイザーの音作りはより奥深いものになり、より音作りの可能性が広がるのではないかと思いました。
【Tさん】(1年生)
つまみの役割などを考えながらシンセサイザーをしっかり触ることは初めてでしたが、音源となるものによって音階がつかないものもあり、実際に考えながら触ってみることで新たな発見ができて非常に面白かったです。一つの音を作るにも多くの工夫がされていて音作りの奥深さを感じました。
さらに、この機械一つで無限の音色が出るということに魅力を感じました。Prophet-5、Jupiter-4はMS-20 miniとはまた違い、ケーブルがなく、つまみやスイッチだけで非常に多くの変化があって驚きました。今はパソコンを少しいじればどんな音色も作れますが、当時はつまみの微妙な違いで音色に変化をつけていたと考えると感慨深いです。
【Mさん】(1年生)
実際につまみを回したり、スライドさせることで音が変化するので、音を作っているという実感が得られました。つまみの特性を知ることで、音の可能性が無限に広がるのがとても興味深かったです。
この授業では、今後もさまざまな体験の場を設けていきます。
(メディア学部:伊藤謙一郎)
先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」(その1)
2024年11月 4日 (月) 投稿者: メディアコンテンツコース
みなさん、こんにちは。メディア学部の伊藤謙一郎です。
本日から3回にわたって、先端メディア学・ゼミナール「ミュージック・アナリシス&クリエイション」についてご紹介します。
先端メディア学(1年次後期・2年次前期)は2016年に、先端メディアゼミナール(2年次後期・3年次前期)は2017年にスタートした少人数のゼミ形式の科目です。2024年度は、17名の教員がそれぞれ専門とする分野での研究指導や制作指導を行なっています。先端メディア学・ゼミナールの概要はこちらをご覧ください。
私は2017年度前期に先端メディア学を開講し、今年で8年目となりました。これまで32名が受講し、うち18名が私の卒業研究「ミュージック・アナリシス&クリエイション」に進んでいます。さらに大学院に進学して専門的な研究に取り組む学生も6名おり(現在1名在籍)、その中には1年次後期から3年次前期まで全て受講した学生もいます。音楽に特に強い興味をもつ学生が集まり、自身の研究テーマだけでなく音楽に関する話題について学生たちが自由にディスカッションする雰囲気が私自身とても好きですし、そうした中で学生から学ぶこともあってとても刺激的な時間です。
毎回の「学生の研究進捗報告」「音楽関連の映像資料視聴(または音楽鑑賞)」のほか、たまに「体験コーナー」なるものを設けることもあります。科目名の「先端」にとらわれず、最新の物事だけでなく、それらが歴史的にどのようなプロセスを経て現在に至ったかを実体験を通して考えることで、今日の音楽表現やテクノロジーを新たな視点で捉えることができるでしょう。
例えば「カセットテープ」。CDの出現によって姿を消しつつあったレコードが数年前に再び流行し、アーティストが新譜をサブスクやCDだけでなくレコードでもリリースしたことで話題となりましたが、最近はカセットテープでもリリースされるものもあります。10代、20代の若い皆さんは、「カセットテープ」という名前を聞いたことはあっても実際にその音を耳にしたことがある方は少ないのではないでしょうか。好きなアーティストのカセットテープを買ったとしても、それを聴くための機材や環境がないと難しいですよね。
ちなみに私の自宅ではカセットデッキが今でも現役で、中学から大学にかけてエアチェック(ラジオ番組などを生テープに録音することで、タイヤの空気圧のチェックではありません)したカセットテープが700本ほどあります。写真はその機材とカセットテープの一部です。
[画像:Cassettedeck01] [画像:Cassettetape]
私の研究室にもカセットデッキがあり、この機材はカセットテープブームが起こるより前に購入したものです。
[画像:Cassettedeck02]
先日の第4回(10月17日)の授業では、この「カセットテープ」を取り上げ、カセットテープに録音された音を実際に学生たちに聴いてもらいました。聴いたのは、小林克也さんがDJを務める『渡辺貞夫 マイ・ディア・ライフ』というラジオ番組で、1985年1月5日(土)に放送された『最新ピットイン・ライヴ1』から「ランデヴー」という曲です。(※(注記)ライヴハウス「六本木ピットイン」は今から20年前の2004年7月に閉店しています)
[画像:Cassettetape01] [画像:Cassettetape03] [画像:Cassettetape02]
学生たちは一様に「すごく音が良い!」と驚いていました。演奏だけでなくライヴ会場全体の音も収録されていて、まるで会場の中にいるような臨場感を味わったようです(その音をブログでお伝えできないのが残念です)。生まれて初めてカセットテープを手にした学生もいて、このようなアナログなものから厚みのある豊かな響きがすることにびっくりしていました。渡辺貞夫さん(今年で御年91歳!)の温かなサックスの音色にも感動したようです。
上の写真を見ての通り、カセットのインデックスは「週間FM」というFM雑誌のもの、そしてエアチェック情報は全て手書きです(高校1年生のときの字)。こうしたカセットテープが今も700本近くあり、どれも思い出があって捨てられずにいます。
(最近、カセットテープが再び増えてきたので保管用の木製ラックを新たに入手しました)
次回は「シンセサイザー体験」をご紹介します。
(メディア学部:伊藤謙一郎)
私、公、持続的成長
2024年11月 1日 (金) 投稿者: メディア社会コース
われわれは、私財をすべて自分の子孫に遺すべきか、その一部を恵まれない他者のために寄付すべきか。また、成果主義という言葉があるように、ある個人ないし組織が実現した経済的利益は、全てそれらに成果報酬として帰属すべきであろうか。一方、対照的に自己責任という言葉があるが、十分な報酬の得られない人は、全ての原因は自らの能力と努力不足のためなのであろうか。
これらのいささか社会的に不協和を惹起する問いは、何も規範的な観点から発したものではない。いずれの問いにも、下記のように私的な利益の追求と公益性の担保という、経済的な選択が関わっている。すなわち、現在(自分)と将来(子孫)、私(自分)と公(他者)との関係において生ずる選択問題である。
公的なインフラ、公的資本、社会的な諸制度等をなす社会的制度基盤は、私的な事業資本と異なり、経済成長を直接的に生み出すわけではない。加えて、その整備には、私的な事業資本に投下できるはずの希少資源の一部を犠牲にする。しかし、自由な経済活動は、自らの経済的営為だけで完結できず、一方、私的な事業資本は、社会的制度基盤の生み出す外部効果を通じて、より生産力を発揮しうる。
筆者は、長期的な経済成長計画において、社会的制度基盤の整備にどの程度投資すれば、マクロ経済的にどの程度の効果が得られるか、シミュレーションを行った。まず、数値解析した結果からは、初期段階で低水準の資本規模にある開発途上経済においても、ケインズ政策的な公共事業を展開することなく、市場による最適成長計画を超える社会的厚生水準に達することが可能である。加えて、有限希少な資源をより節約した長期的配分を実現する。
さらに、OECD加盟国の1995~2022にわたる時系列データから、加盟各国の固定資産がGDPを生み出す弾力性の推定と、社会的制度基盤に相当する諸変数の有効性について実証分析を行った。その結果、公的な社会秩序整備、経済的環境整備および研究開発に関する公的支援と、市場所得ベースのGini係数が、上記弾力性に対して5%以下で統計的に有意であった。Gini係数に関する結果は、可処分所得ベースではないことから、事後的な所得再分配政策よりも、企業活動と並行的に労働分配率を高水準に誘導する施策の方が有効であることを示している。
以上の数値計算、実証分析から私利私欲のみを追求すると自らの経済的利益を毀損することがわかるであろう。最後に、上記の固定資産・GDP弾力性の推定値を一部紹介しよう。欧米諸国の中では、米国0.85、英国0.84、ドイツ0.83、フィンランド0.89、スペイン0.89、イタリア0.62等である。この値はITを基盤とした産業構造を反映した経済全体の生産性と捉えて良い。わが国は0.4で推計の可能な32カ国中圧倒的な最下位であった。
(メディア学部 榊俊吾)
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