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本日の朝日新聞に、「最低賃金は「賃金の中央値の6割」 政治介入抑制へ、高知で指標導入」という記事が載っています。
https://www.asahi.com/articles/ASTBH41V9TBHULFA006M.html
今年度の最低賃金改定で、高知の地方審議会が新たに「一般労働者の賃金における中央値の6割」という目標を導入したことがわかった。相対的貧困ラインを念頭に、欧州連合(EU)が最低賃金の設定に用いる水準で、厚生労働省によると国内で導入は初とみられる。引き上げを求める政治介入が常態化する中、客観的なデータで公労使の合意を得る狙いだ。
高知の審議会は8月末、県内で12月から適用される最低賃金を現在の952円から71円引き上げて1023円とすることを答申した。改定後の高知の最低賃金は、沖縄、宮崎と並び全国最低額だが、審議会がまとめた見解に「セーフティーネット水準として、賃金の中央値の6割を注視することを公労使で共有した」と初めて盛り込んだ。
県内の一般労働者の賃金の中央値は、厚労省の2024年の統計から残業代や賞与を含めて1822円で、その6割である1093円を目標額として設定。審議会は来年度までの2年間で実現する方針だ。・・・
半世紀にわたり中央最賃審でランク別の「目安」を示し、それに基づいて各地方最賃審で地賃額を決めるというやり方が、昨今の政治介入で混迷化しつつある中で、新たな試みとして注目に値します。
ここでは、このEU最低賃金指令の関係条文を紹介しておきましょう。
欧州連合における十分な最低賃金に関する欧州議会と理事会の指令(最低賃金指令)Directive (EU) 2022/2041 of the European Parliament and of the Council of 19 October 2022 on adequate minimum wages in the European Union第2章 法定最低賃金第5条 十分な法定最低賃金の決定手続き1 法定最低賃金を有する加盟国は、法定最低賃金の決定及び改定の必要な手続きを設けるものとする。かかる決定及び改定は、まっとうな生活条件を達成し、在職貧困を縮減するとともに、社会的結束と上方への収斂を促進し、男女賃金格差を縮小する目的で、その十分性に貢献するような基準に導かれるものとする。加盟国はこれらの基準を国内法、権限ある機関の決定又は政労使三者合意における国内慣行に従って定めるものとする。この基準は明確なやり方で定められるものとする。加盟国は、各国の社会経済状況を考慮して、第2項にいう要素も含め、これら基準の相対的な重要度について決定することができる。2 第1項にいう国内基準は、少なくとも以下の要素を含むものとする。(a) 生計費を考慮に入れて、法定最低賃金の購買力、(b) 賃金の一般水準及びその分布、(c) 賃金の上昇率、(d) 長期的な国内生産性水準及びその進展。3 本条に規定する義務に抵触しない限り、加盟国は追加的に、適当な基準に基づきかつ国内法と慣行に従って、その適用が法定最低賃金の減額につながらない限り、法定最低賃金の自動的な物価スライド制を用いることができる。4 加盟国は法定最低賃金の十分性の評価を導く指標となる基準値を用いるものとする。このため加盟国は、賃金の総中央値の60%、賃金の総平均値の50%のような国際的に共通して用いられる指標となる基準値や、国内レベルで用いられる指標となる基準値を用いることができる。5 加盟国は、法定最低賃金の定期的かつ時宜に適した改定を少なくとも2年に1回は実施するものとする。第3項にいう自動的な物価スライド制を用いる加盟国は少なくとも4年に1回とする。6 各加盟国は法定最低賃金に関する問題について権限ある機関に助言する一またはそれ以上の諮問機関を指名又は設置し、その機能的な運営を確保するものとする。
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