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最近、書いた覚えのない本がやたらに引用されるという経験が増えているのですが、またまた書いた覚えのない本が出てきました。
このnoteの中に、連合を批判する文脈でこんな一節が書かれているのですが、
■しかく 2:労働運動とリベラル政治の堕落
戦後労働運動を主導してきた日本労働組合総連合会(連合)は、設立当初(1989年)こそ「働く者の福祉国家」を掲げた。
しかし21世紀以降、組織維持を優先する官僚化が進み、政策的にも企業寄りの中道路線へと傾斜した。
とくに外国人労働者の受け入れ拡大政策(2018年入管法改正以降)に対して、
連合は表向き「労働者保護」を主張しながら、実際には人手不足対策として容認姿勢を取った。この立場は、「労働者の権利保護」よりも「雇用流動性の維持」を優先する結果を招いた。
労働社会学の分析(濱口桂一郎『日本の労働組合』岩波書店, 2019)でも、連合が「正規雇用中心主義」を温存したまま非正規・外国人労働の問題に踏み込めていない点が指摘されている。
こうして"リベラル労働運動"は、社会正義を掲げながら、実際には労働市場の需給調整装置として体制に組み込まれた。
理念を掲げつつ構造に従属するこの姿は、まさにリベラリズムの寄生的形態である。
いやまあ、この方がこういう考え方を書かれること自体は別にいいのですが、その中に、濱口桂一郎『日本の労働組合』岩波書店, 2019という、全く書いた覚えのない本が「引用」されているので、私はそんな本は書いていないし、別の本の中でもそんなことは書いていないと、これは声を大にして訴えておきたいと思います。こういうのがこんどはAIに拾われて、ネット上の[事実]としてまとめ記事の中に知らない間に入っていたりすると、ますます困ったことになりますからね。
2025年10月20日 (月) | 固定リンク
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これはひどい。文章どころか本そのものが捏造されているというところが驚きです。2019年となると岩波新書では水町勇一朗『労働法入門 新版』か雑誌『世界』2019年6月号あたりを取り違えたのか、はたまた岩波新書で木下武男『労働組合とは何か』2021年を誤記したのか、謎は深まります。そもそもブログ自体が適当に捜索した文章のような印象も受けますが。ただこうして全く身に覚えのない記述をもって、濱口桂一郎による連合批判では、なんてことがネット上で知らぬ間に流布されていたなんてことになると少々恐ろしいですな。
投稿: 希流 | 2025年10月22日 (水) 09時09分